judge-4 喧嘩の「前兆」を見極める
写真:シェルターの中から、片方の触角だけを出して様子をサーチするウチダザリガニ。第二触角の役割は決して小さくはない。
〜正しいジャッジのための必須事項〜
Point-1 個体同士が何の前兆も見せずに、突然喧嘩を起こすことは考えにくい。日常の個体観察は重要
Point-2 互いが接近した時の動き、特に触角などの動きに注意して、行動を先読みできるようにしたい
・・・ということは?
喧嘩を最低限度に抑えるためには、彼らの「動き」をよく見、そして知っておかなければなりません。同じような体格の個体同士がすれ違っても、全く何も起こらないこともあれば、互いに目の前に出てきて、まるでわざわざやっているかのように喧嘩を始める個体もいます。そして、こうした違いが起きる理由やその背景などについては、残念ながら現段階では科学的に未解明な部分も多く、種の性質や、その時その時の状態によっても大きく異なった結果となるものです。
科学的な「法則」のような性質のものが存在していない以上、個体同士の喧嘩や無用なトラブルなどを見極め、回避して行くためには「キーパー側の注意力や細かな観察眼」というようなものが、物を言うことも少なくありません。「観察に頼る」とは少々原始的ですが、互いの個体が接近した時点での互いの動作をよく観察して行くと、微妙な優劣関係や互いの認識状況なども見えることがあるものです。餌の与え方や隔離の仕方など、飼育に関する基本的な対応事項なども、結局のところこういう観察によって判断をして行かなければならないものですから、原始的だとはいえ、それだけ重要なものであることは間違いなさそうです。
もちろん、ただ漫然と眺めていればいいわけではありません。「どこを、どう見るか?」という部分は非常に重要で、ハサミの振り上げ方や腹節の丸め方など、注目すべきポイントはたくさんありますが、意外と見逃されがちで、しかも非常に重要なのが、外界をサーチする「レーダー」とでもいうべき第2触角の動きです。それこそ「触角は口ほどに物を言い」ということになりましょうか?
個体によっても違いがありますので一概には断言できませんが、喧嘩の最中または直前になりますと、多くのザリガニがピィーンと真横に触角を伸ばすか、まっすぐ真上に伸ばします。気の利いたキーパーに言わせると「こいつ、ファイティング・ポーズとってるぜ!」ということになりますが、たとえそうでなくても、触角でもって何らかの「臨戦姿勢」を見せる個体は少なくありません。他にも「お互いに向かい合った時、直接触角を相手個体に接触させてサーチする方が、優位な個体」とか「立ち止まったまま触角でサーチする時は、喧嘩をしようとしている証拠」など、自分の飼育経験から、それぞれ独自の「理論」を持っているキーパーも多くいるものです。確かに、これらの大半は、何の科学的根拠も持たない単なる「経験則」ですが、中には、非常に参考となるものもありますから、決してバカにはできません。科学的根拠があろうとなかろうと、個体のトラブルが避けられれば、それに越したことはないわけですから、キーパーは、こうした部分を軽視することなく、日ごろから細かくチェックし、瞬時に状況を判断できるようにしたいものです。「何の前触れもなく、喧嘩が起こる」・・・ということは、ほぼ100%あり得ないことなのですから・・・。
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