第0講座(System-0)

インスタント・ブルー
〜なぜ、このコーナーが必要なのか?〜


いくら高い値段で売られているとはいっても、所詮はヤビー、たかがヤビーです。他よりちょっと青いだけで、別に何の変哲もないヤビーです。観賞魚用だからプラスアルファの価値が出るだけで、もし食用としての養殖なら、逆にハネ物扱いにされるB級品です。それなのに、何でこんなコーナーまで作って、しかも何年も時間をかけて、そんなザリガニを作ろうとするのでしょうか?
それは、カッコいいからです! 綺麗だからです! 迫力あるからです! 動機や細部はともかく、「すっごくいい」からですよね!
では、どんなヤビー青個体がいいのでしょうか?
もちろん、色がいいことは絶対条件ですよね! ブルーマロン顔負けの群青色が好きな方から、突き抜けるように爽やかな空色を目指している方もいるでしょう。また、関節部の色を気にする方もいますよね! 青と赤のコントラストに全精力を注いでいる方もいらっしゃることでしょう。「いい色」これは一番の条件です。じゃあ、それ以外の条件は・・・?
1つには、やっぱりカッコいいことでしょう。体型にも好みがあるとは言っても、あまりにもバランスの崩れた、いびつなヤビーでは嬉しくもありません。ハサミが大きいのはもちろんですが、頭胸甲だけでなく、腹部もしっかりとした大きさと幅を持ち、ハサミの先から尾扇の1枚1枚まで、均整の取れたボディーラインの方がいいに決まっています。
また、できれば脱皮なんかで色が飛ばない方がいいですよね! これは環境変化でも同様です。よく「買ってきて2ヶ月経ったら、色がくすんじゃった。これって詐欺じゃないの?」なんていう声をお聞きしますが、体色自体、こういう要素が強い性格のものですから、これは仕方ないことなんです。それでも、できることなら脱皮や環境変化でもあまり色飛びを起こさないような個体がいいに決まってますよね!
さらに、ここまで来るとかなり「ない物ねだり」の様相を呈してきますが、できることなら、子も孫も、青い個体であって欲しい・・・と考えてしまいます。
こうなると、キーパーが本当に欲しい「青ヤビー」とは、

1.濃いか薄いかは別に、体色が好みのブルー
2.丈夫で色が飛びにくい
3.迫力があり、しかも均整の取れたボディーライン
4.子孫にも青体色が伝わりやすい

なんてことになりましょうか?
このコーナーでは、ただ単に「青いヤビーが欲しいよぉ!」なんていうミーハーな乗りではなく、自らの手で、そんな「4拍子揃った」ヤビーを作りたい・・・と考えられている方を対象に話を進めるつもりです。
でも、中には「そんな面倒なことはしたくない、色飛びしようが一時的だろうが、とにかく青ければいいから、手っ取り早く手に入れたい」という方もいらっしゃると思います。こうやって作るヤビーがいいか悪いかは各自のご判断に任せるとして、とにかく「作り方」であることは間違いありませんから、まず最初に、この方法をご説明しておきましょう。せっかくですから「インスタント・ブルー」なんて名前をつけてしまいましょうか?
「インスタント・ブルー」の作り方は簡単です。極端に薄くない体色で、適当に揃えたオスとメスとを掛け合わせ、採れた仔の中から青っぽい個体を選り抜いて高温(というより常温)・高蛋白(というより普通の餌)で単独飼育・・・と、そんなものです。色がひと通り落ち着くようになる1+程度までの約1年間が必要ですが、とりあえず、これで「インスタント・ブルー」は完成ですね。もちろん、環境や育て方を一歩間違えれば膨らんでしまいますし、脱皮頻度が高まる以上、脱皮失敗や甲殻の不硬化などの問題も発生しやすくなります。また、また、少しの環境変化で、ガクンと色飛びすることも少なくありません。伝言板やその他のコーナーでも再三に渡ってお知らせしているように、体色は、きわめて不安定かつ不完全な要素を持っています。特に「青色」については、その傾向が強く、だからこそ、そうした「苦情」も出てくるのでありましょう。見るからに経験の浅そうな個体説明のつけられた青個体が、ネットオークションなどにも出品されているようですが、要は「偶然にせよ一時的にせよ、青い個体を作ること自体は決して難しくない」というのが事実なのです。「青」という色は、元々彼らの持っている地色の範囲内にあるものです。決して見下しているのではなく、そういう個体でいいのであれば、わざわざこんなコーナーを読み、これ以上グダグダと面倒臭いことをやる必要は一切ありません。
そして、それすらも面倒臭い・・・というのであれば、あとは「お金を払って気に入った色や形の個体を購入する」ことしかありません。一番早く、一番楽な方法です。もちろん、カネさえ積めば必ずいい個体が入手できるかというと、そうでもありません。恐ろしく高い値段をつけた、でも、お粗末極まりない青ヤビーが売られていることも全くゼロではないのです。どんな個体に巡り会えるかは、ある意味「運」のような部分もあるかも知れません。いい、悪い、一切関係なく、これは1つの厳然たる事実・・・なのですから。
自分で飼育経験を積まないことで、とんでもない勘違いをしたままであったり、あるいは内に潜む大きな問題点を見抜くことができないケースもありますが、これは、「面倒臭さをカネで解決しよう」というスタンスで臨んでいる以上、ある意味、仕方ないことでもあります。
お金よりも、愛情と信念を個体にぶつけて行きたい・・・という方には、それだけの時間と手間を掛けていただきましょう。このコーナーは、そんな方にこそ役に立つコーナーです。そんな気合いをお持ちの方のみ、どうぞ次の章へお進み下さい。



〜この章のまとめ〜

「自分が個体に何を求めるか?」で、アプローチ方法は自ずと異なる。
単に「青い個体を作る」だけなら、簡単に、すぐに、誰でもできるものである。