群れない、捨てない、無理しない

〜悠々自適のセミ・リタイア鉄道ファンから、ご挨拶に代えて〜



ヘモグロビンは、「鉄」分からできている・・・。

サイト内容を更新するために、昔の写真などを眺めつつ、当時の思い出に浸っておりますと、何かの拍子に、ふと、カメラを持って線路際に立ちたくなってくることがあるものです。「フラッシュバック」とでもいうべきなのでしょうか? 何の脈絡もなく、何の必然性も必要性もなく、ふと、線路際への誘惑が自分の心を揺り動かすのです。
 東海道筋からゴハチのSGが消え、何とか別のカマへと情熱を移し注ごうと努力をするのもかなわず、まるで東機のEF15がいつの間にか消えて行ったのと同じように、人知れず、そしてひっそりと、私の中での「カマ屋人生」も終わりを告げたはずなのでありました。
 あれから二十有余年・・・。いつもの取材で使う古い一眼レフを構えてみると、心の片隅に、ポッとEG灯がともっている自分に気付きました。SGのようにシューシューと勢いがあるわけではなく、発光ダイオード側灯のように鮮やかでもなく、本当にほんのりと、そして微かで僅かな暖かいEG灯のように、「カマの写真、もう一度撮ってみてぇな・・・」というおぼろげな想いが・・・。
 でも、ふとした機会に上野駅で再会したロクイチを前にして、私は呆然としました。カマを取り囲む、いかにもオタクっぽいマニアの列・・・。ちょっとでもカマの前を人が横切ろうものなら容赦なく浴びせられる罵声、そして、不気味な甲高い笑い声に、カマ前で記念撮影をしようとする親子すら許さないような殺伐としたホームの雰囲気・・・。これが、今の「鉄道マニア」なのか・・・と。
 今や、お笑い芸人のネタにすらされてしまう「鉄道マニア」・・・。いかにも社会性がなく、いかにも女性にモテなそうで、いかにも自分以外のすべてを認めたくなさそうな「オタク」たち・・・。一度はこの世界を離れた身だからこそ、余計にハッキリと、そして強烈にそう見えてしまうのかも知れません。そうなりたくない、そして、そう見られたくない・・・。
 もちろん、キチンと見れば、そんな人間など全体のひと握りしかいないことはわかっているつもりです。多分、大半のみなさんは、正常な神経と常識とをお持ちの「熱きファン」なのでありましょう。でも、駅撮りをし続ける限り、気持ち悪い「マニア」を避けることはできません。ならば、自分から避けるしかないだろう・・・と。
 私がしたいのは「カマを撮ること」ただ、それだけです。すべての障害を乗り越えて愛し、若き日の情熱を傾けた旧型電機の定期スジが既にない以上、無理して何かを追い回す必要もありません。その昔であれば、ゴロゴロ転がっていたような取り合わせである今の臨スジに、わざわざ自分を合わせる必要もありません。ありきたりの定期スジを普通に待ち、普通に緊張して、普通にシャッターを切れれば、それでよいのです。そう、走ってくるカマに向けてシャッターを切れさえすれば、もう、それだけでよいのです。


 人生も後半に差し掛かって、もう一度カマの前に立つことにした私は、とりあえずの復帰にあたり、自分なりの約束事を作ってみました。それは「群れない、捨てない、無理しない」の三則・・・。ホームの先っぽにたむろして怪しげにわめいたり、周囲の人から冷たい視線を浴びながら、自分のカメラのことだけを考えるようなマニアだと思われたくない、だから、駅撮りはやめよう。駅から外に出て、線路際に立ってカメラを構えよう・・・。フィルムケースやコーヒー缶なんかを馬鹿みたいにポイポイ捨てて、いかにも薄っぺらな人間には見られたくない、だから、いつも綺麗に動けるように準備して撮影しよう・・・。すべてを捨ててまで追ったあのカマの美しい思い出や誇りを、今の中途半端なテンションや行動で汚したくない、だから、自分の生活や仕事のリズムを曲げ、あるいは犠牲にしてまで撮影にのめり込むのはやめよう・・・。誰もいない線路際で、臨スジでも特別列車でもない、いつものスジのいつものカマを、ただ一人で静かにフィルムへ刻むことができたら、それで幸せ・・・。飽きず、懲りず、慌てず、地元の千葉県内、昔で言えば千葉鉄道管理局(千鉄局)館内を中心に、ヒマができたら、何気なく通り抜ける風のようにフラッと出掛けたい・・・。これが私のスタンスでありたいと思っております。もちろん、同業の方がいらっしゃれば、譲り合いますし会釈も挨拶もしますけど・・・ね(笑)。

 これからこのコーナーで扱うのは、そうやって刻んだものばかりです。ですから、珍しいスジやきらびやかな看板付きのカマなどはありませんし、多分これからも、ないと思います。その昔、もの凄いテンションでカマを追い続け、今は、当時を懐かしみながら、心静かにフツーのカマと向かい合う中年オヤジの作品集・・・。そんなんで行こうと考えております。他とは競いません。無理して追いません。それでもよろしければ、どうぞご覧下さいませ。


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