雄々しいということ
〜 真冬に貴婦人が見せる躍動感 〜
(東京にて)
華麗で優美で、どこまでも曲線で、どこまでも色っぽいゴハチは、御仏でいえば観音さま、人間でいえば絶世の美女・・・。お召し専用機がこの形式から出され、その後に続くカマがいないのは、単に時代の流れからだけではないといってもよいでしょう。どこまでもたおやかで、どこまでも美しいのが、ゴハチなのです。
そんなゴハチが、自らのイメージをブチ壊すような「猛々しさ」を見せるのが、冬のSGスチームなのでありました。あの優美なゴハチとは思えないほどの猛烈な水蒸気、そして、猛烈な吹き出し音・・・。ビックリするような白煙(?)を天に向かって突き上げ、耳を塞ぐような音とミストを周囲に突きつけながら、堂々とホームに滑り込んでくるのです。突然の衝撃に驚くホームの客たちと、それでもお構いなしに通る「雄々しい」姿・・・。この写真でも、ホームで驚きながらカマを眺める子どもの姿がご覧いただけますでしょうか?
ファンにとって、これこそが「冬の風物詩」なのでありました。SG全開のゴハチと、そのけたたましいスチーム音、そして、近づく者には容赦なく浴びせるミスト・・・。この音、この暖かさこそが、「ゴハチと生命を共にしている」ことを身体で感じる瞬間だったのです。
東海道スジからのゴハチ撤退後も、上野口では、まだまだ姿を見ることができました。そして、姿だけなら、今でもあちこちに何輌も残っているそれぞれのカマに接することができます。でも、ゴハチであってゴハチじゃない・・・。あのころ、あの「瞬間」を共有したファンにとって、ゴハチとは、美しく、優しく、そして、雄々しく躍動感あふれるカマだったのです。あの音、あのミスト・・・。今でも、目を閉じると、あの光景とあの音がありありと思い出されてくるのです。
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