嗚呼、輸送調整・・・
〜 EF65 530号機(高崎機関区) 〜



(成田線 佐倉-酒々井 にて)

およそ鉄道ファンというものは精神年齢が低いもので、雪が降るとドキドキ、ソワソワして、いても立ってもいられなくなってしまうあたりは、幼稚園児のそれとほとんど変わらないのであります。「ン? 雪か! こりゃあいい絵(写真)が撮れそうだ!」・・・なんて感じで(苦笑)。
年も押し迫った12月30日、北総台地に、今年初めての本格的な雪が降りました。上越国境のようなドカ雪とは違いますが、初頭の乾いた黄土色を瞬く間に消し去る新鮮な雪と、それによって目の前に現れる一面の銀世界・・・。関東地方の中でも、とりわけ温暖な千葉県では、こんな風景の中を走る貨物列車など、滅多に拝めるものではありません。さぁ、血沸き肉躍る・・・。ただ、今年も残り2日。御用納めもとっくに終わり、工場や配送センターなども、長い長い「冬休み」に入っているはずでありました。そう! まさに「輸送調整」の掛かる期間に入っていたのです。
「輸送調整」・・・。年末年始やお盆期間中など、工場などが一斉に操業停止になる時期、貨物列車輸送の本数を輸送量に合わせることを指す言葉で、カマ繰りのうち上下双方のスジが確実に荷のない状態であればウヤに、どちらかに荷がない状態であれば、荷のないスジは単機・・・という形になるのが相場でした。仮に、単機でなかったとしても、コンテナ列車であれば、いわゆる「スカコキ」状態ですから、いい絵になりません。ここが、今も昔もカマ屋にとっては頭の痛いところでした。同じ鉄道ファンでも、電車や特急列車のファンには到底理解し難い部分かも知れません。
「ウ〜ム、やめようかなぁ・・・。でも、これを逃すと、いい雪降らないかも知れないしなぁ・・・」
さんざん悩んだ挙句、ふと気づくと、降りしきる雪の中、高岡踏切横の線路際に立っている自分の姿がありました。「やっぱり俺って、馬鹿なのね・・・(苦笑)」
ここまで来ると、あとは祈るしかありません。まず、絶対ウヤでないように! できれば後にコキがついているように! コンテナ満載なら最高なんだけど・・・。祈りにも似た願いを胸に抱きつつ、ひたすら、凍える線路際で通過時刻を待ちます。こういう時は、カメラのチェックも万全にしておかないとなりません。何度もファインダーを覗き、動作調整を繰り返しながら「その時」を待つのが常でありました。やがて、鳴り始める踏切の警報音、そして、遠くから見えてくる二つの煌々としたライト・・・。
降りしきる雪の中をやってきたのは、いかにも手持ちぶさたそうな530号機ただ1輌でありました。あっという間の通過。鳴り止む警報音に上がる遮断機。そして、何事もなかったような静けさと、遥か遠くに見えるテールランプ・・・。
「単機・・・かぁ」
ある意味、予想通りの結果となりました。望み通りの絵にならなかった落胆と、こんな雪の中でカマと出会えた喜びが交錯する中、カメラをしまい、無言で車に乗り込みます。大した収穫になり得なかったことだけは間違いありませんが、それでもまた雪が降れば、こうした線路際に立ってしまうんだろうなぁ・・・と思う自分が、そこにはありました。

 


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