ジャンル:飼育
ウチダザリガニをどうしても飼育したいが、どうしたら飼える?


  お尋ねのメール内容    Wさん(東京都)ほか多数
 私はアメリカザリガニを飼育していますが、先日テレビで、ウチダザリガニの姿を見て、一発で好きになってしまった者です。私は、3年ほど前からザリガニの魅力に気づいて、それから飼育を始めたので、ウチダザリガニを飼育したことは一度もありません。
 ウチダザリガニは、特定外来生物に指定されていて、一般人は飼育できないことになっていますが、それでも飼育できる特別な方法があり、佐倉ザリガニ研究所様はそれをご存知と聞きました。私は、どうしても自分の手でウチダザリガニを飼育したいと思っています。もちろん、一回飼育を始めたら、絶対に放流したりしないで、きちんと最後まで飼う覚悟はできています。もちろん、自然を破壊するような行動は絶対にしません。ですから、どうか、その特別な方法を教えて欲しいのです。よろしくお願いします。
お答えさせていただきます
 6月の終わりごろのことですが、突然、こんな感じの同じ内容のメールが何通も届きました。「いったい何が起こったの?」とビックリしていたら、古くからお付き合いのある友人から「お前、また2ちゃんねるでボロクソ叩かれてるぜ! 今度はなんと犯罪者扱いだぞ!」・・・と。ま、匿名掲示板でもある2ちゃんねるであれこれと謂れなき”お褒めの言葉”を頂戴するのは今に始まったことではない(苦笑)のですが、「はてさて今度はどんなお褒めの言葉が書かれているんだろう?」とチェックしてみたら、どうやら今回、佐倉ではなんと特定外来生物のウチダを飼育していることになっているようで、おまけに、なんと国からのお墨付きをいただいていることになっているようで・・・。すごいよなぁ、佐倉って、そんな立派な研究所だったんだ・・・(大苦笑)。
 さて、バッサリ行ってしまうようでホントに申し訳ないのですが、まず最初にこうしたお尋ねに対する明確な回答をさせていただくとすれば、「そんな特別な方法など、最初から存在しません」ってことになるでしょうね。飼いたいと思うお気持ちはわからなくもありませんし、確かにウチダは、ザリガニの中でもスタイル的にカッコいい部類に入るとは思いますが、ウチダに限らず、そもそも特定外来生物に指定された段階で、新たな飼育はできない状態になっています。もちろん、佐倉には1匹もいませんし、今後もそういうことはないでしょう。ザリ道を極めて行く道のりで考えれば、佐倉はまだまだ、2ちゃんねるで叩かれている通りの「イカサマ研究所」のレベルでして、我ながらもっともっと修行を続けて行かないといけません(苦笑)が、おかげさまで様々な公的機関やマスコミなどでも活動をさせている以上、それなりの遵法意識は持っていたいと考えております。もし、それでもご不審のようであれば、ぜひ、機会を見つけて直接お声を掛けいただき、お知り合いになっていただけると嬉しいです。その上で、ぜひ佐倉にもお越し下さい。あいにく、匿名での言動では愉快な気持ちになったことがないので、基本的に実名で行動できる方以外はお付き合いさせていただくつもりもございませんが、匿名で陰からコソコソ言っているような”自称専門家”のお歴々よりも、よっぽど実のあるお話ができると思いますので・・・(笑)。いくらもっともらしいことを語ってみたところで、所詮は無責任な匿名での論議。内容的にもレベル的にも推して知るべし・・・といったところでしょう。挑発的な物言いで恐縮ではございますが、ご不満があるようでしたら、ぜひ実名にてのご連絡をお待ちしております。別に何か悪いことをしているワケでもないんですから、公明正大に実名でお付き合いするのにも、困る理由はないハズなんですけどねぇ。
 話を戻しましょう。確かに、指定後もウチダの飼育を続けていた一般の方は存在していました。ただ、そうした一般の方がウチダを飼育できていたとすれば、それは、特定外来生物に指定された段階で、環境省に対し、指定から6ヶ月以内に飼養許可申請を出して許可されたケースのみです。しかも、その申請はその時点で飼養されていた個体に対してのみであり、その個体の繁殖や、そうした個体に対する新たな申請は認められません。ウチダの指定が平成18年ですから、これを書いている時点ですでに10年が経過しており、その許可を受けた個体がそのまま生き残っていると考えるのは、かなり非現実的であり、そして厳しい状況にありましょう。従って、お気持ちは充分にお察し申し上げますし、それだけ固いご決意と生態系保全に対する高い意識をお持ちであることはありがたいと思うのですが、現状、一般の方がウチダを飼うことは、事実上不可能であるといえます。ウチダの場合、カミツキガメなどのように指定された主要因がペット流通によるものではありませんが、もし、私たちアクアリストが全体としてもう少し高い意識を持って飼育に関わっていれば、もしかしたらちょっとは違った状況になっていたのかも知れませんね。そういう意味では、本当に残念な話です。
 今回、こうしたお尋ねを数多くいただいたのですが、その中に「水族館では見ることができるのに、私たちが飼えないのはなぜ?」という内容のお尋ねがいくつかありました。せっかくですから、これについても触れておきましょう。
 確かに、水族館や大学の研究施設などを見学してみますと、場所によってはウチダのような”特定外来生物”を飼育・展示しているところがあります。飼う側からすれば「こういうところは飼育できて自分たちが飼育できないのは不公平だ」と思われるかも知れません。しかし、それは、その生き物をその場所で飼育するための”根本の意味”が違う・・・ということなのです。一般的なアクアリストがそうした生き物を飼うのは、その生き物が”好き”だからという、それだけのことです。しかし、水族館などの場合は、その生き物を飼育することによって、生物学や環境保全などに関する”啓蒙”を行なうことが目的であり、そこを訪れる人々に対して、より広く、深い理解を得てもらうという大切な目的があります。また、こうした生き物に対する研究を深め、今後の環境教育や環境行政に活かして行く・・・という教育的側面もありましょう。佐倉の場合は、とりあえず”研究所”という名称はついているものの、日ごろ2ちゃんねるでも存分に叩いていただいている通り、ポンコツな「イカサマ研究所」ですので、そういう点でも水族館などとは全然違いますよね(苦笑)。
 それでも不公平感が拭えない方々がいらっしゃるかも知れませんので、せっかくの機会ですから、こうした施設での個体管理についても触れておきましょう。ともすると、「水族館なんかは公共機関だから、その立場を利用して飼いたいものを飼えるし、好き放題できるんだ」なんて考えられがちですが、とんでもない! 確かに、充分な要件と正当な理由があれば飼育や移動も行なうことができますが、こうした生き物を飼育したり展示したりするために、実際には非常に厳格な要件の下、厳重な管理がなされているのです。一部の水族館では「バックヤードツアー」などを企画しているところもありますので、そうした際にはぜひ応募して、見学していただきたいのですが、特にこうした生物の展示を行なう場合、私たち一般人が安易な気持ちで飼育するのとは比較にならないくらい厳重な施設で、細心の注意を払って飼育されています。つまり「ただ好きだから、立場を利用して気の向くままの飼育をしているワケではない」ということです。こうした部分は、きちんと理解しておく必要がありましょう。そして、こうした苦労を経て展示してくれているのだと思えば、「不公平だなぁ」ではなく「見ることができてホントにありがたいことだなぁ」と考える方がよいのかも知れませんね。
 このように、残念ながら飼育はできないウチダザリガニですが、棲息地へ行けば、今でも元気な個体の姿を目にすることができます。特に、福島県の裏磐梯では、佐倉ザリガニ研究所も微力を尽くしつつ、毎夏、楽しくてタメになるイベント「Zari-1 Grand Prix」を開催していますので、ぜひ、ご家族みなさんで、泊まりがけでお越し下さいね。イベント当日は砂川もおりますので、ぜひザリガニ談義に花を咲かせたいですし、ホントに2ちゃんねるでボロクソに叩かれている通りの悪党かどうかもチェックしていただけると思いますので・・・(笑)。みんなで楽しく、そして実りあるウチダとの時間を送りたいと思っております。ご参加、心よりお待ちしております。