TRY-2 衣替えをしなきゃ!


 それでは、具体的な越冬についての方法を考えてみましょう。

 越冬期間中、ザリガニはほとんど餌を食べません(あくまでも「ほとんど」であり「全然」ではありません。これについては後で詳しく触れることとします)。そこで、越冬に入る前の段階で充分な栄養を供給しておくことが重要になってくるのです。
 近所の学校で運動会が終わり、朝夕の冷え込みがそろそろ気になり始めるころになりましたら、私たちキーパーも、いよいよ越冬に向けた準備に取り掛かりますが、その上でまず第一の関門は「個体に脱皮をさせる」ということになりましょう。これを順調にさせるかさせないかで、その後のコンディションは大きく変わってくるからです。
 ザリガニは、病気などでもなければ、水温が徐々に降下してくる段階で、脱皮の実施を想定した動きを取るものです。ですから、キーパーの側から見れば「彼らが脱皮しやすいよう手助けしてやる」という立場で動いてやればよい・・・ということになりましょう。脱皮を順調にこなさせるための注意点としては、

 1・静かな環境を用意する
 2・脱皮に必要な栄養分を充分に供給する
 3・脱皮のためのスペースを確保する

というものが挙げられます。
 1の場合についてですが、個体によってかなり神経質なものがいるもので、同居個体がいると、警戒して脱皮をしないケースがあるようです。脱皮を我慢させることは、キーパー間ですとよく知られた「禁じ手」の1つで、病変箇所などが見られないのに、突然動きが鈍り、食欲が落ちて死ぬ・・・という経過を見せるのが一般的です。私自身、これについて学術的見地から触れられた文献には出会っていませんが、多くのキーパーが経験していることなので、とりあえずの通説として捉えてよいだろうと思います。この原因は、あくまでも「他個体に対する警戒」というものが考えられていますので、「この時期になると、水槽内で2番手、3番手の個体が落ちやすくなる」という俗説は、あながち偶然ではないかも知れません。とにかく、できるだけ静かな環境を準備し、水槽に余裕があれば隔離飼育、なければセパレータの導入などを考えてやってみるべきでしょう。
 次に2の場合についてですが、やはり動物質比率を高めてやる方法をとるのがベターだと思います。水の傷みが気にならないようであれば、最も高い支持を得ている貝類(アサリむき身・カキむき身など)や冷凍ブラインシュリンプ・ダフニア類をローテーションに織りまぜてやるとよいでしょう。これらの餌は、前述の通り、かなり水を汚しますので、投入を嫌うキーパーも多いのですが、個体の負担にならない程度に換水頻度を上げながら与えて行くようにすれば問題はありませんし、適度な換水は、脱皮にとって「いい促進要素」となるものです。
 最後に3の場合についてですが、これは初心者キーパーがよく犯すミスの1つで、いわゆる「水槽内シェルターだらけ」という場合です。脱皮の一部始終を見たことのあるキーパーならおわかりのこととは思いますが、ザリガニの脱皮は、それなりのスペースを準備しないとなかなかうまく行きません。古い殻から最後に抜け出す時などに、身体がどこかにつかえてしまったりすると、そのままアウトになってしまうこともあるのです。隔離飼育などの場合には、水槽のどこかに「脱皮広場」みたいな、障害物のないスペースを作ってやるとよいでしょう。
 やがて、個体の体色に変化が出始め、食欲が徐々に落ちてくると、脱皮ももうすぐです。



TRY-2のまとめ

その1   順調な脱皮が、越冬成功の第一歩        
その2   環境・栄養の両面から個体の脱皮をサポートしよう