ゴールデン・スピリット賞の「理由(わけ)」
片岡 篤史内野手(日本ハムファイターズ)



いただいた日:平成12年11月19日
いただいた場所:鎌ヶ谷・ファイターズタウン

 平成12年度の日本ハム・ファン感謝デーは、本拠地である東京ドームではなく、2軍の球場や練習場、そして合宿所がデーンと構える、鎌ヶ谷の「ファイターズ・タウン」で実施されました。一部のネット掲示板では「ついにハムはファン向けのイベントまでケチったか・・・」などという心ない意見も書き込まれていましたが、とんでもない! 出掛けた人ならおわかりいただけると思いますが、どこぞの金持ち球団のやるような「スター選手を見せるだけ」感謝デーとは全然違う、ファンと選手が一体となった、本当に素晴らしい感謝デーでしたよ!
 さて、今日の出陣は私、みもパパと、みもパパの熱心な洗脳が少しずつ効き始め、最近野球に少しずつ目覚めつつある愛息ケロ。同じ千葉県内ということで、電車を2つ乗り継ぎ、30分も揺られれば、もう最寄り駅に到着です。ファイターズタウンは、駅からとても遠いのですが、当日は臨時バスも出て、楽チン楽チン!  会場では、トークショーやアマチュアとの爆笑紅白戦(ハム側は、監督がガンちゃんですからねぇ・・・) そして野球教室やチャリティー・サイン会など、選手とふれあう機会もいっぱいです。何とかいい選手のサインをゲットしたいみもパパは、ケロを肩車して選手探し(苦笑)。何せ、会場内では、あちこちでファンに捕まった選手たちが「即席サイン会」を開くもんですから、うっかり流れを読み間違えると、自分の番に来る前に、警備員が「すいませ〜ん、次のイベントがあるんで、ここまでにしてくださぁ〜い」という声が掛かり、あっという間に終わっちゃう! パパもケロも必死です。
 そんな中、おもむろに合宿所前に現れたのが片岡選手。そういえば、今年、ドームに出掛けた時には、必ず打ってくれましたっけ。ケロも「カタオカ」という名前は、おぼろげに覚えている様子・・・。これは、どうしてもゲットしなきゃ!
 でも、列は軽く数えても100人以上! うんざりするような長さです。片岡選手が出るイベントはもうないはずですが、果たしてここまでやってくれるかどうか・・・。パパは、さすがに迷いました。ここは、ケロの判断に任せよう・・・。
「おい、どうする?」
「並ぶ!」
 気が短く、堪え性のないパパに比べ、まぁなんと辛抱強い息子でしょう(苦笑)。2人は、そのまま行列の最後尾に並びました。10分、20分、そして・・・。
 やっと残り10人くらいになった時には、もう30分以上が経っていました。並ぶ方も大変。でも、サインする方はもっと大変! きっと、ムッとした顔をしながら流れ作業をしているかと思いきや、そこには、穏やかな顔でファンのサインに1枚1枚応えている片岡選手の姿がありました。
 面倒臭がる顔もなく、かといって媚びを売るような卑しさもなく、堂々と、そして穏やかな笑みをたたえながら、差し出されるもの1つ1つにペンを走らせています。いくらファン感謝デーだからといって、こんなことまでしなくてもいいはずなのに・・・。そういえば、さっき、ある選手は、追いすがるファンをにこやかにかわしながら、猛ダッシュで合宿所に飛び込んでいったっけ・・・。選手だって人間ですもん。それが普通なはずなのです。なのに・・・。
 そしてとうとう、私たちの番になりました。パパは持ってきたカードに、ケロは自分の帽子に、しっかりとサインを入れてもらいました。
「ありがとうございましたっ!」
 ケロが、日ごろしゃべったことのないような殊勝な言葉を口にし、パパもそれに続けました。片岡選手は、ニコッと笑ってうなづいてくれました。
 お礼の言葉など、社会人ならいくらでも言えることです。でも、今日、パパの口にした「ありがとうございました」は、本当に心の中から出てきた言葉でした。自然とそんな気持ちにさせてくれる凄さ、そして偉大さが、片岡選手の姿にはあったのです。これだもん、ゴールデンスピリット賞をもらえるハズだ・・・。
 合宿所から球場へ下りる坂道で、パパとケロは、互いのサインを自慢しておりました。本当に幸せな瞬間でありました。あぁ、ケロも、こうやって他人を幸せな気持ちにできる人間になって欲しいなぁ・・・。パパは、ふとそんなことを考えていました。
 その後、何人かの選手に並んでサインしてもらって、ふと球場横から坂の上の合宿所を眺めたら、そこにはまだ、長い行列と、それに応える片岡選手の姿がありました。




この日、いただいたサイン(パパ)
片岡内野手・實松捕手・伊藤投手・芝草投手


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