学芸員のひとり言(その4)
メッシュ帽のメッシュ入り方パターンは?


 一概に「メッシュ帽」といっても、詳しく見て行きますと、メッシュの入り方には、微妙な違いが見られる場合があります。当館でも、開館以来、御来館される多くのみなさんから、これに関するお尋ねをいただきましたので、これにお応えする形で、いくつかのパターンを取り上げ、御紹介させていただきましょう。

 すでに申し上げるまでもなく、「メッシュ帽」は、いわゆる「夏用」のもので、通気性を高めるために、生地の一部がメッシュ(網目)素材となっているものです。

 

 もちろん、上の写真を御覧いただけますとおわかりの通り、同じメッシュ帽でも、選手仕様帽子と市販帽子では全く異なるものです。左側が南海ホークス(選手仕様帽子)、右側が福岡ダイエーホークス(市販帽子) ですが、メッシュの入り方も細かさも、そして素材も全く異なるものだといえましょう。選手仕様帽子に関する詳細は別項を御覧いただくとして、選手仕様のメッシュ帽は、一部の球団を除き、御覧のような「全面メッシュ生地」のパターンになるのが一般的です。これに対し、市販帽子の場合、メッシュ帽といわれるものでも、全面メッシュ素材というパターンは、まず見受けられません。一般的には、上の写真のように、6方型のうち、前2方のみニットで、後ろ4方がメッシュ・・・というパターンで作られているのが普通です。これは、いわゆる「球団エンブレム」を刺繍する際、メッシュよりもニットの方が作りやすいからというのが、その理由です。このパターンの場合、ひさしの端部がメッシュ生地との縫製になりますので、乱暴に扱いますと、ほつれてしまうことが少なからずあるものです。中古の帽子などを見てみますと、往々にしてこの部分が傷んでいるものが少なくありません。

 それでは、特殊なケースはどうでしょうか?

 

 これは、いずれも日本ハムの帽子です。まず、左側の青赤nh帽ですが、メッシュが後ろ2方にしか入っていません。真正面からみると、完全にニット帽としか見えない不思議なものです。実はこの帽子、昭和50年代の「少年ファイターズ会」の会員向けに作られたもので、通常の市販帽とは異なり、脇にファイターズのロゴが刺繍されているものです。確かに、ちょっと変なパターンではありますが、脇2方がニットになったのも、この刺繍のためであることは、容易に推察できます。
 それに引き替え、全く解せないのが、右側の全面オレンジ帽です。これは、ファンクラブ用でもなんでもなく、また、それを思わせる刺繍などもありません。デザインは、通常の全面オレンジ帽と全く同じものなのです。この帽子は、ある問屋さんの在庫倉庫の山から見つけたものなのですが「新年度用」というマジック書きがされたダンボールの中に、他の球団の帽子と混ざって入っていました。こうなると「年度替わりということで、12球団分の見本として作られたイレギュラー品かなぁ?」という推理も働くのですが、何分、何年度の「新年度用」なのかがわからず、おまけに問屋さんの担当の方も、これ以上の情報は全くわからないということでしたので、どうにもなりませんでした。こういうパターンにした真意が測りかねる、不思議な帽子です。

 

 最後に、極めつけの「変なパターン」を1つ、取り上げてみましょう。これは、千葉ロッテの初年度に作られた帽子です。球場販売のみで、市販ルートには乗りませんでしたが、かなりド派手なエンブレムのもので、当時から「結構キてる」デザインだったのですが、よく見ますと、メッシュの入り方が異様です。メッシュは、脇2方を除く前後4方に入り、脇2方はニット素材です。この配置だけでも充分珍しいのに、前に方はエンブレムの関係でアーチ状のニット素材が入っており、上部だけがなぜかメッシュ素材になっております。これなら、前4方を全部ニットにしてしまえば済むことなのに・・・。これまた不思議なパターンですよね。

 帽子のデザインから考えれば、確かにさほど重要でもない生地のパターンですが、数を集めてみますと、様々な不思議に出会えるものです。もっとも、こうした部分まで気を使い始めると、コレクションも泥沼へと入り込んでしまうのですが・・・(苦笑)。



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