夕陽に輝く鉄路の向こうに・・・
〜ごあいさつにかえて〜


 人間は「何か」を手に入れ、そして「何か」を失いながら成長を続ける・・・と申します。知識を得、経験を得、そして幸せな家庭といくばくかのお金を得、子どもは大人へと、その階段を上って行くのです。それなら「失ったものは?」と問われた時、どう、答えたらいいのでしょう? 時間? 若さ? それとも・・・。
 毎朝、まるで当たり前のように会社へと向かう電車に揺られ、毎晩、これまた当たり前のように、家路へと急ぐ電車に揺られます。あまりの当たり前さに、感情など湧こうはずがありません。ゴトゴトと揺れる電車の中で、ただただ無心に、その揺れへ身を任せているのです。
 日曜日の朝、いつものように電車に揺られていると、優しそうなパパに連れられた男の子が、流れ行く景色に目を輝かせておりました。電車がすれ違うたびに小さな歓声をあげ、嬉々としながら「揺れ」ています。

そうか、こんな「ドキドキ」「ワクワク」をなくしちゃったんだ・・・。

 思えば少年時代、今で言えば、イッパシの「アツい鉄ちゃん」でありました。時には睡眠時間を削り、愛するカマたちを追いました。どうしても見逃せないスジを追う時には、学校だって躊躇なく「ウヤ」しました。しかし、そうやって何千枚も撮り貯めた写真も、少しずつ押入の奧へとしまい込まれ、引っ越しの春、ついに廃品回収のトラックへと積み込まれて行きました。寒い冬の朝、凍える手でカメラを支えながら、線路ばたで愛するカマをひたすら待った、あの「ドキドキ」「ワクワク」と一緒に・・・。

 それからン10年後、「鉄道趣味」からは全く遠ざかった生活をしておりましたが、偶然、実家で見つけたEF58の写真アルバムは「どうせこのまま埋没させるなら・・・」と、簡単なサイトとしてネット上に公開させました。そして、それらの写真を公開してから、さらに4年の歳月が流れ、実家の納屋を片付けていたら、埃まみれのモノクロフィルムが7本、出てきたのです。そして、そこには、遥か昔に失ったはずの「ドキドキ」「ワクワク」が躍っていたのでありました。

「そうだ、これもみなさんに見ていただこう! このまま永遠に眠らせるよりも、何か使えるものなら、有意義に使ってもらいたいし、私も、これであのころを思い出そう・・・」

 一斉に捨てられたフィルムや写真の中で、これだけがなぜ残っていたのか、撮った本人もわかりようがありません。しかし、世の中に「不条理」などあるわけがないはず・・・。だとすれば、きっと何かの「使命」があったからこそ、神様はこのフィルムを残したに違いない・・・。そんな「運命」を考感じてしまったのです。

 このサイトは、偶然にも廃棄されることなく生き残った写真とフィルム、そして、当時の思い出のみで編まれるサイトです。最新映像を集めるのでも、新たな取材を敢行するのでもなく、写真を撮り集めるのでもなく、ただ、あのころの写真を見、あのころを語るサイトです。しかし、それを楽しんで下さる方がお1人でもいれば、そして、この写真を活用して下さる方が1人でもいれば、それこそ「神様の思し召し」なのでございましょう。そんな想いを胸に、じっくりと、焦らずに更新をする所存です。使える写真がなくなった日が、更新完了日です・・・。手元にある写真を見つめながら、ゆっくりと終着駅への道を楽しんで参りたいと思っております。

 

平成14年5月1日   

管理者  砂川 光朗 



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