学芸員のひとり言(その11)
Check it! 承認シール(その2)


 21世紀に入って、ほぼほぼ絶滅してしまった「承認タグ」に対し、意外な形で再び復活してきた承認シール・・・。すでに申し上げるまでもなく、これは、球団が公式にその商品の存在を認知し、商標権その他の権利関係をパスしたものであることを証明する”証紙”なのですが、帽子以外のグッズ全体を見てみれば、今でも数多くのシールが様々なグッズに貼り付けられているのですが、こうしたシールの貼られた帽子が再び街中に出回るようになったのには、ある1つの”ブーム”が深く関係しているのです。



 それはズバリ! ヒップホップを始めとした北米のストリートミュージック・ブーム! 90年代にアメリカで一世を風靡したストリートカルチャーが、21世紀に入って日本にも少しずつ浸透してくるようになりました。そのような中、そんなファッションの”マストアイテム”として重宝されたのが、全米でよく知られ、メジャーリーグの公式サプライヤーでもあるニューエラ製のキャップなのです。そう!「サイズタグを剥がさずに、そのままかぶる」というスタイルも、ここからですよね。
 こうしたブームの高まりにより、ついに2004年、我が国でもニューエラの日本法人が設立し、2011年からは店舗展開が少しずつ始まるようになります。長らく沈滞していた帽子業界の中で、本当に久しぶりの反転攻勢ですよね。
 基本、こうしたブームの中でかぶられる帽子は、圧倒的にヤンキースやドジャースなどといったMLBチームの帽子なのですが、元々がMLBの公式サプライヤーであるこのメーカーですから、日本のプロ野球チームの中でも、徐々にニューエラ製帽子を採用する球団が現れるようになりました。さらに、こうした流れの中で、ニューエラ自体も「NPBクラシック」と呼ばれるラインナップを展開。現行デザインのみならず、古きよき時代のプロ野球帽子を今に蘇らせたのです。こうして、今まですっかり沈滞していた”日本の野球帽”が、球場のショップや各球団のオンラインショップだけでなく、少しずつながらも街中で売られるようになったのでありました。そして、そこに燦然と復活してきたのが、あの”承認シール”だったのです。

      

 それでは、今に蘇った”現代”の承認シールを見てみましょう。ここではソフトバンクの2枚と阪神のシールを取り上げてみました。いずれもラメ入りの超豪華版! 左端のホークスのシールはホログラム型のものになっています。その昔、銀紙を使ったシールであるというだけで「豪華だなぁ」なんて思っていたのですが、こうしたシールを見ていると、そんな時代も遥か昔のことのように思えてしまいますよね。

      

 ただ、もちろん”昔ながら”のシールも残っています。左から順に広島、西武、ヤクルトのシールですが、なんだかこっちの方がホッとする・・・というか(苦笑)。カープに関しては、帽子だけでなく他のグッズにもこのシールが使われていますので、ま、これが”球団統一の承認シール”だということになるでよう。西武やヤクルトも同じ状況ですが、西武の場合には日本語が一文字も入ってませんし、ヤクルトの方にも、わざわざ”OFFICIAL GOODS”なる横文字を入れてあるあたりが、まさに今風・・・ということになりましょう。
 

 このような形で、一度は完全に廃れたかに見えた承認シールも、他のブームの力をちょっと借りる形ではあるものの、さり気なく復活してきているのは嬉しいことですよね。もちろん、街中に日本のプロ野球帽が溢れかえるような日が訪れるのは難しいかとは思いますが、いずれにしてもこうやって日本の野球帽が連綿と売られ続けて行くことは、それだけでホッとする想いがします。



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