TRY-1 時計を合わせる


 冬の期間にザリガニを飼育させた経験を持つ方ならおわかりのことと思いますが、ザリガニは、ヒーターを用いた加温飼育をすることで、厳しい冬を安全に乗り切ることが可能です。しかも、温度帯さえしっかり設定すれば、繁殖すら可能である種も少なくありません。なのに、なぜここでリスクの大きい低温越冬をさせるのか・・・という疑問は、絶対に持たれるはずだと思います。
 人間、一番健康的なのは「夜明けとともに目覚め、日暮れに眠る」という生活スタイルだそうです。今の社会的な動きから考えれば、そんなことなど無理に決まっているのですが、それでも、昼夜逆転の生活が長く続いたりすると、睡眠時間をそれなりにとっていても、体調には良くないそうです。それは、昼夜の問題だけでなく、季節変化についても言えることで、元々生まれ育った地域の季節変化とは違う環境の地域で生活する場合、元々そこにいる人間よりも体調的に不具合を起こしやすいそうです(私は医者ではありませんので、詳しいことはわかりませんが)。
 こういったケース、実は、ザリガニも同じでして、環境の大きな変化が、思わぬ体調異変を起こすケースが少なからず存在します。特に脱皮や繁殖などがそうで、自然下ならば規則的に問題なくこなせるものが、うまく行かなくなる・・・というものです。脱皮が規則的に行われなくなると、必然的に甲殻関連の病気に対する不安が出てきますし、キャンバリダエ系統諸種の場合ですと「繁殖時期なのに繁殖できない」という問題が発生しやすくなりましょう。こうしたことは、飼育する上でも大きな障害や誤解を生むことになりますので、本来であれば避けるべきことであろうと思います。やはり、然るべき時にきちんと脱皮してもらい、稚ザリにとって最も望ましい時期に繁殖が行われるようにすることが、私たちキーパーに科せられた「使命」であるといえましょう。
 そのような意味で、きちんとした冬越しをさせることは、ザリにとって「体内時計を合わせる」格好のチャンスなのです。本来、ザリガニは、水温以外にも日照時間や水質変化などによって季節(時間)の変化を感じとっている・・・といわれていますが、さすがに水槽飼育ですとそこまでの再現は難しいのが実情です。そこで、できる限りの範囲で自然に近い状況を再現すべく、きちんとした水温設定を行なうことが重要なのです。コツさえつかんでしまえば、越冬は決して難しいものではありません。個体を順調に飼育して行くためにも、ぜひトライしていただきたいと思います。



TRY-1のまとめ

その1   越冬は、長期飼育にとって必要不可欠!    
その2   加温飼育では、繁殖がうまく行かない場合がある