なぜ、白濁を強制除去しないのか?

 このことは、ザリガニ飼育に特化した水槽というよりも、およそ観賞魚飼育水槽すべてに当てはまることなので、あえてここで「小ネタ」として触れる必要はないかも知れませんが、せっかくの機会なので、水槽立ち上げ時の「白濁」について少し考えてみたいと思います。
 白濁の原因は、もちろん、底床材や濾材に付着していて洗い落としきれなかった微細な破片やゴミが浮遊している・・・という点も含まれましょうし、魚から出る細かい排泄物なども含まれています。ただ、それだけではありません。水槽内や濾過槽内で少しずつ機能し始めた様々な微生物や、その死骸なども非常に多く含まれています。
 立ち上げ直後の水槽内で生きているのは、何もパイロット・フィッシュだけではありません。目に見えない様々な微生物たちが、その環境に合わせて、猛烈な勢力拡大や生き残り合戦を繰り広げているのです。そして、そうした過程の中で、それを支えている「水」自体も劇的な変化を続けています。ひと口に「水が傷んだ」という状況とは全く異なる変化が起きているといってよいでしょう。
 ザリガニの飼育水槽のみならず、観賞魚水槽すべてにおいて「水ができた状態」というのは、こうした微生物類まで含めた1つの連鎖が完成している状態をいうのです。猛烈な生き残り合戦を経て、微生物たちを含めたすべての生き物が、それぞれの立場で無理のない「位置」を確保し、安定した状態を目指さねばなりません。そういう意味で、このための「途中経過」であるこの段階で、人工的な薬剤などを投入してしまうと、本来、自然に築き上がるべき生物連鎖を妨害したり、破壊したりする原因になってしまうのです。白濁を忌み嫌うことなく、適切な策を講じながら、キッチリと水槽内の生物連鎖を作り上げて行くことが大切なのです。