これが「ネイティブ・ヤビー」だ!




会場に展示されていたオスの個体(TL13cm程度)。この明褐色を見よ!

平成14年夏に、三重県の鳥羽水族館にて開催された特別展「なるほど!! ザリガニワールド」に合わせ、正式な輸入許可個体としては日本で初めて、オーストラリア現地産のヤビー20個体が直接輸入され、展示されました。ヤビーは、その掘穴性から、稲作に影響を及ぼす可能性が拭いきれないため、植物防疫法によって、輸入行為が認められておりませんが、この企画は、鳥羽水族館の学芸員であり、我らがJCCの心強い仲間でもある芦刈治将さんが、ザリガニの魅力を少しでも多くの人に知ってもらおうと、あくまでも正攻法で管理当局と折衝を重ね、半年以上の粘り強い交渉期間を経て、ついに許可が下りたため、輸入が実現したものです。




新聞でも紹介!


正式な輸入許可個体としては日本で初めてということもあり、この快挙は、地元紙でも大きく取り上げられました。これは、その経緯や様子を伝える地元紙の記事(個体を手にして写っているのが、今回の立役者である、鳥羽水族館の芦刈さんです)。導入計画から展示・管理計画に至るまでの様々な細かい条件や困難な問題などを、1つ1つ着実にクリアしながら、実に半年間もの長い時間をかけて許可を得たそうです。こういう地道で、誠意を持った努力こそが、何にも増して大切であると痛感させられますね。





ウチダを思わせる明褐色!


元々は食用として養殖されている個体であると思われますが、上のメイン写真や左の写真でもおわかりの通り、ライトブラウン系にかなり近いグリーン系スタンダードの体色を見せている個体が主体でした(これら2枚の写真は、天地神明に誓って、色はいじっていませんぜ!)。ハサミは、比較的縦長の形状を持つ個体が多く、丸系のものは少なかったように思います。私たちのようなタイプの人間ですと、ちょっとでも形状などに違いが見られると、すぐさま「これって、もしかしたら別種?」という考えが脳裏をよぎってしまいがちですが、ヤビーの場合、この箇所は最も個体差が大きいポイントの1つですし、地域(水系)ごとの個体群でも、かなり大きな違いは出てくるのが普通ですから、このケースは、あくまでも地域的なバリエーションの1つであると考えるのが妥当でしょう。





くすんだ体色は、甲殻の厚さを示す?


体色面では、バックヤードで飼育されている個体まで見て行きますと、このほかにも右の写真にある通り、バリバリのグリーン系スタンダード個体から、後ろに見えているような多少ブルーがかったスタンダード個体まで確認することができました。たた、いずれもかなり甲殻は厚そうで、弱化を思わせる個体はいませんでした。やはり「甲殻が丈夫に育っている個体には、こういうくすんだ体色の個体が多いのではないか?」という考えを持つキーパーが多いという傾向に沿ったものでしたね。狙い通りのクリアな体色と丈夫な甲殻とを両立させて行くために、これからも多くのキーパーの努力は続きそうです。冷静に考えれば、こういう「モルティー系のカラーリング」こそが、ヤビーの真骨頂なんですけど・・・ね(笑)。




この特別展自体は、平成14年9月16日にて終了いたしましたが、これらの個体は、当面、常設展示のコーナーにて展示されることになる模様です。あくまでも一定期間内ということで、半永久的なものではありませんが、少しでも長い間、展示されることで、多くのみなさんに「ネイティブ・ヤビー」の美しさを御堪能いただきたいなぁ・・・と思っております。




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