judge-2 喧嘩で死ぬ・・・ということ
写真:それぞれの「定位置」に陣取り、落ち着いているヤビーのペア
(それでも、互いの状況を、触角で常にサーチしていることがよくわかる)
〜正しいジャッジのための必須事項〜
Point-1 本来、個体同士の喧嘩が致命的な状況を生むことは決して多くないものである
Point-2 水槽という特殊な空間こそが、喧嘩によるダメージを、より深刻なものにする
・・・ということは?
読んで字のごとく「喧嘩」ですから、多かれ少なかれ、傷はつくものです。自切、そして再生という、ザリガニを始めとしたグループならではの習性も、基本的にはこうした状況から安全に抜け出すことで、自分の命を守るために編み出された・・・と考えて、決して不思議ではありません。
水槽飼育下では、「喧嘩で個体が死んでしまった」というケースを、実によく耳にします。しかし、喧嘩が起こるたびに必ずどちらかが死ぬ・・・・ようですと、ザリガニという生物自体、瞬く間に立ち行かなくなり、あっという間に滅びてしまいます。ですから、自然下ですと、どちらかが負ける(退避行動をとる)ことで収まるケースが大半ですし、自切などが起こることはあっても、どちらかが死に至ることは、さほど多くないはずです。では、なぜ水槽では、こうした事例が多く出てしまうのでしょうか?
ある程度の水深がある用水路や、幅のある池・沼などでザリガニ捕り(釣りではありません)をしたことがある方ならおわかりいただけるでしょうが、網などでザリを押さえようとすると、尾扇を使って後ろにピュッと逃げますよね? これをザリガニの緊急退避行動(逃げる行動)というのですが、これには凄いものがあります。数メートル程度であれば、それこそ「尾のひと掻き」程度で簡単に逃げ去ってしまいますし、元気な成体にもなりますと、アッという間に視界から消えてしまうことも珍しくはありません。これだけの距離があれば、当面の「危険エリア」から抜け出すのは簡単なこと・・・。確かにひとたび大喧嘩にでもなれば、胸脚の1、2本は取れることもありましょう。しかし、上手く逃げ出せさえすれば、自切後は、いずれ再生するのを待てばいいだけですから、そう深刻な問題にもならないのです。自然界において「個体同士の喧嘩」という要素が、個体数減少にとって、さほど大きな問題になり得ないことは、このことを考えれば充分理解できましょう。
しかし、現実的問題として、私たちは飼育の段階で、そこまで大きな水槽を用意できるでしょうか? 仮に用意できたとしても、そこに2匹しか収容しない・・・ということはないはずです。だとすれば、彼らが逃げようとしても、逃げ切れない状況が発生するのは当然です。閉鎖的な水槽環境というのは、ザリにとって「喧嘩をするよう、無理にけしかけている」環境である・・・ともいえましょう。これでもって「喧嘩をするな!」とは、少々ヒドい話なのかも知れません。「金網デスマッチ」ではありませんが、勝負が決しても逃げ切れない環境の中で喧嘩が起こるとすれば、敗者に大変なダメージが出てしまうことは、当たり前すぎる話なのです。
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