Route-4  脱皮前の準備(2)


 水槽の大まかなセッティングをしましたが、順調に脱皮をクリアさせるためには、これ以外にも、もう少し気をつかっておいた方がよいポイントがいくつかあるものです。ここでは、前項の内容を補完して行く形で、これらについて触れて行くことにしましょう。



 脱皮は、莫大なエネルギーと多大な危険性を伴うものですから、そうそう易々と繰り返してできるものではありません。ですから、脱皮時に何か障害が発生しますと、次の脱皮までの間、常にトラブルを抱え込んだままの状態になってしまうのです。テリトリー意識が強く、状況によっては個体同士で喧嘩もしなければならないザリにとって、これは致命傷です。完全な形で送り出してやるためにも、キーパーの細やかな気配りはして置かねばなりません。
 脱皮時に起こりやすいトラブルは、何といっても「殻が抜けきれない」というのがダントツですが、それ以外に、酸欠や一部の欠損などがあります。また、外殻が軟らかいがゆえに、バーンスポットなどの甲殻病にも罹りやすくなります。殻が抜けきれないのは仕方ないにしても、それ以外の部分は、キーパーの工夫でクリアできる場合が多いといえましょう。
 よく「稚ザリは酸欠に弱い」といわれますし、稚ザリ飼育に充分な酸素供給が必要なことは言うまでもありませんが、脱皮直後の個体が意外と酸欠に弱いことは、学術的に裏付けこそないものの、キーパー間では、経験上一致した事実として扱われています。あくまで推察ですが、脱皮という瞬間を境にして、一時的にすべての機能が低下する・・・と考えれば、通常の状態であれば何とか生き延びられた環境でも、それがアウトになることは、充分考えられることでしょう。従いまして、脱皮に関する期間中は、存分な酸素供給をしておいた方が無難であることはいうまでもありません。ただし、ここで問題になるのは、その方法です。「とにかくガンガン溶かし込めばいいや」ということで、水が躍ってしまうほどに回してしまうと、脱皮直後の個体にとっては厳しい環境となります。また、底面濾過で回した場合、汚れがそのまま底砂に蓄積してしまう場合があります。いずれも、ザリからすると極めて不都合なことですので、避けるのが無難です。
 底砂といえば、こちらも、気を使っておいた方がよいポイントの一つだといえましょう。脱皮の有無に関わらず、常に底砂と接して生活するザリの場合、底砂は清潔にしておくに越したことはないのですが、脱皮の場合、完全に横倒しになって行うのが普通ですし、脱皮直後は、しばらくの間、いわゆる「ベタッと座った」状態になりますので、この段階で底砂が不潔ですと、思わぬトラブルが発生しやすくなるものです。事実、脱皮直後からバーンスポットを発症させるケースの多くは、水質が悪いだけでなく、底砂が完全に汚れている場合が多く見受けられました。
 さて、一部のキーパーの中には、脱皮時の傷を恐れてか、大磯に代表される、角のない「丸砂」にこだわる人がいます。もちろん、どちらがいいかといえば丸砂の方がよいのでしょうが、品評会に出品するわけでもございませんし、ザリはそこまでヤワではないだろうとも思えます。むしろ、急な底砂チェンジによる、水質を含めた環境変化の方が問題になる可能性が大きいので、そこまで気をつかう必要はないでしょう。



Route-4の最終目標

第1点 充分に酸素を供給できるセッティングを施しておこう
第2点 底砂は、いつも以上に清潔な状態にしておこう