飼育に関する質問編
これからザリガニを飼育しようと思っている方、またはザリガニ飼育経験の比較的浅い方から多く寄せられる質問をまとめたコーナーです。できるだけ平易な内容でまとめたつもりですが、やむを得ず一部でザリ飼育用語などを用いる場合もございます。「深迷怪ザリガニ事典」なども御参照の上、御覧下さい。何でも聞くんじゃなくて、自分で調べることも大切ですぜ!
最終更新日 平成18年4月19日
餌を与えるのに適した時間はある?
よく、動物の飼育書などを読むと、「1日2回、朝と夕方に1つまみずつ・・・」などという指示が出される場合がありますが、ザリガニの場合、特に気にする必要はないだろうと思います。というよりも、稚ザリ期などといった特定の時期を除けば、1日2回以上の投餌は明らかに与え過ぎだといえます。
確かに、自然下において、彼らは夕方から夜にかけて巣穴を出て歩き回り、昼間は巣穴に潜っていることが多いとされています。その点から考えれば、夕方から夜に掛けての時間帯がベストだ・・・ということになりましょう。しかし、これはあくまでも「一般的傾向」であって、すべての個体がそうか・・・というと、決してそうではありません。ザリガニ釣りでの経験でもわかる通り、昼間でも歩き回ったり、餌を食べたりする個体は、いくらでもいるものです。ですから、昼間に餌を与えてしまったから、コンディションを崩す・・・とか、寿命が縮む・・・ということは、まず考えられません。また、そういう観点で、ザリガニを「完全夜行性」という形でくくってしまうのも問題があるといえましょう。
しかも、水槽飼育の場合、夜中でも部屋の電気がついていたり、昼間でも雨戸を閉めていたりすることはよくある話ですし、「見てみたいなぁ」と思って、夜でもいきなり蛍光灯をつけてしまうことは日常茶飯事です。人間の都合で昼夜が滅茶苦茶な環境にしておきながら、「夕方から夜に掛けてがベスト」などと言い切るのは、それこそ矛盾もいいところでしょう。
投餌間隔が伸び縮みするのは問題もありましょうが、「餌を与えるべき時間」という部分については、そう心配する必要もありません。時間的な部分よりも間隔的な部分で規則正しく与えることと、栄養面でバランスよく与えることが大切なのです。
餌は、どんなものがいい?
ザリガニ(アメリカザリガニ)の子ども向け書籍を読みますと、ごはん粒、パンくずに始まり、煮干しや刺身に、ゆでた野菜まで、あらゆるものが「餌」として挙げられています。事実、ザリガニは基本的に雑食性ですから、そういったものでも、とりあえずは食べてくれますし、ある程度まではそれで生き延びてくれますが、やはり、本格(長期)飼育を考えるのであれば、栄養面でのバランスを充分に考慮すべきでしょう。
その際、最も有効に活用できるのが「熱帯魚用の餌」で、これらを複数種組み合わせて交互に与えることが望ましいといえます。基本的には、沈降性(沈むもの)であればかまいませんが、キャットフィッシュ(ナマズ)用の餌、プレコ及びコリドラス用の餌、そしてらんちゅう用の餌など、性質の異なるものを組み合わせるのが一般的です。これらは乾燥した人工飼料のため、給餌も非常に楽ですし、ある程度以上のショップであれば、たいていそれらの専用飼料は売っていますので、困ることはありません。また、外産のザリガニを扱うショップでは、ザリガニ専用飼料(「ザリガニ・ヤドカリの餌」みたいな、300円程度の飼育教材飼料とは異なる餌です)を販売していますので、それらを組み合わせて使えば、よりベターです。
あとは、状況に応じて、流木や乾燥した広葉樹枯葉などを与えたり、赤虫やディスカスハンバーグなどといった冷凍飼料を与えたりするとよいでしょう。多少抵抗がある方もいらっしゃいましょうが、時にはメダカなどの生き餌を与えることも、ザリガニにとっては非常に良いことです。いずれにしても、同じ餌ばかりを与えず、様々な種類の餌を順繰りに組み合わせて使うことが重要なのです。この方法は「ローテーション投餌」といって、ザリ・キーパーにとっては「基本中の基本」と言っても過言ではない飼育テクの1つです。
魚病薬を投入したいが。
実際に飼育を続けていますと、悪化した個体のコンディションを立て直すためとか、混泳魚のケアや餌用魚の病気防止などを考え、往々にして魚病薬を投入したくなる瞬間があるものです。確かに、最近の魚病薬には様々なものがあり、中には「低刺激性」を売りにしているものもあるようです。
しかし、現実的には極めて危険な方法であり、かなり高い確率で、ザリに何らかの障害が発生する可能性があると考えてよいでしょう。現地養殖場ですら、こうした薬剤投入については消極的であるのが普通で、その方法論も確立していませんし、専用薬剤もほとんど発売されていません。一部のショップでは「低刺激性だから大丈夫」といって勧めるケースもあるようですが、同じような症状であっても、ザリと魚とでは、その病気の質もメカニズムも、大半が全く異なるものなのです。ですから、最もポピュラーな「綿かび系統」の病気でも、すべてのものに「熱帯魚用魚病薬」が効くとは限りません。むしろ、この投入によるショックや中毒症状の方がはるかに怖く、最悪の場合、投入直後に死んでしまうケースもあり得るのです。熱帯魚飼育の経験をお持ちの方なら御経験があるかと思いますが、魚病薬などを投入した際、一番最初にショック状態を起こすのは、圧倒的にヤマトヌマエビであったりするわけで、この点からも、こうした怖さは御理解いただけると思います。
そういう意味で、ザリの場合は、薬を使わず、頻繁な換水や薄めの海水混和(海水混和については、やり方を間違えると、かなり大きなダメージを与えますので、本来であれば、対症療法的な投入はお薦めできません)などで様子を見るべきでしょうし、混泳魚や餌用魚のケアは、別水槽で行うことが大前提となります。餌用魚のコンディション維持のために薬剤を投入するのは問題外だといえましょう。マロンなどでは、エルバージュで薬浴させていた餌金を投入した途端、ひっくり返って自切を始め、半日で死んでしまったという報告すらあるほどです。
なお、同じような理由になりますが、基本的には、コケ取り薬や流木のアク抜き剤などの投入も控えるべきだと思います。アク抜き剤については、通常の場合でも水槽に直接は投入しないものですが、こうした方法でアク抜きをした流木を使う場合には、多少「やり過ぎ」くらいに思えるくらい、充分な洗浄が必要でしょう。一部の種を除けば、ザリガニの場合、流木から出る少々のアク程度では、何の障害も起こさないものです。ですから、ザリ飼育に関する限り、「アク抜き剤」自体が、ほとんど必要とされないと考えてよいでしょう。
本に書いてある通りに飼っても、すぐ死んでしまうが。
ザリガニについては、昔から多くの子ども向け書籍が発行されてきましたが、こうした本などで触れられている飼育方法には、正直、首をかしげてしまう内容のものも多く含まれているのが現状です。特に、重要な問題点として挙げられるのが「水質維持」と「溶存酸素量の確保」という2点で、「すぐ(あるいは1〜2ヶ月で)死んでしまう」という原因は、ほぼこの2点に集約されているといってもいいでしょう。
確かに、アメリカザリガニやヤビーなどは、水質適応能力が非常に高いため、現地においても、相当劣悪な環境下でもって、問題なく生きている場合が少なくありません。しかし、同じ「汚い水」であっても、それが「ザリガニの糞尿や残餌に起因するもの」であるか、そうでないかによっては、大きな違いが出てくるものなのです。また、「常にある一定ラインの汚さが維持される」場合と、「急激な水質悪化が繰り返される」のとでは、おのずと個体に掛かる負担にも違いが出るものです。従って、「汚いところでも住んでいるから大丈夫だろう・・・」というのは非常に危険な考え方でしょうし、事実、いくら強いアメリカザリガニやヤビーでも、とても堪えきれないケースはいくらでもあるはずです。
このようなことから、飼育にあたっては、できるだけ多めの水(水質悪化の速度を緩やかにするため)を準備し、最低でもエアレーション設備(エアーポンプとエアーストーンだけでもいい)は用意してやるべきだと思います。さらに、フィルターなどによる濾過がなされれば、だいぶ環境は好転するはずです。
なお、「ザリガニは背中を水面に出して呼吸する」という理由で、「背中が隠れる程度の水量」という説明がなされる場合があります。もちろん、ザリガニはこうした方法で大気から直接酸素を取り入れることができますが、それは、あくまでも「水中の酸素が極端に不足した場合のやむを得ない手段」であり、決して「通常の呼吸方法」ではありません。水中に充分な酸素があれば、陸地を作る必要もなければ、水面に上がる必要もないことを付け加えておきます。そういう意味で「水面に上がろうとする」という動作自体、何らかの問題があることを意味している・・・と考えてよいと思います。
水槽の水位、満量で大丈夫?
あくまでも「エアレーションをしている」という条件がつきますが、ランド系など一部の特殊な種を除き、経験上、どの種も問題はありません。水位をどれくらいに設定するかという点については、茶道でいう「流派」のようなもので、それぞれのベテランによって、満量にすべき、半量程度がよい、など、微妙に違うのは事実です。しかし、このホームページでもたびたび触れています通り、ザリガニ本来の呼吸は「エラ呼吸」ですので、「陸地を作らなければダメだ」という考え方は、適当だとは言えません。
事実、アメリカザリガニについても、食用として使われるような大型個体は、沼などでもそれなりに水深のあるところに多くいるほか、ウチダザリガニについても、大型個体はかなり水深の深いところを好み、浅瀬に近づくのは、繁殖期が中心になるといわれています。
水位を満量にする際の問題点として挙げられるのは、やはり「逃走」の可能性でしょう。特に、上部フィルターを用いる場合は、注意が必要です。また、水位を半量程度にしたとしても、エアーホースなどがある場合は、その危険度は変わらないものになるといえましょう。いずれにせよ、「しっかりとフタをする」ことは、水位に関係なく、飼育の「基本」であるといえます。前項でも触れましたが、水量が充分でしっかりエアレーションしているにも関わらず、それでも水面に上がろうとしたり、脱走しようとしたりする事例を時折耳にします。エアレーションが充分になされていれば、酸素量不足ということはあり得ませんから、そういう場合は、別の環境に何らかの問題があるのだ・・・と考えてみて下さい。ザリガニにとって一番安全なのはエラ呼吸であり、水面に上がるという行為は、自分の身を外敵に見せるという意味で、非常に切羽詰まった状態なのだ・・・ということを考えれば、何度も逃げ出そうとするシーンを目撃した場合、単にフタをしっかりすることだけを考えるのではなく、全体の環境をもう一度しっかり見直し、適切な改善策を講じる努力をするべきだと思います。
ザリガニがしきりと水面上へ出たがるが。
一部のグループ(北米系の一部やランドクレイフィッシュ系など)を除くと、基本的にザリガニはエラを用いて水中から溶存状態の酸素を摂取するというエラ呼吸を最も自然な呼吸方法としています。従って、通常の飼育段階ですと、種ごとに多少の依存度格差はありますが、大半のグループは魚と同じく陸地を全く必要としません。なおかつ、水質の悪化度合いは、(収容個体の大きさや匹数にもよりますが)基本的には水量が多くなればなるほど緩やかになる傾向がありますので、水質変化に起因するザリガニへの負担を減らせるという効果も兼ねて「水槽たっぷりの水で飼育しましょう」という提唱へとつながっているわけです。もちろん、その水には充分な酸素が溶け込んでいることが絶対条件ですし、送気システムのない状態で水をいっぱいに満たしますと、遅かれ早かれ、個体は酸欠状態に陥り、死んでしまいます。
このような点で考えれば、飼育中のザリガニがしきりに水面上へと出たがる一番大きな原因は、飼育水中に含まれている酸素不足であり、事例的にも一番多く聞かれる話ですが、エアレーションをし、充分に酸素を供給していても、盛んに水面上へ出ようとする個体の事例も、前項のように、少なからず報告されているのは事実です。
では、どのような理由でそのような行動に出るのか・・・について、前項の回答を踏まえた上で、少し突っ込んで考えてみましょう。
様々な要因の中で、最も可能性が高いといわれているのは「その個体にとって、水槽環境のすべて、あるいは一部の環境が非常に好ましくない状態である」、つまり、中の個体にとって何らかの強いストレス要因が存在し、それを回避するために水槽からの脱出という行動を示しているということです。水質が合わない、水温が合わない、水槽サイズが合わない・・・といった根本的な状況のみならず、充分な退避スペースがなかったり他の強い個体がいるなどして落ち着けない、摂餌または脱皮などに必要なスペースがない・・・など、その個体が何らかの強いストレスを感じた時、水面上に出るというリスクを冒してでも回避したいと個体が判断すれば、必然的にそういう行動は出てくるものでしょう。複数収容に切り替えた瞬間に脱走したり、水槽内のレイアウトを大きく変えた途端に脱走したり・・・など、思い当たる原因は少なからずあるはずです。日ごろは水槽内で喧嘩することなくのんびり暮らしているペアのうち片方が、脱皮が近づく時期だけ盛んに水面上へとよじ登ろうとする・・・なんていう話も、これと似たような原因によるものかも知れません。
こうした行動は、やがて脱走死へとつながりますので、放置しておくのは危険です。まず充分な送気がなされているかを確認し、それで問題なければ、1つ1つ理由を検討して、改善して行きましょう。水質、水温、周囲環境はもちろんのこと、水槽は狭すぎないか? 収容個体数は多過ぎないか? きちんとした退避スペースはあるか? など、環境を1つ1つチェックして行きます。「隣の水槽との間に目隠し板を設けた」「シェルターを塩ビ管から植木鉢に代え、位置を奥の場所に移した」などのちょっとした改良でも、ピタッと収まる場合もあります。決して物を言わない彼らだからこそ、キーパーの細やかな気遣いが必要になるのだといえましょう。
尾扇が欠けた個体ばかり・・・これって異常?
1匹数十円の餌用ザリガニならともかく、価格比較的の高い個体や新着種などを購入する時などは、買い手である私たちの選び方も、いきおい慎重になるものです(ポーンと買っちゃう、凄い人もいますが・・・)。そんな時、どうしても目が行ってしまうのが、この「尾扇欠損」というポイントでしょう。入荷個体の大半がこの部分に難点を持っていると、購入という行為にすら、ためらいが生まれてしまうこともあるくらいです。ハサミや他の胸脚、そして触角の欠損については、最近でこそ相応の配慮をしてくれるショップも増えてきましたが、尾扇の状態までは注意が行き届いていないケースも決して少なくはありません。そのためか「この部分の状態こそが、入荷個体全体のコンディションを見極めるポイントだ」と力説するキーパーもいるほどです。結論から先に申しますと、「全く問題のない場合」と「重篤な障害のある場合」の2つが考えられます。
まず、全く問題のない場合についてですが、代表的な例としては「養殖乗り換え個体の人為的マーキング」などが挙げられましょう。特に食用乗り換えのマロン成体やレッドクロウ成体、ヨーロッパ経由で入る集約系養殖場からのヤビーなどで稀に見られるケースで、決められたごく一部に切り込みや切り欠きなどが入れられています。この場合、1〜3種類程度のわかりやすい切り込みや切り欠きが、1つの荷の全個体または相応の個体に同じように入っているのが特徴で、確証はありませんが、養殖現場において「出荷可能」とか「繁殖使用済み」、あるいは脱皮完了、年齢数などの目印として、最も商品価値の下がりにくい尾扇部にマーキングをしているのではないかと推察されています。実際、マロン成体において、擦り切れ個体にはすべて切り欠きが入っていたり、切り欠きの入っていない個体だけ全部脱皮した・・・など、この仮説を傍証するデータはかなりの数に及びます。もちろん、こういうケースであれば、欠損箇所を悪化させて甲殻病などに罹患させない限り、基本的には何の問題もありません。
一方、何らかの環境悪化により、コンディションが落ちているサインであるという場合もあります。マロンや一部の種では、尾扇が非常にデリケートなものもおり、特にマロンの場合、現地養殖文献などを見ても「底床に問題がある(鋭利な砂礫状など)場合、尾扇などが傷つくことがあるので、養殖池設営時には注意を要する」という記載がありますから、輸送やストックの段階で、そうした底床の環境にさらされることで、同様の症状を起こしてしまうことも充分にあります。もちろん、これを放っておくと、様々な形で障害を引き起こしますが、早い段階であれば、良好な環境下で充分な栄養を与えてやることで脱皮をし、尾扇は元に戻りますので、できるだけ早めに導入し、ケアを開始しましょう。
ただ、そうした欠損部が異様に茶変していたり、尾扇のみならず、他の部分にもそうした変色部などが見られる場合、かなり厳しいカビ状の病変などが発生している場合などは、バーンスポットを始めとして、何らかの甲殻病に罹患している可能性を疑った方がよいでしょう。脱皮クリアで何とかなる程度であれば、キーパーの技量次第でリカバーできることもありますが、甲殻病については、観賞魚の分野ですと充分な立て直し方法が確立しておらず、中には伝染性を持ったものもあります。自分の技量を過信して混育水槽に収容した結果、1ヶ月も経たないうちに水槽内の個体が全滅したという事例報告も、年に何回かは耳にします。決して、甘く見てよいものではありません。
こうした病気の場合、一般的には観賞魚向けの魚病薬が効かない上に、ザリガニ自体がこうした薬剤に弱いこともあって、初期段階に見つけられなければ、手の施しようがないのがほとんどです。ですから、こういう状況の個体であれば、価格の如何を問わず、手を出さない方が賢明でしょう。
こうした欠損は、いずれにしても「万全の状態ではないからこそ発生する」ものですから、触角や胸脚の欠損とは違い、かえって気をつけなければならないものかも知れません。
複数の種類を飼ってみたいが、いい方法はある?
限られた水槽本数の中で、様々なザリガニを飼育してみたいというのは、キーパーの偽らざる真情であろうとは思いますが、基本的には「1水槽内1種」を堅持すべきです。ザリガニは、ただでさえテリトリー意識が強く、過密飼育はトラブルの原因になりやすい上、マロンとレッドクロウなどの例によってもわかる通り、棲息地の環境が異なることによる、水質・水温などといった適正レンジが違ってしまう場合もありますから、異なる種の個体を1本の水槽に入れた場合、多かれ少なかれ、どちらかの種には負担が掛かることになりましょう。「ゴールデン・レンジに設定すれば大丈夫」という安易な判断も、長期的な視点に立って考えれば、決して望ましいことではありません。また、棲息地の違いによって病原菌の保菌や免疫の有無などがあり、「混育した結果、ある特定の種ばかりが死んでしまった」というのは、よく耳にする事例です。この点で、最もよく知られているのは、やはりザリガニかび病の問題だと思いますが、それ以外にも、原因のハッキリしない、様々な「突発死」事例があり、それが、複数種収容時の片側種個体だけに限って表れるというケースも、非常によく聞かれる部分です。
この病気に関する問題については、まだはっきりしない部分も多く、「絶対感染する」とは断言できない部分もありますが、やはり、考慮してやるのが無難でしょう。また、水槽内の飼育種をスイッチする場合も、一応全飼育水を交換し、底砂や濾過システム一式の粗塩洗いくらいはしてやってから再セットした方がよいと思います。
個体に水ダニのようなものがついているが?
「個体を買って来て自分の水槽に導入しようかと思ったら、その個体に小さいダニのような虫がいっぱいタカっている。気持ち悪いし、そのまま水槽に入れるのは不安。どうしたらいい?」という質問が、実は非常に多く寄せられています。そして、この質問自体を分析して行くと、特定の種や特定のルート、さらには特定の大きさなどという部分では共通点が少ない代わり、ショップでの購入時に「単独で小さい水槽にストックされていた」「購入していたショップでは、あまりザリガニに力を入れておらず、ずっと売れ残っていた」「甲殻にコケが生えていた」などという事例が非常に多いことがわかります。つまり、こうした事例は、特定の種に限って最初から付着しているものではなく、ストックの段階、もっと限定的にいえばショップでのストックの段階で寄生したものである可能性が非常に高いことになります。寄生生物の場合、原棲息地で既に寄生している、いわば「ネイティブ」の寄生生物である場合と、流通の段階で新たに寄生した場合の2パターンがありますが、質問内容における共通項から検討していくと、質問内容のケースとしては、後者の事例が圧倒的であると考えてよいでしょう。事例を後者に絞って考えますと、こうした話は、ザリガニに限らず、たとえばテナガエビやスネール類、そして水棲昆虫類など、遊泳性のあまり強くないものでも時折聞かれる話なので、原因としては、ストック段階の環境、特に底砂の状態が劣悪だったために、動きの機敏でないザリガニに寄生してしまったと考えるのが妥当でしょう。
こうした個体を入手した際の対応策ですが、基本的にこうした寄生生物は、環境の変化に対してあまり強くないため、水質・水温など、ある程度強い環境変化を与えることで、自然と落ちてくれるケースがほとんどです。購入時、個体のコンディションが悪くなければ、比較的新しめの水を張った水槽に投入して数日ストックし、その後、数日ごとに硬度の高い水や低い水などを交互に強めの換水をかけてやります。2〜3度これを繰り返してやると、たいていはその姿は見えなくなりますし、個体がそうした変化によって脱皮してくれれば、ほぼ完全に退治できます。
ただし、個体のコンディションが充分でないと、こうした寄生生物の除去作業自体が個体に致命的なダメージを与えることがあります。特に、こうした状況になっている個体は、コンディション自体万全でないケースの方が圧倒的に多いものです。この場合は、順序を変え、まずは個体のコンディション良化に全力を尽くしましょう。個体のコンディションが充分に落ち着いたところで、初めてこうしたダニ類の除去に乗り出します。
いきなり混育水槽に導入してしまった場合、どうなるかについてですが、基本的にはその導入水槽の環境によっても結果は変わってきます。環境がよければ、他個体に寄生することなく、自然と落ちていきますし、悪ければ、次々と他個体に寄生して行きます。そういう意味でも、飼育水槽の環境、特に底床部の状態維持は非常に大切だといえましょう。裏を返せば「飼育個体にダニが多く付いている」という事例の場合、その飼育環境があまり良好ではない・・・という可能性を示唆しているということもできます。
なお、こうした寄生生物の除去には、石灰や塩化ナトリウムの微量投入という方法がありますが、養殖池や大型プールとは違い、水量の少ない水槽下では、変化の触れ幅が非常に大きく、投入量を許容適正値にピタッと持って行くことはなかなか困難です。どうしようもない場合にはこの方法も考えねばなりませんが、基本的にはこうした方法を用いないに越したことはありません。逆に、そこまでの状態の個体であれば、個体や価格が魅力的であっても、購入を控える方が結果的には無難であるといえましょう。