注水時のポイント
一般的な観賞魚飼育マニュアルや水槽セッティング・ガイドなどを読んでいると、注水時に気をつける点として、ほぼ例外なく挙げられているのが「レイアウトを崩さぬよう、できるだけ静かに注ぐ」ということです。中には、小皿やシートなどを敷いた上で、静かに静かに注いで行くという気遣いまでするやり方もあるようです。確かに、ある面から見れば、これは正解であり、特に、生体が水槽内に収容されている状況であれば、注水によって余計なストレスを与えないためにも意味あることでしょう。ただ、新規セッティング時や生体非収容時などの場合では、むしろ思い切ってジャージャー注ぎ込む方がよい場合も少なくありません。
確かに、ザリガニ飼育においても、レイアウトはそれなりに重要ではあります。しかし、特に底床などに関しては、いくら綺麗に整えたといっても、結局は彼らが彼ら自身の手で生活しやすいようにブルドージングするものですし、シュリンプ飼育などと異なり、強流に弱いソイル系底質素材は飼育にとって必須でもありませんから、他の生物と異なり、底質への配慮から水勢を弱めなければならない必然性は低いといえましょう。むしろ、勢いよく注水させることにより、水中の酸素量に対して好影響を与えられるのみならず、曝気による不要溶存物(特にカルキ類など)の中和や除去に対しても好影響が期待されます。もちろん、ただ単に勢いよく注水するからといって、それらの問題がすべて解決するワケではありませんし、こうした部分に関してキチッと手当てしておく必要があることは言うまでもありませんが、少しでも好影響があるのであれば、それはきちんと踏まえておいた方がよいはずです。観賞魚飼育における「固定概念」にとらわれない柔軟さが大切であることを痛感する1事例だといえましょう。ザリガニという生き物を、透徹した観察眼でじっくり見つめて行くと、上辺だけではわからない様々なものが見えてくるものですよね。