グリーン系のグループ




グリーン系スタンダード個体

Standard form (Green type)

 ブルー系スタンダード個体と双璧をなす、もう一方のスタンダードであるのが、このように緑色が比較的強めに出ているグループです。観賞魚界では「青系至上主義」みたいな考え方があり、そういう見方でいえば、最も価値のない「ハネ物」であるかのように思われがちですが、御覧いただきますとおわかりの通り、かなり渋めの、魅力的な色合いに育ってくれます。同じ血統の仔であっても、メスの方に発現しやすいのが特徴で、同じ腹から得られた仔でも、オスはブルー系・メスはグリーン系・・・という感じで育ってしまうことは、よく聞く話です。もちろん、そうした個体から生まれてくる仔には、再び青い色を発現してくるオスのいる場合がよくある点も興味深いといえましょう。水深が浅く、ブッシュの多い濁水系の場所に棲息する個体に多い・・・といわれ、ピートの効いた水で飼育すると出やすいともいわれていますが、統計上の確かな裏付けはありませんので、断言するのは危険でしょう。輸入個体でも、5年ほど前まではよく見られたタイプですが、最近ではだいぶ少なくなりました。


なお、この写真は「Tokyo Blue Claws」の矢尾井さんよりお借りしたものです。



グリーン系個体

Green form

 少々下世話な物言いになりますが、「これに魅力を感じれば、本物のヤビー・キーパー」といっても過言ではないのが、このグループでしょう。ヤビーの場合、成長するに連れて、どうしてもボディーのどこかに青っぽい色が出てきてしまうのが普通で、特にオスの場合はその傾向が強いのですが、このグループの場合、成長するに従って独特のモス・グリーンが揚がり、まるでウグイスを見ているかのような感じさえさせられます。緑系スタンダード個体との一番大きな違いは、いわゆる「ツメ先」の部分とボディーの体色。青みががった色が出ないだけでなく、より深い緑色が、甲殻全体をしっかり覆ってくれます。オスの老成個体などの場合、関節部の赤いラインとのコントラストが美しく、ブルー系とはひと味もふた味も違う迫力をキーパーに見せてくれることでしょう。陸戦の王者である戦車に似た風格すら感じさせられてしまいます。
 この体色は、繁殖でも仔に伝わりにくい一面があるようで、選り抜きにはかなりの苦労を伴います。ある意味、維持の一番難しいグループだと考えてよいかも知れません。






グリーン系「クリーム」個体

Green form(type "Cream")

 一般的に「クリーム」または「アルビダス・タイプ」などと呼ばれ、業者によっては、その入手経路から「シンガポール・タイプ」などと称することもあります(ちなみに、別ルートでは、全く違う体色・体型の個体を「シンガポール」と呼ぶことがありますので、この呼称自体、特徴を表すものとしては厳しいかも知れません)。いずれにせよ、純粋なライトブルーではなく、モルティーブルーの色を飛ばし、ボカしたような感じで、その反面、関節部の赤がしっかりと出てくるのが特徴です。この白っぽい色から、この個体こそ「アルビダス」種である・・・と力説されるケースもありますが、仮に2種説を支持した場合でも、デストラクター種の棲息域において普通に見られる体色ですので、両種における通常の体色発現範囲に含まれると考えてよいでしょう。
手元のデータを見ると、1994年ごろまでコンスタントに輸入されていましたが、その後ピタリと止まり、約5年が経過した1999年ごろから再び見られるようになって現在に至っています。輸入も成体が中心で、入る時には一度にまとめてドサッと来ることが多いことや、写真でもおわかりの通り、非常に均整の取れた個体が多いことなど、さらには輸入の中断時期やその経緯などから、大元の出どころは安定・大量供給が可能な大規模養殖場などの商業施設であることが推察できます。体型を気にするキーパーはもちろんのこと、青系にせよ緑系にせよ「元親取り」用の個体として重宝がられるグループだといえましょう。
なお、特に腹節部が大きい個体の場合、キーパーや一部のショップでは「アルビダス種」とか「アルビダス型の典型」などと明言してしまうケースがあり、その説明でこじつければ、このグループのこうした個体などは、完全な「アルビダス」になってしまうのですが、先ほどと同様、仮に2種説を支持した場合でも、他の要素でアルビダス種に合致しない点が多いため、あくまでも、個体ごとの特徴として捉えるべきであり、その部分だけで両種を分けたり、タイプ分けをしようとするのはかなり強引であろうと思われます。






グリーン系ダークグリーン個体

Green form(Darkgreen type)

「ブラックヤビー登場!」という触れ込みで登場したので、興味深く見てみましたが、実際には黒ではなく多少濃いめの緑色で、一般的な体色発現の範疇に充分収まる体色であることから、今回は「黒」での紹介を見合わせ、見た通り「濃い緑」ということで取り上げました。
濃色系個体の項目でも触れていますが、ヤビーには、一部の水系で黒色個体群が存在していることが知られており、その個体の写真などを見る限りでは、この個体のように緑掛かってないのはもちろんのこと、どちらかといえば、ブラウン系の体色に黒が乗ったような感じで、かなり精悍な印象を受けますし、付帯情報から類推する限り、そうした個体の棲息地からかなり離れているようなので、現実的には、一般的な個体の中から、体色の濃いものを特に選り抜いて構成したのではないかということが想像されます。養殖池やその他の環境などによって、養殖現場でも、こういう色が出やすくなる場合もあります。特に底質や水質、透明度や水深などによって、同じ親から採れる仔でも、体色には大きな違いが出てきますので、この程度の体色差であれば、特に明確な違いとして考える必要はないでしょう。
なお、これらの個体については、ロタンダス種(Cherax rotundus)と混用されて情報が流れているようですが、情報や個体の特徴から見る限り、これらの個体をロタンダス種として考えるには、多少厳しい部分もありそうです。





今後も続々登場予定! どうぞお楽しみに!

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