トンで、シナハチ
〜 カマ屋泣かせの「停車位置」 〜



(品川にて)


 新幹線新駅設置を境に、驚くほどの大変貌を遂げてしまった品川駅ですが、その昔、8〜10番線は、まさに「カマ屋の聖地」でありました。そのような中、品川発の臨スジが、一体どのホームに滑り込んでくるかは、カマ屋にとっても非常に重大な関心事であったのです。できれば、10番線であって欲しい・・・。
 元からカブりの少ない臨時ホームですし、きちんと停まって、しかも応分の停車時間があるならば、それがたとえどこのホームだろうと関係ない・・・と、今のみなさんなら考えられるかも知れません。しかし、6輛編成程度の客レで、使用番線が8番だ9番だとなると、カマ屋の表情は一様に曇り、そして、上空の空模様を眺めながら滑り込んでくるカマの停車位置を睨むのが相場だったのです。それは、このホームの横浜寄りに大きなコンコースが設けられていたからでありました。
 信号直前まで進まれてしまっては編成写真が撮れず、かといってカマがコンコース下に留まってしまうと、今度は露出との戦いになります。特に、威勢よく晴れた日などは、もう最悪でした。
 次々とお座敷車輌がリニューアルされ、古き良き「旧型ロザ」がどんどん淘汰される中、東京南局の「シナ座」と、静岡局の「ヌマ座」は、SGゴハチとの相性バツグンな組み合わせでした。浜松区のゴハチとヌマ座の競演に、ワクワクしながら品川へと駆けつければ、どうやら使用番線は8番線・・・。おまけに、上空は雲一つない冬晴れです。チョロチョロとスチームを噴かしながら滑り込んできた160号機がその身を停めたのは、よりによって最高の場所なのでありました。

 出発までの数分間、集まったカマ屋たちは、カメラの露出計とにらめっこしながら、どっちに主眼を置くか必死に悩みます。カマが黒つぶれしても編成全体を収めるか、それとも、客車がトンでしまってでも、カマへの露出合わせを優先するか・・・?
 この日、選んだ選択は「カマ」でした。ボディーも車輪も、そして穏やかに噴くスチームも、やっぱり綺麗に写してやりたいと思ったのです。大きな溜め息をつきながら、カマに露出を合わせてシャッターを1切り、2切り・・・。
 160号機は、その後、東海道ゴハチ最終残留組としての活躍を続けることとなりますが、露出の向こうに消え去った旧客ロザは、さっさと引退し、霧の向こうへとトンで行きました。

 


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