第1実験:身の回りにある材料を餌に使って、真っ白いザリガニを作ってみよう!

実験準備2・実験個体を探しに行こう
(平成13年6月2日)

今回の実験では、最も手軽で、かつ親しまれているアメリカザリガニをメインに使うことにしました。個体は、ペットショップなどでも購入できますし、その際には「餌用」として販売されている小さいサイズの個体を使うことがベストですが、せっかく取り組むのですから、これを機会に、彼らの「自然な状態」を知ることも兼ねて、採集に出掛けることをお薦めします。調べ学習の一環として近くの水路に出掛けるのも面白いですし、休日などを使って、の〜んびり「ザリ釣り」などを楽しんでみるのも、なかなか楽しいですよ!
なお、今回の実験では、外産ザリガニに興味を持たれているザリ・キーパーのみなさんにも楽しく御参加いただけますよう、アメリカザリガニ以外に、ヤビーも1匹使う予定になっております。




の〜んびりとしたムード広がる田園地帯・・・。田植えを終えたばかりの瑞々しい水田の横には、若葉に覆われた水路が伸び、そして、満々と水をたたえた川がゆっくりと流れて行きます。「生き物好き」にとっては、たまらない風景ではありますが、さぁ、目指すアメザリのチビを探すために、私たちは、どこの前に立ったらいいのでしょうか? 田んぼ? 水路? それとも川の本流・・・?





正解は、そう!「水路」ですね! 田んぼの場合、最近は農薬使用のため、ザリガニはおろか、オタマジャクシやミズカマキリの類も目にできなくなってきました。無農薬ブームもあって、生き物の姿を目にできる田んぼも少しずつ増えてはきていますが、それでも、田植え直後は農家の方のしっかりした管理が行き届いている関係で、生き物の姿を目にすることはあまりありません。田んぼでザリを捕まえられるのは、冬場の「穴掘り採集」だけだと言ってもよいでしょう。
一方、川の本流の方ですが、こちらは、いるとしても大型個体が主流です。一見、暮らしやすいようにも思えますが、コイ、フナ、ウシガエル、そしてライギョやブラックバスなどといった「外敵」が多く、生き延びるのは大変ですね。科学的な裏付けはありませんが、テナガエビなどが多い河川本流域では、アメザリの姿がほとんど見られない・・・というケースも、少なからずあるようです。





それでは、もう少し水路に近づいてみましょう。水路は、この写真のように、流幅1〜2メートル、水深でいえば、せいぜい数10センチであり、流れもほとんどあるかないか・・・というくらい、緩やかなものです。水底もバッチリ見えますし、当然、そこにいるザリたちの姿もしっかり確認できます。子どもでも安全・・・といいたいところなのですが、たいていの場合、こうした水路は「ドロ底」ですから、うっかりハマり込むと大変! 子ども同士だけでは危険です。必ず、大人と一緒に行きましょう。そして、長靴は絶対に必需品! 水路だけでなく、水辺すべてに言えることですが「自然は、楽しいものであり、そして怖いもの」です。ちょっとした「甘え」や「油断」は、大変なトラブルになることを、忘れてはいけません。





ザリの採集をはじめる前に、まずは、よぉ〜く中を見てみましょう。すると、いたいたっ! 川底に沈む枯れ茎に、小さいザリガニがしがみついています。こうして見ると、アメザリの稚ザリが、どうして薄褐色のボディー・カラーをまとっているかが、わかるような気がしますよね! 外敵に襲われればひとたまりもない彼らにとって「目立たない色」であることは、とても重要なのです。





一方、こちらのザリですが、川底で横向きになって何をしているのかと思いきや、一心不乱に、枯れ茎を食べているではありませんか! ザリガニの餌というと、私たちは肉だの魚だの・・・というイメージがありますが、自然界において、彼らはそう簡単に、おいしい食事になどありつけません。ですから、むしろ彼らは、半ば強制的な「ベジタリアン」であることの方が多いのです。腐敗して栄養価の上がった植物は、彼らにとっての貴重な「主食」であり、たまに得られる貴重な「肉系」の餌も食べながら、少しずつ、少しずつ成長して行くのです。





では、さっそく採集に取り掛かりましょう。まずは、一番お手軽で、しかも楽しい「ザリ釣り」から・・・。自宅から持参するのは、適当な糸と晩酌で残ったスルメ! ザリガニはハサミを持っていますが、アメザリの場合、さすがに糸をスパッと切れるほど鋭利なものではありませんから、よほどの大物狙いでもなければ、釣り糸やタコ糸である必要はなく、普通の綿の縫い糸で充分です。竿は、現地で調達します。川岸に立っている枯れ茎などを根元からポキンと折って、余計な枯れ枝を払い落とし、先っぽに糸をくくりつけます。あとは、糸の先にスルメを結びつけて、ハイ完成! さっそく、水中にいるザリの鼻っ先に投げてやります。





すると、ホラ! アッという間に10センチ強の個体を1匹ゲット! ザリからすれば、久しぶりの「おいしい匂い」ですもん。見逃さないはずがありません。上から覗いていても、触角をピクピクさせながら、がんがんスルメに近づいてくるのが、よくわかります。まずはザリにスルメをつかませ、じっくりと食べ始めるのを確認してから、ゆっくりと引き上げる・・・。これが、ザリ釣りの「基本」テクニックですね。それにしても、ザリを釣り上げた瞬間というのは、子どもはもちろん、大人であっても笑顔がほころぶものです。





ところが、釣れども釣れども、上がってくるのは大型個体ばかり・・・。目指すチビザリは、一向に食いついてきません。それもそのはず・・・。チビザリが餌を見つけても、それより大きな個体が横取りしてしまうのです。これも、自然界の厳しいおきて・・・。でも、こうした動きに感心してばかりはいられません。結局、釣りをあきらめ、中に入って直接掬いとる作戦に(苦笑)。本当は、ザルなどがあると捕まえやすいのですが、あいにく持ってきていなかったので、仕方なく網を持って「突撃」します。





ザリガニは、後ろに逃げる性質を持っていますので、網で追い回すのではなく、前から網の方へ追い立てるようにして掬います。川底の枯れ草、枯れ茎周りを丹念にチェックして行きましょう。それにしても、気を付けていただきたいのが、長靴の潜り具合・・・ですね。写真でもわかる通り、大人用の高長靴(ひざ下までの長靴)が、ほとんど水中に沈むくらい、川底にはドロが積もっています。一度ハマッてしまうと大変なので、子どもだけでは絶対にしないようにしましょう。





素早く逃げ回るチビザリと格闘すること約10分・・・。やっと、体長3センチくらいのチビザリをゲットしました。大きさ、そして体色などから見ても、昨年の秋仔(秋繁殖で生まれた稚ザリ)であることは間違いなさそうです。やっと、実験に使える個体が見つかりましたね!





持ち帰る個体は、手早く湿らした新聞紙にくるんでしまいます。「エラが湿っていさえいれば、大気中の酸素を直接摂取できる」というザリガニの特性を応用させてもらったやり方ですが、当然、個体にとっては苦しい環境を強いることになるわけですから、長時間の輸送には向きません。また、日なたなどに置いておきますと、一気に温度が上昇しますので、最後に新聞紙へくるむか、くるんだ後は日陰に置くなどといった配慮は絶対に必要です。





ダッシュで自宅に持ち帰り、さっそく新聞紙を開いてみますと、いましたいました! 捕獲からここまで、約30分間かかりましたが、何とか体調を落とさず、元気なままで持ってくることができました。到着後は、一刻も早く水槽に導入しましょう。いくら「大気から直接呼吸できる」とはいっても、彼ら本来の呼吸は、充分に酸素の溶けた水からであるはず・・・ですものね。水槽には、すでに充分酸素を溶かし込んだ満タンの水が、主の登場を今や遅しと待ちかまえています。





水槽投入後は、とにかく個体を落ち着かせることが一番! 半日から一日の間は、無理に個体を覗かず、そっとしておいてやりましょう。その間、餌を抜くことは一向に問題ありませんし、むしろ水槽導入直後は、個体も興奮しており、餌に対する反応も鈍いのが普通です。丸一日が過ぎ、個体が落ち着いてから、少しずつ餌を与えましょう。また、個体が興奮している関係で、最も「脱走しやすい」時期である・・・ともいえます。エアーホースや上蓋など、脱走経路のチェックは万全にしましょう。とにかく、水槽への「馴らし」に「焦り」は禁物です。





個体も導入して準備完了、
いよいよ、実験のスタートです!