白ヒゲ青色個体



撮影 佐倉ザリガニ研究所

   佐倉ザリ研の独自データによる  この体色個体の特徴   
   観賞魚界における発見(報告)年と発見地域   平成15(2003)年・人工作出  
主な発見(棲息)状態 個体群型 突然変異型
固定度(形質の安定度)
流通量及び頻度
戻し交配の難易度 容易 困難





 白ヒゲ赤色個体の棲息地、特に、茨城県、埼玉県、愛知県、新潟県などの棲息地からは、今でも時々発見事例が聞かれますが、固定された個体として報告され、一般的な流通ルートに乗っているのは、平成15(2003)年に人工作出され、翌々年に発表された個体が源流になっています。
 体色的には、まさに「真っ白いヒゲを持った新潟系青色個体」で、同じような体色という条件だけであれば、通常の白ヒゲ赤色個体を飼育し、累代繁殖を繰り返していると、時々出てくることはありますし、実際の棲息地に乗り込み、一定期間以上に渡って一定数以上の個体を調べて行くと、こうした体色の個体に出くわすことも珍しくはありません。そのため、「白ヒゲ青は、通常の白ヒゲ同士から簡単に作れる」というような情報もあるようですが、実際には、種親双方をこうした体色の個体で揃えても、なかなかその形質が受け継がれないのが実情のようです。作出されたブリーダーさんからのご指示により、詳細な情報公開は機会を改めさせていただきますが、単純に種親の体色を合わせる形の作出ではなく、同じ青色でも、地域を特定して地道に種親を探して行く必要があります。もちろん、一般的な青色個体を作出段階で用いることはありません。

 


 白ヒゲ青色個体というと、色抜け青色個体と混同されるケースが多く見られますし、実際、色抜け個体の多くは白ヒゲ棲息地から一緒に揚がってくることが多いので、全く無関係であると言い切ることは難しいかも知れませんが、白ヒゲ赤色個体と色抜け個体という関係性と同じ条件で、彼らの関係を語るには、少々無理がある・・・というのが実際なところでしょう。上の写真は、茨城県産の白ヒゲ青色個体(左)と埼玉県産の色抜け青色個体(右)を比較したものですが、こうして並べてみると、ヒゲの色の有無以外にも、たくさんの相違点が見て取れるはずです。
 さて、白ヒゲ青色個体の固定度を見分ける上で、非常に有効な判断手段の1つに「白飛び」という現象があります。これは、このバリエーションの作出をしている途中の段階から知られていたことですが、白ヒゲ青個体の場合、成体になった段階で、右の写真の個体のように、体色が全体的に白掛かりしてしまう個体が出てきます(もちろん、こうした現象が起こるのは一部の個体のみで、すべての個体ではありません)。通常の白ヒゲ赤色個体では、あまり数多く起こらない現象なのですが、資質の傾向を見極める上では有効ですので、もし、固定度を確かめようとお考えの場合には、繁殖させた仔をひと通り育ててみて、チェックしてみるのも一考でしょう。ちなみに、白飛びした個体であっても、きちんと繁殖に用いれば、仔は青い体色を発現させるケースが大半で、このページの最上部、タイトル下の写真の個体は、右の写真の個体から採って育て上げた個体です。
 白色個体や青色個体などといったメジャーなバリエーションとは異なり、よほど好きな方でなければ追い求めないこともあってか、基本的な流通量自体が少ない上に、このバリエーションに対する前述のような誤解も少なくないため、きちんと固定された個体を見つけるのは非常に難しいのが実情です。もし、この体色の個体と向き合うのであれば「きちんと固定された個体というのは、基本的に人工作出のものである」・・・ということを、あらかじめ踏まえておく必要がありましょう。





 流通量が極端に少ないこの体色の個体を繁殖、維持させたいと考える場合、掛け戻しや資質向上云々を考える前に、まず、何をおいてもきちんと固定された個体を探すことが先決です。実際にこうした体色の個体を取り扱っているショップの数も多いとはいえませんから、信頼できるショップなどで、きちんとした出自の個体を探してもらうなどの方法を採るのが一番安全だといえましょう。そのために時間を掛けることは、むしろ必要不可欠なのかも知れません。逆に、こうした出自の個体さえ見つけることができさえすれば、基本的に維持という作業自体は簡単です。また、もし成体を数多く見て選べるようなチャンスがあった場合、そこに白飛びを起こしている個体がいるかどうかを見るのも、全体の資質を見極める手段にはなりましょうし、あえて白飛び個体を押さえておいて、実際に用いてみながら様子を確かめて行くのも、遠回りではありますが確実な方法です。
 掛け戻しについてですが、この体色個体の場合、原則として他色個体を用いることはありません。また、白ヒゲ赤色個体を用いることもありません。基本的には同色個体のみを用いるのが一般的ですが、同じ体色の個体であっても、たとえばネットオークションなどで入手した個体やワイルド個体など、その個体の素性自体が充分に掌握しきれない場合、それなりのリスクは覚悟する必要があります。もし、あえてチャレンジするのであれば、万が一の交雑を避けるため、導入個体の方をメスとして掛け合わせる方が安全です。もし、この方法によって採れた仔に資質が受け継がれないようであれば、そこからの立て直しは極めて難しいことが予想されますから、別のペア組みを考える方が得策です。そういう意味で、この体色個体は、他色個体に増して「親選び」の重要度が高いといえましょう。




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