基本の「き」! 写真で見る、ザリガニの剥き方

 ザリガニの喰い方には数々あれど、やはり世界中どこを見回しても、一番多いのが「茹でて、剥いて、喰う」っていうパターンなのです。だとすれば、やっぱり必要最低限のこととして、茹でられたザリガニを剥けるようにはなっておかないと・・・ねぇ。
 そこでここでは、茹でたウチダザリガニの身を使って、実際に1枚ずつ写真を撮りながら「剥き方」を解説して行くことにしましょう。ついでに、この写真を撮影した当日のイベント、平成22年度裏磐梯観光協会主催のウチダザリガニ釣り大会「レイクロブスターと遊ぼう」の様子もご紹介しちゃいますね!




 これが、今回の「主役(素材?)」であるウチダザリガニです。アメザリと比較すると、可食部はだいぶ大きいですね。ある程度以上のサイズになれば、ツメも美味しくいただけますし・・・。それでは、さっそく剥いて行くことにしましょう。

 まず、頭胸甲のところを両脇から軽く押し、その上で写真のように腹節部を折り曲げて行きます。人によっては、腹節を折り曲げて行くのではなく、頭胸甲と腹節の隙間から爪を入れ、頭胸甲の方を上にめくり上げて行く方法をとる場合もあります。どっちが剥きやすいかは、好み・・・ということで。絵的には後者の方がグロいですが、味噌は後者の方が食べやすいので、一長一短といったところでしょう。

 肉が見えてきたら、ゆっくりと後ろに引き出して行きます。

 取り出した感じが、この写真! 腹肉の先端に、味噌が少しついているのがわかるでしょうか? これがまた、美味なんですねぇ。

 今度は、腹脚の甲羅を剥きながら取り除いて行きましょう。腹節を左右から軽く押しつぶし、ヒビを入れてから剥くと、容易に取り除けます。尾扇のところは、後ろから引っ張って抜き取ります。

 残った頭胸甲部も、ちょっと覗いてみましょう。中に、美味しい味噌が残っていれば、迷わずこれをチューチューしちゃいます。メスの個体だった場合、時期によってはこのように卵が入っていることもあるんですよ。

 全部剥き終わった腹の身が、これ・・・。ウチダの場合、アメザリとは比較にならないくらい大きな身をしていますし、本当に美味しそうですね。ある程度泥吐きさせた後の個体であれば、この状態でお口に入れちゃって大丈夫ですし、私なんざ、泥吐きしていようがいまいが、これで「完了」なんですが・・・(苦笑)。

 ただ、世の中、こういう泥臭さ系統がダイッ嫌いな方もいらっしゃいますし、そりゃあ少しでも美味しく食べた方がよいに決まってますんで、念のため、腸管の泥抜きの手順も解説しちゃおう・・・と。

 剥いた身を、背中側より軽く爪で縦方向に切り目を入れます。CDなんかのビニールラッピングを爪で開ける・・・みたいな感じですね。切り目を入れたら、今度は指で両側に押し開いて行きます。そうすると、ほら・・・。

 中から見えてきた、この黒いヒモ状のものが腸管、背ワタとも呼ばれるものですが、これこそが「泥臭さ」の原因なんですね。尾扇の排泄口とつながっていますから、そこから抜き取ることもできなくはありませんが、茹でてある場合、こうやって背中側から剥く方が確実です。

 背ワタ(腸管)は、このように指でピィーッと簡単に引き抜いて取り除くことができます。

 背ワタを抜けば、これで完成! そのままお口へ放り込んでしましょう。ちょっとしたエビに勝るとも劣らない美味に、あなたも必ず感動しますぜ!

 さて、アメザリですと少し厳しいですが、ウチダの少し大きめな個体であれば、ハサミもバッチリ食べることができます。せっかくですから、これも写真で解説して行きましょう。

 まず、腕節から先を切り離し、ハサミだけ(前節と指節だけ)の状態にします。その上で、裏(下)側の可動肢(指節)側の方からハサミで切り込みを入れて行きましょう。ハサミがない場合は手で剥く形になりますが、さすがにちょっと厳しいかも・・・。やっぱり、ハサミは必需品ですね。

 指節の根元まで切り込みを入れたら、裏面全体を斬り込んで行きます。

 ひと通り切り目を入れたら、バチン!と剥いてしまいましょう。まさに「カニ身」と見紛うばかりの爪肉が出てきます。このままチューチュー吸い出してもよいですが、指節を開ききって外せば、スルッと簡単に取り出すことができます。腹肉とは違った食感が最高!


 なんちゃって愛護論に燃えてみるのも悪いことではありませんが、世の中、それだけでは片付かないこともあるワケです。だったら、身も剥けて、爪も剥ければ、あなたも立派なクレイ・イーター! さぁ、美味しくいただいちゃいましょう。





 そのような「釣って、触れ合って、食べて」楽しめるイベントが、福島県の裏磐梯で毎夏開かれています。今回は、初の試みとなった平成22年夏のイベントの様子を覗いてみましょう。

 ウチダザリガニは、今から10年ほど前、何者かの手によって小野川湖に放たれましたが、その後、急激に棲息域を広げており、現在、裏磐梯区域内の様々な場所で目にすることができます。大会は、参加者が安全に触れ合えるよう、足場の良好な村有地が選ばれています。会場に近づくと、手作りの看板がお出迎え!

 参加の場合は、事前に地元の裏磐梯観光協会へ申し込みをしておきます。観光協会加盟の宿泊施設などを利用の場合、参加費が割引になる場合もあるので、確認をしましょう。あとは当日、直接現地に集合します。

 現地では、受け入れ態勢もバッチリ! 大会に必要な道具は、現地にすべて用意されているので、参加者は手ぶらでOK!

 観光協会スタッフの方より、大会内容や手順などが説明された後、いよいよ60分間の釣り大会スタート! 2人1組のペアで、釣れたウチダザリガニの数を競う・・・という、競技内容としては非常にシンプルなものです。
 ただ、これが意外と奥が深い! 子連れで参加のお父さんやお母さん、最初はにこやかに我が子の様子を見守っているのですが、5分経ち、10分経ち・・・すると、なぜか目の色が徐々に変わって来ます(笑)。30分も経過すると、誰が最も一生懸命になっているか、わからなくなってしまって・・・(苦笑)。

 参加者が釣りにエキサイトしている間、会場ではスタッフが大鍋を用意! 軽く塩を加えて沸かして行きます。グツグツと煮立ってくれば、もう準備万端!

 60分間の釣りバトルが終了すると、参加者全員でチームごとの釣果を計数し、上位のチームには表彰が行なわれます。コレもまた、嬉しい瞬間ですね!

 今日1日で、釣り上げられたウチダザリガニの一部が、これ・・・。たった1時間の釣り大会でも、大小様々な個体が、バケツ一杯になってしまうんですね。天敵がいない環境で人為放流されてしまうと、こういう結果を招いてしまうのです。自然界における生態系は、極めて絶妙なバランスの上に成り立っているということを、改めて痛感させられる1コマだともいえましょう。

 表彰式が終われば、もう1つのイベントでもある「ザリ喰い」大会の準備を参加者全員で進めます。グツグツ煮立った鍋に、釣ったばかりのザリガニをどんどん投入! 日ごろ料理に慣れているお母さんたちよりも、むしろお父さんと子どもたちの方が積極的だったりして(笑)。

 鍋に投入されたザリガニは、みるみるうちに真っ赤に変わって行きます。意外と知られていないのですが、この現象、茶色いザリガニだけでなく、青いザリガニでも緑色のザリガニでも、同じく真っ赤になるんですよ! これは、茹でられることによって、タンパク質と結合していたアスタキサンチンが分離し、アスタキサンチン本来の色になるためなんですね。

 茹で上がれば、鍋から上げて少し冷まします。さっきまで生きていた新鮮な身は、例えようのないくらいプリプリなんですぜ! あぁ、ヨダレが出そう・・・。

 イベントの最後は、こうやって参加者全員で茹でザリガニを囲み、釣りたての新鮮な珍味に舌鼓を打ちます。そして、楽しく語らいながらも「生命をいただく」という厳然たる事実や「自然の本来あるべき姿とは何か? そして、その中でのウチダザリガニの存在の意味とは何か?」・・・を考える貴重な機会にもなるワケですね。