濾過槽を立ち上げよう(2)

 水槽に注水され、(パイロット・フィッシュではありますが)中を魚が泳ぎ始め、パッと見た感じだけでは、すっかり観賞魚の水槽らしくなってきましたね。気持ち的には「もう、これで充分! さぁ、ザリガニを持ってきて中に入れるか!」みたいな感じになってしまいがちです。
 ただ、当然ながら、これで「完成」ではありません。ま、強健なアメザリくらいであれば、これでも難なく飼うことはできますし、それなりに生きてくれますが、今回は、あくまでも「1から始める」ということで、ザリガニ飼育のために特化された水槽セッティングを基礎から考えるというコンセプトですから、「行けるか行けないか?」という部分はひとまずさておき、もう少々お付き合い下さい。応用は、基本をしっかり踏まえた上で、初めて成り立つものですし・・・ね(笑)。




 前のステップの最後で使った写真、もう1度見てみましょう。パイロット・フィッシュを入れた水槽ですが、まず1〜2日はそのまま泳がせておき、それから少しずつ、投餌を開始します。もちろん、腹一杯まで喰わせる必要はありません。彼らには、少々厳しい環境となりましょうが、頑張って食べて、頑張って排泄物を出してもらいます。この環境を、できれば2週間、最低でも1週間くらいは続けます。当然、その間の換水作業は行ないません。




 これが、注水してから約2週間後の水の様子です。だいぶイイ感じで傷んできましたねぇ(苦笑)。流木から出てくるアクによる黄ばみはともかくとして、水が全体的にうっすらと白濁してきているのがご覧いただけると思います。「透明感こそ水槽の醍醐味」という意味で考えれば、何だかゲンナリ・・・な光景ですよね。ショップなどへ行くと、白濁除去のための様々な薬剤や、凝集系の添加剤などが販売されていますが、この段階で、こうしたものを投入することは禁物です。もちろん、流木の黄ばみ除去剤の使用も論外です。見栄えが良いか悪いか・・・という以前に、現時点でこうした状況になることこそが「水槽立ち上げ時の正常な推移」なのですから・・・。立ち上げの段階から、いきなりピカピカのクリアな水だったとしたら、そちらの方がよっぽど異常なのです。飼育水はセッティングが完了した段階でピカピカになればよいという認識を忘れないようにしましょう。





 それでは、いよいよ濾過槽のセッティングに取り掛かります。まずはさっそく、濾過槽の蓋を開けてみましょう。最初のコンテナに新品でセットしておいた物理濾過のウールは、金魚数匹しか入れていないにも関わらず、もうこんなに汚れています。「せっかくだから、取り出してゴシゴシ」・・・と思いたいところですが、ここはあえて手を付けないのが正解です。もちろん、将来的にこのエリアは、物理濾過をメインに機能してもらうコンテナですが、この段階では、このウールの中にも、濾過の仕事をしてくれるバクテリアたちが少しずつ棲み付き始めているからです。ですから、水がほぼ完全に立ち上がり、個体を収容して飼育を開始するまでの間、基本的にここを洗う必要はありません。



 最初の濾材セット時、何も手を付けないまま水を流していた3番目のコンテナが、今回、手を付ける場所になります。「なぜ? 最初からここに濾材をセットしなかったか?」という理由は、後ほど種明かし・・・ということで(笑)。



 当初、ここにはグラス系濾材(シポラックス)を投入する予定でしたが、パイロット・フィッシュをもらってきた時に、「ナントカ麦飯石」とかいう、ちょっと高価な麦飯石のサンプルも、ほんのひと握りだけ、いただいてきたので、せっかくですから使うことにしました(笑)。観賞魚の世界も定番商品だけでは売り上げが伸びないためか、同じようなものでも、ありとあらゆる付加価値を謳った商品が次々と出ているようです。それはそれで非常によいことだとは思いますし、そうした傾向に横槍を入れるつもりはありませんが、こうした付加価値的要素に対し、あまり過度な期待をしてしまう風潮には、イマイチ頷けない部分があるのも事実・・・。「これさえ入れれば、水換え不要」「これさえ入れれば、濾過はカンペキ」なんて商品があれば、趣味である観賞魚の分野よりも先に、水産事業の分野でとっくに実用化されていなければおかしいからです。価値は価値で大切ですが、一歩引いた冷静な目で見つめ、考えることも大切です。ま、「せっかくタダで貰ったものだし、ついでに麦飯石も使っちゃおうか」・・・的なノリでちょうどよいのかも知れません。シポラックスも麦飯石も、よく洗ってセットしましょう。そして、実はここであともう1つ、濾材を準備しておくのですが、それはまた、次のステップで・・・。