TRY-3 まず、腹ごしらえ


 脱皮が無事に完了すると、いよいよ本格的な越冬準備となります。理想的な展開を先に申し述べますと、「まず脱皮をさせ、次に冬を無難に越させるための充分な栄養をつけさせ、その上で徐々に温度を下げて越冬モードへ入って行く」・・・という形になります。

 ですが、それが毎年、絶対に上手く行くか・・・となると、必ずしもそうとは言い切れません。と申しますのも、秋の深まり方は年によって微妙に変わるのが普通ですし、この時期、気候も不安定になりがちで、初夏を思わせるポカポカ陽気の日が何日か続いたかと思うと、突然コートの襟を立てて歩く日が続いたりするからです。当然、水温も派手な上下を繰り返しやすくなるもので、これを巧みに乗り切りながら、上手に個体を越冬態勢に持ち込むためには、それなりの経験が必要だといえましょう。特に水槽の場合は、河川や湖沼と比較して水量が極めて少なく、温度の変化もその分だけ大きくなってしまいます。「大水槽飼育の方が有利」という観賞魚飼育の鉄則は、ここにも当てはまるワケですが、準備できないものはできないわけですから、一定以上の経験と技量がなければ、当然、何かの”お助け”が必要となっていきます。
 では、その心強い”お助け”役とは何なのか・・・? ということになってきますが、実は実は、ここで登場するお助け役こそが、ヒーターとサーモの「保温器具セット」なのです。
 これをお読みになって、思わず「なんでぇ、それを使わない飼育こそが望ましい・・・って、言ったばっかりじゃんよぉ」と思われる方も多いことでしょう。まさしくその通りで、ヒーターとサーモは、本来、冬場の保温に使うものです。しかし、今回このセットは、いわゆる「保温」のためではなく、「狙い通りに温度降下をさせるためのツール」として使おうと考えているワケです。ですから、バリバリの真冬にこれらを使うことはありませんし、「水温26度自動設定」みたいな簡易ヒーターは使えません。もし使う場合には、少々値段は張りますが、できるだけ目盛りのしっかりしたもので、1度単位の調整ができるものを選ぶようにしましょう。
 脱皮が済んだら、さっそくヒーターとサーモをセットし、水温を22〜3度くらいにセットします。このくらいの温度ならば、おおむねどの種も食欲が旺盛な状態にありますので、ここでだいたい2〜3週間程度、バッチリと給餌しましょう。この時期は、とにかく充分な栄養を供給することが第一義ですから、動物質だとか植物質だとかに偏ることなく、普通の餌ローテーションで構いません。量の面でも、この時期は、食べるだけ与えても問題はないと思います。もちろん、水を汚すことのないよう注意することは必要です。
 餌といえば、よほど動きの緩慢な個体でもなければ、一般的に生き餌を好むものですが、後々の投餌を順調にクリアさせるために、この時期は生き餌の投入を控えた方が賢明です。これは、これから先、水温の降下を始めて行く段階で使うために、より嗜好性の高い餌を温存しておきたいからで、今の段階で「個体が好む餌」ばかりを与えてしまうと、この先の段階で、ひと苦労することもある・・・ということによります。

 いずれにせよ、約2週間にわたって充分な栄養を供給し、個体のコンディションもバッチリになってくれば、いよいよ水温の降下が始まります。



TRY-3のまとめ

その1   効率的に活用すれば、ヒーターとサーモは重宝する      
その2   越冬前には、水質悪化に気をつけて充分な栄養供給を心掛けよう