深迷怪ザリガニ事典・ま行



まっかちん(真っ赤ちん?)
関東地方で「アメリカザリガニ」を指す言葉の代表格。その意味は、地方ごとにかなり大きな違いがあり、単に「アメリカザリガニ」を指す地方から、成体のみ、ないしはある程度以上の大きさのみを指す地方まで、実に様々。これらの地方でも、60歳代以上の方々になると「エビガニ」と呼ぶ場合が増えてくるので、この言葉は、少なからず幼児語的な性質を持ったものかも知れない。


まっかちんがいど(まっかちんガイド)
「アクアライフ」誌の平成5年5月・7月・8月号で連載された、観賞魚専門誌初のザリガニ小特集。このうち、5月・7月号では、当時のJCCを代表して砂川氏が種紹介・飼育方法などの記事を書いた。種ごとの詳しい状況がわからなかった時期でもあったため(今も大して変わらないけど)、内容の一部には、明らかな誤りも存在する。5月号の「アメリカザリガニ特集」は、その後加筆され、同名の小冊子として全国教育機関に配布された。


まるあらい(丸洗い)
水槽の水を全部抜いて掃除すること。単に飼育水を全量換える場合にも使う。ザリの場合、底床部を清潔に保つ必要があるため、年に数回は行っておきたい基本作業だといえる。キーパーの中には「お前もキレイに洗ってやるからな!」などといって、個体を入れたまま水洗いしてしまう猛者もいるとか、いないとか。もちろん、個体に掛かる負担を考えれば、決して真似をしてはいけない「暴挙」ではある(苦笑)。


まるぼうず(丸坊主)
個体の胸脚がすべて取れてしまった状態。またはその個体。すべて取れてしまうと、摂餌・移動ができなくなるため、たいていの場合は死に至る。ただ、左右1本ずつでも残っていると生残率は急上昇し、特に先端がハサミ状になっている第2〜3胸脚が1本でも残っていれば、摂餌が無理なく行えるので、単独飼育態勢に移し、充分な栄養を供給してやることで、回復させることができる。


みずがえ(水換え)
飼育水槽の水を交換すること。ディスカスなどのキーパーに言わせれば、究極かつ唯一の根本的水質維持手段。非常に面倒なことではあるが、結局のところ、ザリでも同様のことがいえる。頻度が高ければ高いほどよいともいわれるが、交換する量が多すぎると、急激な水質変化が起きるため、かえってマイナスになることも。手抜きキーパーは、この部分をタテに、サボることも多い。


みずくさ(水草)
昨今の「アクア・ガーデニング」ブームで、すっかり定着した感のある水草栽培だが、ザリの世界において「水草」は、食材であり、稚ザリ用のシェルターであるから、全く同じものでも、180度違う位置付けであると考えてよい。種や個体によって、嗜好性には大きな開きがあり、嗜好部分(茎の部分か、葉の部分か?)にも違いが見られるので、それぞれの個体の反応を確かめながら投入して行く姿勢が必要。科学的な裏付けはなされていないが、大量投入は危険だとする説もあり、実際数多くのトラブル事例が報告されている。


むせいさんらん(無精産卵)
単独で飼育されていたり、オスの交接を全く受け入れない状態にいる成体メスが、産卵してしまうこと。産卵自体は正常に行われるが、卵は受精しないため、そのまま死に至り、1週間〜10日前後ですべて落卵してしまうのが普通。卵を完全にガードしてしまうパラスタシダエ科諸種の場合、簡単に確認しづらい場合もあるが、基本的には産卵後数日で、卵色が変わってしまったり、水カビが多く付着したりするので、判別は可能。こうした場合、そのまま飼育を続けていれば、個体は自分で卵を落とし、次の繁殖へと備えるので、キーパーが特に卵を取り除くなどといった必要はないであろう。
なお、アメリカザリガニなど一部の種では、前年などの交接によって得られた精包を体内に持ち続けることで、交接をしないまま産卵し、受精させるというケースもあるので、特に飼育事例の多いアメリカザリガニでは「交接をしていないから絶対に無精卵」と断言するのは厳しい。


もちばらはんしょく(持ち腹繁殖)
自水槽内で交尾・産卵させた個体の繁殖ではなく、すでに産卵している個体を自水槽に導入した形での繁殖。キーパーからすれば「価値も半分」であるように思われがちだが、卵という非常にセンシティブな状態のものを、水槽という全く異なる環境に導入する作業が必要になることを考えれば、決して「価値も半分」と言われるほど簡単なものではない。アメリカザリガニなどの強健種ならば上手く行くことも多いが、ニホンザリガニ、タンカイ・ウチダザリガニなどでは、相応の準備と経験・知識が要求されるものであると言ってよいだろう。


もどしこうはい(戻し交配)
繁殖にあたって、その原種血統または基本血統の個体とのペアリングをさせること。ザリガニの場合、体色・体型などといった資質向上のためというよりも、その血統の強化や弱化の防止のために行われることが多い。グッピーやディスカスなどといった熱帯魚の世界では、きちんとした戻しの手順・方法が確立しているが、ザリガニでその通りにやっても、なかなか予想される形にならないのが各キーパー共通の「悩みのタネ」。白ザリの累代繁殖をするキーパーにとっては、強い個体を残して行くためにも、絶対に必要な作業。


もらいみず(貰い水)
新しい個体を導入する際やコンディションの悪い個体に対する換水をする際、飼育中の同種別個体を収容している水槽の水を、飼育水として流用すること。その昔、一部のマロン・キーパーの間で「マロン水」と称して重用された技法であるが、これをやらなければマロンが飼育できないというわけではなく、当然「マロンを飼っている水槽の水でなければならない」というわけでもない。一部のショップなどでは「こうやって水を使い回さなければマロンは飼いきれない」という説を唱えるところもあるようだが、水を使い回すことによって水質自体が悪化し続けるようでは本末転倒である。「マロン水」の場合も、観賞魚の世界でいう「こなれた水」とは100%合致しないが、新しい水による刺激や環境変化を避け、穏やかな順応を目指すことで、エラなどへのダメージを最小限度に食い止めよう・・・という意図から生まれたものと思われる。積極的な効果を期待するものではなく、あくまでも刺激や環境変化を最小限に食い止めようという感覚で行うのであれば、相応の意味はあると考えられる。飼育水のこうした活用を採用する場合、水質の悪化と刺激の抑制とのバランスをしっかりと見極めることは絶対条件であろう。



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