「ス」が「シ」に変わると・・・
〜 常磐線のEF81 〜



(上野駅にて)


最近、ネットでブラブラとサイト巡りをしていて、田端区のEF81には、昨今、様々な人気のカマがあることを知りました。星ガマ、虹ガマ、そしてカシガマ・・・。

「ん? カシガマ・・・?」
よく読んでみると、寝台特急「カシオペア」牽引限定の塗装機だそうで・・・。

考えてみれば、線路際に立ち、カマを必死になって追い回していたころから、どういうワケか「トッキュウ」にはあまり興味がありませんでした。そりゃあ、客レの寝台列車に関しては、一応チェックはしていましたが、どうせ牽くのはPFあたりが関の山でしたし、後ろに続くのも無個性な14系か24系ばかりでしたから、カマに看板がつこうがつくまいが、そんなこと大した興味にもならなかったのです。辛うじて追うのは、カマ仲間に半ば強引に誘われる、田端のハチマル(EF80)くらいのものでした。
最末期のハチマルは、ほとんどが同区のEF81との共通運用で、しかも自区から始まる運用の場合、そのまま流れずカマ替えになることも頻繁・・・。特に、寝台客レの運用は、その傾向が顕著でありました。上野で待っていても、推進でホームに滑り込んで来て、初めてカマが判明するような、そんな状態に近かったのです。わざわざ夜遅くまで粘って、しかも心から好きだったワケではないハチマルを待って、やって来たのはEF81・・・。これほど、1日の疲れを倍増させるようなことはありませんでした。
この日も、さんざん迷って、それでも一縷の望みを託し、上野駅地平ホームで時間をつぶします。常磐線経由の寝台特急「ゆうづる」は、583系のスジと客レのスジが設定されていて、客レのスジは、いつも地平ホームに肩を並べて出発を待ちました。
1本目・・・。長い長い青の客車の後ろにへばりついていたのは、そう、「カス」ガマのEF81。今日は、79号機でした。どんよりと曇る心、そして、待った自分への後悔・・・。
線路端で、職員がカンテラを振ります。そう、続いてもう1本の「ゆうづる」入線です。最後の望みは、これがハチマルであること。できれば、変形窓の37号機か、スカート装備の29号機 だと嬉しいなぁ・・・。
残っているネガの、その次のコマには、尾久で出発を待つ宇都宮のゴハチ姿が刻まれていました。きっと、この時入ってきた「ゆうづる」は、まぎれもなくEF81だったのでしょう。「カス」ガマたちの競演に、きっと舌打ちをしながら、カメラを構えることすらなく、家路についたのだと思います。
そんな「カス」ガマは、20年以上の時間を経て、たった1文字、入れ替わりました。そして、このカマを追うために命を懸け、このカマが入ることがニュースになる、そんなカマへと変わりました。「ス」が「シ」に変わり、きっと、多くのファンの熱い視線を浴びながら、黙々と鉄路を走り続けているのでしょう。
そういえば、この日、後から入って来たEF81は、何号機だったのでしょうね? 今となっては確かめる術もありませんが、81号機? 89号機? 95号機? それとも99号機・・・? もしかしたらその夜、深い溜め息を残して背を向けたそのホームで、とんでもない「未来の競演」が繰り広げられていたのかも知れません。

 


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