四半世紀後のゴナナ
〜 EF65 57号機(高崎機関区) 〜



(総武本線 物井-佐倉 にて)

今日は会社も休み・・・。いつもよりのんびりと目を覚ますと、子どもたちはもう学校へ行った後。家の中も閑散としています。よぉし、ちょっくら出掛けるか・・・。カミさんのちょっと冷たい視線も上手にかわし、カメラを片手に車のエンジンを掛けると、中年オヤジはいそいそと出掛けて行くのでありました。
ところが、線路際を走って行くと、あれ? あれ? あっちでもこっちでも、三脚の列・・・。何か特別のスジがあるのかも知れないけれど、そんなの狙うつもりで来ているわけでもないし、そんなスジを追う気力も気合いもないから「セミリタイヤ」なワケだから、この状態はちょっと・・・ねぇ。特別なスジが嫌いなわけではないけれど、できれば、誰の邪魔もせず、誰にも邪魔されず、ノンビリとカメラを構えたかったのであります。物井のカーブもダメ、亀崎の踏切もダメ、鹿島川橋梁もダメ・・・。結局、流れ着いたのは大近の踏切、しかも通過3分前という有様でした。ここはあんまりいい構図じゃないんだけど、ま、いいか・・・。
警報器が鳴り、遮断器が下がると、レンズをいっぱいに伸ばし、ファインダー越しにトンネルの向こうへ視線を集中させます。眩しく光る2つの灯そして・・・ん? 茶、茶色???
懐かしい色を身にまとい、しかし妙に新鮮で、しかも不似合いな「塗り立て」のEF65が、キラキラしたボディーを輝かせながら、目の前を通過して行きます。EF65 57号機、そう、そのカマは「ゴナナ」なのでありました。なるほど、これを撮るために、あれだけ集まっていたワケだ・・・。佐倉での側線待避時間を使ってスジを追い抜き、高岡の踏切に着いたころには、10本以上の「三脚林」が立っていました。もう、戦意喪失。「ゴナナ」の話題で盛り上がるファンと、その前を通過して行く「ゴナナ」を、カメラも出さずに見送っておりました。妙に新しいブドウ色2号が、カマの側面で輝きます。カマの通り過ぎた線路際には、満足そうな笑みを浮かべるファンたちの姿がありました。
「ゴナナ・・・かぁ。そういえば四半世紀前、俺も真剣にゴナナを追い回したっけなぁ・・・」
四半世紀も前、蓮田の線路際で、少年は、ずっとゴナナを待っていました。長い長い客レの先頭に立っていたあのゴナナは、もっと煤けたブドウ色を身にまとい、もっと不格好なパンタグラフを前面に張り出して、ギーギーキーキー言いながら、10本もの車軸をガタガタ鳴らして走っていたのです。ゴハチがまだ「大ハズレ」だったころ、必死になって三脚林を立てていた当時の若きカマ屋は、今、目の前を通り過ぎて行ったゴナナよりも遥かに古臭い、しかし美しいゴナナに感動していたのでありました。
「ゴナナ」・・・。今も昔も、本当にいい響きです。

 


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