学芸員のひとり言(その5)
サイン帽か新品帽か?


 開眼供養・・・ではありませんが、バットやボール、色紙などに、選手からサインしてもらうことは、ファンにとって非常に嬉しいものです。また「サイン入り」などになりますと、価値もグーンと上がることが多いようです。また、昨今の「お宝」ブームもあって、多くの人が、こういう「価値」に対して敏感になったこともあってでしょうか? 「サインの入った帽子と、新品の帽子とでは、どちらが価値あるものか?」という質問メールが、未だに非常に多く寄せられております。

 この問題については「インクのついた、たからもの」のコーナーでも触れさせていただいておりますので、御興味をお持ちの方は、ぜひともそちらのコーナーも御覧いただきたいのですが、帽子に関するサインの場合、基本的には「集めている人それぞれの価値観」に委ねられるべきものであり、「どちらが良くて、どちらが悪い」ということを、一概に決めつけるわけには行きません。その人が「こっちの方がいい」という方でいいことだと思います。
 これは、「インクのついた、たからもの」でも紹介している日ハムの帽子ですが、この帽子には、この時期に活躍していた選手とは全然関係ない、「今」の選手たちのサインが入っています。デザインとサインが時期的に合わないことを気にする方であれば、この取り合わせはNG・・・ということになりましょう。また、サインに興味がない方からすれば、これ自体「汚れ」にしかなりません。「魂」と見る人がいれば「汚れ」と見る人もいる・・・。これこそが「価値観の相違」というものではないかと思います。業界として、あるいは趣味界として、統一の「価値基準」のようなものがない以上、やはりこの部分は、1人1人に委ねられていることは間違いないことでしょう。
さて、あくまでもこうしたことを踏まえた上で・・・ということになりますが、帽子同士のトレードや、コレクターさん同士の会話などから総合しますと、市販帽子については、少なくとも自分自身が選手から直接サインをいただいたものではない場合を除き、どうやら「新品帽」の方が好意的に扱われているようです。と申しますのも、選手仕様のものと違って「実使用」の可能性はなく、しかも簡単に「偽サイン」を作れてしまうからで、米メジャーリーグのような「鑑定・証明書」のようなものがない以上、どうしても「本物・偽物」という論議が出てきてしまうからです。自分でサインしていただいたものなら、自分が「証人」ですから、自分自身で納得できるのですが、売られているものや、回り回って流れてきたものなどの場合、そのサインの新贋を証明するには、相当の手間が掛かってしまいますし、それなら、いっそのこと「新品」の方がよい・・・ということになるのでしょう。
 カード類などでも、せっかくのサインが「汚れ」として扱われ、マイナス要素になってしまうことがあり、それと同じような考え方だというわけですね。野球を愛する人間からしますと、少し複雑な心境です。

 ちなみに、選手仕様のものについては、圧倒的に「実使用」や「サイン入り」などの方が高い評価を得るものです。同じ帽子でも、評価がまるで逆・・・。不思議なことですね。



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