注水しよう

 濾過槽のセッティングが終われば、いよいよ待ちに待った注水の開始です。ずいぶんと長く引っ張ってしまいましたが、ここに来て、やっと水槽が「水槽らしく」なるワケですね。
「あれ? 濾過槽セッティング、まだ終わってないでしょ? 前の項目だって、濾過槽を立ち上げよう(1)だったじゃないか・・・」と思われたみなさんも多いかも知れませんね。もちろん、濾過は最も大切な要素の1つですし、項目だって(1)があるからには(2)も必ずあるはずです。でも、大切な要素だからこそ、時間を掛けた方がよいことだってあるワケですね。ここはひとまず落ち着いて、次の要素に進んで行くことにしましょう。




 周りに飛び散らないよう充分に注意しながら、まずは水槽へ水を注ぎ込んで行きます。「あれ? 蛇口から水道水を直接注ぎ込むって、マズいことなんじゃないの?」・・・と思われた方も多いことでしょう。もちろん、水道水には水棲生物にとって好ましいとは言えない物質が数多く含まれているのも事実ですから、中に生体がいる場合には、このやり方、当然ながら好ましいことではありません。しかし、未だ生き物を収容していない、これから水作りを始めて行こうというような段階では、こうした部分について必要以上に神経質になる必要も特にないと思います。カルキ抜きはしておくようにしますが、それでも心配なようであれば、重金属除去系のウォーター・コンディショナーなどを混ぜ込むだけで充分でしょう。むしろ、濾過システムをキッチリと作り上げて行くためには、必要以上の水質調整は逆効果になることもあります。栄養・成分調整系などのコンディショナー添加は行なわず、あくまで「フツーの水」を用意することが大切なのです。





 満量まで注いだところで一旦作業を止め、濾過槽やランプなどをセットした上で全体の状況をチェックしてみましょう。今回は120センチの水槽を使用していますが、中型の水槽でも、水をいっぱいまで張ると、それなりの重量になってしまうものですよね。置き場所などによっては軋みやたわみなどが発生することもありますし、それを放置していると、取り返しのつかない重大なトラブルが発生することもあります。また、周辺機器などの不具合については、実際にセットしてからだと修正が大変になることも少なくありません。濾過用の揚水モーター以外、とりあえずすべての装備をセットした上で、位置や稼働状況を確認しておくようにしましょう。



 それでは、いよいよ揚水モーターのスイッチ・オン! 濾過槽に勢いよく水が流れ込んで行きます。底面濾過や投入濾過などの場合を除くと、濾過システムが稼働することというのは、すなわち「飼育水が水槽の外へ出る」ことを意味します。当然、あらゆるトラブルのきっかけにもなる要素ですから、起動後、想定されている通りにきちんと水が動いているかをしっかり確認しなければなりません。

それにしても、カラのコンテナを流れて行く濾過水の情景っていうのも、ある意味シュールな絵だよなぁ(苦笑)。




 水を張り、ひと通りの動作確認を済ませたところで、いよいよパイロットフィッシュの投入です。今回は、問屋さんに勤めている友人に無理を言って、餌金をわざわざ酸素パックしてもらいました(「アホか、お前は!」って、かなりブーブー言われたけど・・・苦笑)。一般的なショップでも、こうした形でパックしてくれるところが多いですもん。取材ですから、やっぱり絵柄は合わせないと・・・ね(笑)。
 ひと昔前までは「当たり前」だった、水槽立ち上げ時のパイロットフィッシュ投入も、最近では様々な考え方が見られるようになりました。マニュアル本やネット記事などを拝見していても、この部分に関してはかなり強硬な否定的見解を見受けることがあります。ただ、添加剤系での代用が100%上手く機能するかどうかはわからない部分があること、時間を掛けてじっくりと立ち上げて行く状況であること、そして、魚が罹患する病気と甲殻類が罹患する病気は必ずしも100%リンクするワケではないこと・・・などから、ここでは、あえて「昔ながらの王道」を選択することにしました。もちろん、使う魚については、メダカでもいいですし、雑魚でも構わないと思いますが、これから彼らには、極めて不安定な環境の中で「ひと仕事」してもらわなければいけないワケですから、できる限り強健な種で、しかもコンディションのいい状態の個体を使うことは必須です。


 魚たちは、投入前に「お約束」の温度合わせをしましょう。「たかが金魚で・・・」と思うかも知れませんが、彼らには違った意味で、コンディションを崩されると困るのです。これも様々な意見はありますが、パイロットフィッシュの場合「水を作る」という使命上、水合わせはしないで投入するのが一般的です。となると、魚たちからすれば、それだけで充分なダメージとなるワケですから、せめて温度合わせくらいはしてあげてもよいハズ・・・ですよね。


 30分程度掛けて温度合わせをしたら、いよいよ水槽に投入! ちょっとした「金魚水槽」のできあがり(笑)・・・ですね。120センチ水槽に餌金数匹が泳いでいる・・・というのも、ある意味「ヘン」な光景ですが、いよいよザリ水槽完成に向けた水作りのスタートです。