端正であるということ
〜 洗練された「都の風」 〜



(大井町にて)


 ゴハチは存在それ自体が華麗で優美で、どこまでも曲線で、どこまでも色っぽいカマなのですが、関東で活動しているファンにとって、いわゆる「関西ガマ」というのは、さらに華麗で優美で、色っぽい存在でありました。関東には大本命のエース、ロクイチがいるといっても、あとはHゴム窓にEG改造、さらには上越型耐雪装備・・・と、どちらかといえば「雄々しさ」の方が前面に出てくるカマが多かったからです。水切りの原形小窓に原形ワイパー(いわゆる「棒ワイパー」)の京美人は、関東のファンにとって、いつまでも遠き「憧れの美女」でありました。ほんのちょっとだけ、そういう雅な香りを持っている米原・宮原両区担当の荷レだけは絶対に外さずに撮影するファンが多くいたのも、何となく頷ける気がします。浜松ガマとは違う「雰囲気」だけでも、充分な魅力であったのです。となれば、やっぱり雑多な荷物車よりも、綺麗な客車の先頭に立つ華麗な姿を拝みたい・・・というものです。
 しかし、そんなファンたちが待ち構える関東地方に、フラリとやってきてくれるのは、1年間でも数えるほどしかありません。創臨では12系や14系ハザを従えて、ちょくちょく東海道を上ってくる彼らも、沼津でひと休みすると、また関西へと帰ってしまいます。長距離旅行は新幹線利用が当たり前となっていたこの当時、創臨すら新幹線にとって代わられつつありましたがら、客扱い列車で首都圏までわざわざ足を伸ばしてくれるのは、よほどノンビリ指向の団体スジくらいしかありませんでした。しかも、たいていはPFがその任にあたっていたので、老体のゴハチがやってくる確率は、本当に少なかったのです。
 そんな中、100%ゴハチが来てくれる設定がありました。「ミヤ座」です。スロ81系を中心とした、いわゆる「旧式座敷客車」は、当時、品川・沼津、宮原各区の3本が、SG対応となっていました。となると、冬期はSG釜の装備されていないPFですと、仕事になりません。これぞゴハチの面目躍如! 颯爽と、そして軽やかに、宮原のゴハチが東京へと駆け上がってきます。
 冬枯れの凍てつく寒風が吹きすさぶ中、大井町の直線を滑るように走ってきます。スロたちの車端からは、チョロチョロとスチームが吹き、これがまた、寒い冬の景色に彩りを添えます。荷33レと全く同じ構図でも、どうしてこんなに華麗なのでしょう。優美なのでしょう。軽やかに駆け抜ける端正なカマに「都の風」を感じた、冬ならではの1コマでありました。

 


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