高いということ
〜 その楚々としたスタイルの魅力 〜
(小田原にて)
ゴハチの何が美しいかといえば、やはりそのボディーラインの「しなやかさ」でありましょう。元々ロングデッキの2CC2車軸配置だった上に、SG搭載によるボディー延長で、EF65よりも3メートル近く長い全長いっぱいに、優美な女性的フォルムが配されているという、魅力的なスタイルとなりました。特に、付けマツゲのようなヒサシは、さらに車体を長く感じさせます。まさに、スラッとした八頭身の美人モデルのようなフォルムと言っても過言ではありません。「車体が長い」というよりも「背が高い」というような表現の方が、よほど言い得ているのではないでしょうか?
「ゴハチの中で一番美しいカマは?」といえば、やはりロクイチを挙げる方が圧倒的だとは思いますが、「背の高さ」を愛でる限り、側面7枚窓の35、36号機に勝るカマはないだろうと思います。旧車体から新車体への差し替えが決定された、まさにその時期、車輌工場で製造されていたこの2輌・・・。旧車体に先端運転台部分を継ぎ足して新製するという「大どんでん返し」の果てに、この2輌は機関車としての生涯をスタートさせたのでありました。そんな運命のいたずらが、ゴハチの魅力をよりハッキリと際立たせることになるとは、当時、このカマの製造に携わっていた誰もが予想しなかったことでしょう。
通常の5枚窓機でも決して短くは感じないのですが、枚数の多さゆえに余計長く感じるのが本当に不思議です。運用自体の減少と後継機の登場によって、上越口の35号機が早々にリタイアしたのに比べて、米原の36号機は、終焉間近の荷物列車とともに最後の最後まで東海道筋を走り続けました。そんなサブロクの、本当の「真横」がどうしても撮りたくなって、やっと見つけた場所が小田原駅の箱根登山鉄道ホーム・・・。運用表順通り荷36列車でやってきてくれたサブロクが、残り僅かとなったSGをチョロチョロ焚きながら、丹那・箱根越えの疲れをしばし癒しています。汐留まであと少し・・・。画面いっぱいの「長身」に惚れ惚れしながら、ファインダーの左右を気にしつつ、ギリギリの大きさでシャッターを切った記憶が残っています。
もどる