柔らかいということ
〜 その麗しきスタイルの魅力 〜



(沼津機関区にて)


ゴハチの何が美しいかといえば、やはりそのボディーラインの「柔らかさ」でありましょう。鋼鉄の塊でありながら、そのイメージを微塵も感じさせない丸みを帯びたフォルム・・・。蒸機の昔から、旅客用機関車は女性、貨物用機関車は男性にたとえるのが相場ですが、まさにゴハチは、女性の中の女性・・・、絶世の美女なのであります。特に、ヒサシやスカート、ホイッスル・カバーなどが装着されていない「東海型」のゴハチは、頭の先から足の先まで、本当に女性らしい柔らかさに溢れていると言えましょう。
東海道筋の荷物列車牽引任務の座を追われ、事実上東海道本線の定期スジから消えたゴハチではありましたが、団臨や転回、テストランなどといった8000番台、9000番台のスジで、まだまだその姿を見ることはできました。東京機関区の最晩期、浜松から転属されてきた93号機は、北オクの14系座席車創臨を牽いて、東海道を下ります。軟らかい陽射しが降り注ぐ昼下がりの沼津機関区電留線で、片パンを下げながら小休止するその姿を、最も柔らかいフォルムで記録できる斜め前方、心持ち下気味から撮影してみました。ボディー、下回り、そして、燦然と輝く「東」の区札・・・。どちらかといえば機械的で、色気のない無骨なEF60たちが並ぶ中、絶世の美女は、その麗しき姿を惜しみなく見せつけておりました。
浜松時代は決して目立つことのない「その他大勢」のカマでしたが、その後の東機転属が、このカマの運命を変えたと言ってもいいでしょう。かつての同僚が次々と消えて行く中、最後の最後まで栄光の東機メンバーとして活躍し、車籍抹消後は、多くの仲間が露と消えた大宮工場で、青大将塗装を身にまといながら、その美しい姿を今に留めています。

 


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