購入編2・ショップで流木を選んでみよう
写真:以前、別件の関連取材でショップ巡りをした際、試しにチョイスして購入した流木(左側2本がシェルター重視、右側2本が喰わせ重視)
ただ漠然と探し歩くのではなく、意識して流木に詳しいショップを選び、店員さんとコミニュケーションをとることが非常に大切だ。
前項では、購入に関して意識すべき点や気をつけるべきポイントなどについて考えてきました。それらをきちんと踏まえた上で、いよいよ実際にショップへ出向き、ザリ飼育にピッタリ合った”理想の1本”を探してみることにしましょう。このページでは、実際に購入すべきショップを見つけ、そこで購入することを前提に、シュミレーション形式で話を進めてみたいと思います。
まず、実際にショップ探しをする前に、ごくごく一般的なショップやホームセンターでの流木コーナーについて見てみましょう。もちろん、それぞれの店舗によって取り扱いの量や方法、そして売り方などは千差万別だとは思いますが、おおむね、下の写真のような感じで販売されているのが一般的なのではないかと思います。
たいていのショップにおいて、流木という商材は,少なくとも”そのショップの収益を大きく左右するような主力商品”ではありません。だとすれば、そんな商品のために貴重な陳列棚をいくつも割くワケには行かないのも当然のことで、ほとんどのショップでは、1つの仕入れ先からサイズごとに数本ぐらいずつ仕入れて在庫する・・・というのが普通です。そういう点で考えれば、品揃えという点でも左上の写真のような状態のショップが大半でしょうし、右上の写真のように様々なタイプの流木を陳列しているショップの方が珍しいのかも知れませんね。このような状況ですから、すべてのショップに対して「もっと潤沢に在庫してくれ!」などと要求するのは、正直なところ酷な話なのではないかと思います。
しかも、最近は右の写真のようにビニールパッキングを施した商品も増えてきました。とりあえず全体の形状はわかるものの、肌目や状態のチェックや素材などの細かい確認ができない・・・という点では、私たちのように耐久餌としても吟味せねばならない側からしますと非常に残念な傾向です。ただ、これも関係者から実際に話を聞いてみると、在庫の管理や見栄え、そして陳列棚の清潔さ維持などを考えれば、こういう形で販売する方がショップ側にとっても有利ですし、「汚れなくて済む」という点で、購入者側からも好評・・・とのこと。まさに、売り手と買い手双方の利益が一致した結果、こういう傾向が進んでいるワケですから、これも仕方ないことなのかも知れませんね。
さらに、こうした観点から、ひと昔前までは普通に見ることのできた、ショップ独自の”アク抜き済み流木”の取り扱いも漸減傾向にあるそうです。確かに、ショップ側からすれば、流木を仕入れた後に洗浄したり漬け込んだりするという手間もありますし、そのための水槽や漬け込み槽などのスペースも必要になってきますから、そこまで手を加えたとしてもさほど売れないのであれば、そうした労力やスペースに割くのは経営面でも明らかに非効率的です。なお、漬け込み流木に関しては、購入にあたって少し気をつけなければならない点があるのですが、それについては後の方で触れることにしましょう。
キーパー側からすれば、馴染みのショップや安売りの量販店などで手軽に購入したいと思うのも偽らざる真情だと思います。しかし、観賞魚界全体におけるこうした傾向を考えれば、それをそうしたショップすべてに求めるのは適切ではありません。だとすると、いったいどういうショップを選べばいいのか・・・?まず、そこの部分に気づく必要があるのです。
流木を購入するのに適したショップ・・・とは?
こうした状況を踏まえた上で、流木を購入するのに適したショップについて考えて行くと、もちろん”流木の品揃えが多く、店員が流木について豊富な知識を持つ”ショップだ・・・ということになりましょうが、だからといって、行く店行く店で「お宅さんは流木に詳しいの?」なんて失礼極まりない質問はできません・・・よね?(苦笑)。そこで、手っ取り早くそれを知るための有効な方法があるのです。それは、そのショップの得意ジャンル!
実際に様々なショップを見て歩いた上で、ほぼ間違いなく在庫が豊富で、しかも流木に詳しい店員さんがいるジャンルというのは、ズバリ
”水草系”に強いショップ
なのです。私たちザリ・キーパーからすると、最も縁遠いジャンルであり、積極的に出入りすることもなかなかないかとは思うのですが、実は、このジャンルこそがキー・ポイントだったワケです。
観賞魚の世界では、21世紀に入り、新たに「アクアガーデニング」や「ネイチャーアクアリウム」などと呼ばれる水草主体のジャンルが生まれ、定着してきましたが、この世界において流木の存在というのは、岩石類と合わせて非常に大きな意味を持つ商材となっています。どのような素材のどのような形状の流木を用いるかによって、レイアウトの成否を大きく分けてしまう、ある種の”カギ”ともなり得る材料ですから・・・ね。こうした専門ショップは、そうした顧客の要望に応えるためにも様々なタイプの様々な素材のものを、あちこちから仕入れて取り揃えておかなければなりません。また、流木についても応分の知識を持っていないと、顧客からの信頼を失ってしまう危険性もあるのです。その結果、店員さんも一般的な熱帯魚ショップの方と比べ、自ずと流木への知識が深まり、様々なノウハウを持つに至る・・・というワケですね。基本的なジャンルこそ違え、我々にとってこれほどありがたい存在はありません。しかも、もし可能なようであれば、ある種の”チェーン店”のようなショップではなく、
店主自らが仕入れをし、自らレイアウトを組んで販売したり出展したりするような個人経営型ショップ
の方が、より細かいこだわりや対応力を持っていることが多いのも見逃せないところです。ただ仕入れて販売するのではなく、実際に自らその流木を使ってみることで、素材の特徴やアクの出方などを熟知しているからです。「たかが流木を買うために、店探しから始めないといけないなんて・・・」と思われるかも知れませんが、ザリにとって最良の流木を探すのであれば、まずは、そうしたショップを探してみることが一番の近道でもあるはずです。
あいにく、我が千葉県佐倉市周辺ではそのような専門ショップが見当たりませんでしたが、ザリに関する専門文献探しのために出向いた茨城県つくば市で、偶然にも水草関係にとても詳しいショップ「
AQUARIUM SHOP Breath
」さんを見つけましたので、店主の吉原将史さんに事情を話して全面的にご協力をいただけることとなりました。それでは、そこで撮らせていただいた写真を使いながら、購入までの流れを見てみることにしましょう。
まずは商品をチェックしてみよう
せっかく知識を持つショップを見つけたなら、すぐにでも店員さんに声を掛けて、一緒に選んでもらう方が楽・・・と思いがちですが、残念ながらそれは正しい動きではありません。なぜなら、流木に関する大前提の条件として「流木の活用方法が、店員さんや一般のアクアリストと、我々ザリガニ・キーパーとでは根本から違う」という現実があるからです。基本的な流木の使い方が違う以上、“いい流木”の条件も違えば、その”選別基準”も異なるのが普通だと考えるべきでしょう。しかも、一部のプレコ飼育などを除いては、流木はあくまでも”ディスプレイ・ツール”であり、少なくとも「生体に喰わせる」ために買う・・・なんて発想は出てこようはずがありません。そういう点で考えれば、私たちはショップに出掛けるよりも前の段階で「今回は、こういう目的でこういう流木を欲しい」という”狙い”を明確にしておく必要があります。あくまでシェルター主体で行くのか、それとも”喰わせ”に主眼を置くのかでも、選ぶ流木は自ずと変わってくるからです。こういう部分を何も考えずにショップを訪れ、いきなりそこの店員さんに「どれが一番いいですか?」なんて尋ねたとしても、店員さんだって困ってしまうことでしょうし・・・ね。ですから、実際に店員さんに声を掛けるのは、まだまだ先の段階です。
さすがにネイチャーアクアリウムに強いショップですから、様々な素材の、様々なタイプの流木が販売されているはずです。あらかじめ自分が購入したいタイプの流木を頭の中に思い浮かべておいた上で、まずはそれらの商品を充分に見て、そして手に取ってチェックしてみましょう。どんな大きさの、どんな形状のものなのか?どんな素材なのか?状態はどうなっているのか?・・・など、観察すべきことはたくさんあるのです。大きさなどの関係からショップで割られているような流木に関しては、その断面などを細かくチェックしてみることも大切です。
店員さんに話を聞いてみよう
自分なりに「買うならこれ!」という流木を見つけたら、それを手に、店員さんへ声を掛けてみましょう。その時のイメージとしては「自分の選んだ流木が正しい選択だったかどうかを、店員さんに答え合わせしてもらう」感じです。その際に、ただ「この流木はザリガニ飼育に適していますか?」という問い掛けては不充分です。ザリガニは流木を齧るので、餌用という目的があることも伝えつつ、マングローブ系の広葉樹素材であるかどうか、燻蒸や薬剤処理などがなされていないか、すぐに沈水するか・・・など、できるだけ具体的な事例を挙げながら見解を求めます。店員さん自身、流木自体の知識は豊富であるハズですので、具体的な内容さえ確実に伝えれば、単純な可否だけでなく、たとえば「素材はマングローブなんですが、今回入荷しているこの棚にある木は、沈水させるとタール分がにじみ出ることのある素材ですので、そういう使い方ならばやめた方がいいです。こっちの棚の木なら大丈夫です」など、一般的なショップでは決して得ることのできない詳密で適切な見解を示してくれることでしょう。
なお、漬け込み(アク抜き)済みの流木を購入する場合は、その処理がどういう形で行なわれたのかを事前にキチンと確認しておかねばなりません。水草水槽の場合、流木から出るアクについては、むしろ私たち以上に気をつかうのが普通ですが、こうした専門ショップの場合、逆に豊富で深い知識を持っているがゆえに、独自の特殊な方法でアク抜き処理をしている可能性もゼロではないからです。一般的な熱帯魚や水草類であれば影響の出ない薬剤などであっても、ザリガニを始めとした甲殻類には致命的なダメージを与える危険性があります。私たちがアク抜き済み流木を購入する場合、基本的に煮沸処理または単純な水漬け込み処理のものに限ります(万全を期して、重曹処理のものについても避けた方がよいでしょう)ので、そうした点もキチンと確認するようにしましょう。事情を話せば、そうした部分に関しても細かく考慮し、教えて下さるはずです。
店員さんの”オススメ”を尋ねてみよう
流木に関しては、元々深い知識をお持ちのはずですので、こちら側からいろいろな話をして、やり取りを進めて行けば、店員さん側も自ずと「このお客さんは、どのような流木を欲しがっているのか?」ということがわかってきます。そうしたやり取りを行なった上で、ここで初めて「オススメの流木はありますか?」と問うてみるのも有効です。
店員さんは、今までの会話の中で得た情報を元に、必要な条件に合致した流木を選び、薦めて下さることでしょう。その際に、もしかしたら私たちには気づき得なかった、新しい観点や知識などを示してくれることがあるかも知れません。もし、親切な店員さんであれば、素材や状況の判断方法、さらには購入後の処理方法や管理方法などを事細かに教えて下さることもありましょう。これは、本当に有意義なことです。
確かに、ザリガニの飼育歴もある程度長くなってくれば、流木を入手する機会や経験も増えてきましょうし、それまでに購入してきた総本数も何百本・・・という感じになってきましょうから、購入時の注意点や判断基準、さらにはおおよその”狙い目”なども自然と身に付いてくるものです。しかし、そこまでに至っていない場合、自分だけの判断では思うような流木を入手できなかったりすることも少なくありません。せっかく吟味して買ったはずなのに、いざ水槽に投入してみると「アクばっかり出て、個体は全然齧ってくれない」だの「シェルターとして見向きもしてくれない」だのといった失敗を少しでも減らすためには、こうした専門家の知恵を積極的に取り入れて行くことも非常に大切だといえましょう。こういうコミニュケーションの積み重ねによって、品物以外にも様々な経験や知識を手に入れて行くことができるのが、安売り量販店やホームセンターなどとは根本的に異なる、専門ショップの”強み”でもあるはずです。
このような形で、ザリ飼育に役立つ”ザリガニのための流木”を手に入れて行くことができれば、飼育に関しても様々な幅が広がってくるはずです。「たかが流木」かも知れませんが、上手くハマってさえくれれば流木ほど役立つツールはありません。充分に吟味して買った流木を、個体がガリガリ齧ってくれるシーンを見るのは、まさに”キーパー冥利に尽きる”部分でもありますので、ぜひ、こうした部分に関しても意識して行かれるとよいでしょう。
今回の記事でご協力をいただいたショップ
AQUARIUM SHOP Breath
さん
茨城県つくば市松野木99-38-102
029-836-3293
公式ホームページは・・・
こちら
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