お尋ねのメール内容 Kさん(静岡県) |
ズバリ、ご質問したいことは、「ゴーストの棲息地について」です。本当は棲息場所を教えて欲しいのですが、それは秘密かと思いますので、見つける方法というか、棲息地の特徴みたいなものを教えて欲しいのです。 いろいろ調べてみますと、ゴーストの原産地は愛知県だということがわかりました。自宅から車で1時間ちょっとで愛知県には行けますので、今年、車で愛知県方面に行き、丸一日かけて探して歩くという作業を4回もチャレンジしてみましたが、一度も見つからず、全滅でした。ゴーストは白ヒゲの変形ということで、静岡県には白ヒゲの棲息地があるとの情報を佐倉ザリガニ研究所のサイトで見ましたが、これも昨シーズン探してみましたが、まだ1ヶ所も見つかっていません。砂川様もそうですが、私の知っているショップの取引先の人も、白ヒゲは何ヶ所か棲息地を知っているそうです。どうしてプロの人には発見できて、私みたいな一般のアクアリストには見つけられないのかが不思議ですし、そうした人は、きっと何か、私たちとは決定的に違うコツを知っているんだと思います。 今年は成功しませんでしたが、また再びチャレンジしたいと思っています。そして、来年、シーズンインしたら、今度こそは絶対見つけたいと思っています。自分の手でゴーストを捕まえられたら、ものすごい感動すると思うのです。できれば、棲息場所を見つけるコツを教えて欲しいのですが、それが企業秘密なら、どうか、ヒントだけでも結構ですので教えて下さい。 |
お答えさせていただきます |
メールを拝見しますと、白化個体の棲息地やその探索には、何かとんでもない壮大なコツやヒミツ、そして超上級なテクニックなどが存在し、そして「才能を持つ選ばれた人間しかこういうものは見つけることができない」かのような印象を受けますが、正直、そんなものは何もありません! もしそうなら、私みたいな人間が見つけられるはずがありませんもの・・・(苦笑)。才能やテクではなく、あえて言うなら「とにかく場数がすべて!」という感じでしょうか・・・? でも、それだけではご納得も戴けないことと思いますので、私自身、いくつか思いつくままに述べさせていただくことにします。 もちろん、棲息地の状況保全や、情報をご提供下さった方に対する信義誠実の原則もございますので、ここではそうした場所自体を詳らかにすることはできませんが、確かに愛知県にも白化個体(ゴースト)が採れたとされる場所が何ヶ所か存在していて、私も今までの間には、佐倉からはるばる新幹線に乗って見に行ってきたことも何度かございます。わざわざ出掛けたこともあり、その時は何地点を見て歩きましたが、その時に少なくともパッと見た感じでは、他の一般的な棲息地と何か特別かつ決定的な差異を感じられるような、特殊な水環境ではなかった・・・というのも偽らざる感想です。 ご存知の通り、愛知県には白化個体や褪色個体を捕獲し、観賞用に出されている方が何人かいらっしゃるようです。その時に現地をガイドして下さったのも、そうしたご縁の方ですが、もちろん私はそうした活動をされている方々すべてとお付き合いをさせていただいているワケではございませんから、それぞれで出されている個体の素性がすべて同じかどうか・・・ということなどは確かめようもありません。しかし、少なくとも”ゴースト”と呼ばれるに相応しい体色の個体が捕獲された場所には、愛知のみならず関東地区に点在する棲息地を含め「そうした体色の個体が棲む場所ならではの特別かつ決定的な差異は見られなかった」と言ってよいと思います。もちろん、白化個体の解説ページでも触れてあります通り、若干の濁水環境であったり応分の水深があったり・・・などという基本的特徴は共通していましたが、「じゃあ、愛知県や静岡県で、そういう環境の場所なら必ず白化個体が棲息しているか?」となれば、そうでないことは申し上げるまでもありませんし、他の都府県下においても、そういう環境であれば見つかる可能性は大いにあることでしょう。 それでは、なぜKさんのおっしゃる通り「見つけられる人は見つけられる」のか? 他の方はともかく、少なくとも私自身はさほど特殊なことをしているつもりはなく、またそうした能力もないのですが、強いて挙げるとすれば「場数と人脈」の違いではないかと思います。 確かに、私も白ヒゲや白化個体を含め「特殊体色」の個体を探すことが目的であることもあるにはあるのですが、星の数ほど存在しているアメザリの棲息地の中から、そうした場所をピンポイントで見つけよう・・・というのは非常に困難ですし、そうした“ヘンな色の個体を見つける”という目的だけで棲息地を訪ね歩いているワケでもありません。そうした個体の有無も含め、少しでも様々な生態に関する情報を得ようと思っているだけのことです。だからこそ、車で走っていようが歩いていようが、常にアンテナを張っていて、体色どうこうは一切関係なく、ちょっとでも気になったところ、たとえば白化個体でいうのであれば「応分の水深があって濁水環境である」みたいなところを見つけたり、一般的な環境とは少し様子が違うような場所を見つけたなら、とりあえずはすべて網を入れてみる・・・くらいの姿勢でいることが大切なのではないでしょうか? お恥ずかしい話ですが、私の場合も日ごろ使っている車の中には常に網や胴長、記録道具などが積んであって、あちこち走っていても、「ん?」と思ったところでは車を停め、網を入れてみるようにしています。もちろん、そうしたことで特殊体色の個体が簡単に見つかることはありませんが、(一時期大騒ぎになった黒ザリを含め)少なくとも私自身が見つけた場所は、すべてそうした形で見つけ出したものです。 こういうことを申し上げますと、「そんな非効率的なことはしたくない。もっとピンポイントで見つけられる効率的な方法はないのか?」と思われるかも知れません。でも、逆にピンポイントで見つけることができるくらいなら、もっと簡単に、そしてもっとたくさんの棲息場所や発見情報があちこちから出てくるのではないでしょうか? ネット情報でしかザリガニを見ていない方々の中には「ゴーストは愛知や静岡でしか見つからない」あるいは「あくまで人工作出なので自然下では絶対に存在しない」と頑に信じてしまっている方もいらっしゃるようですが、少なくとも私自身の長年の活動から申し上げさせていただくならば、そこまで決めつけてしまう必要はないかなぁ・・・と思います。いわゆる”プロ”と呼ばれる立場の方々に発見事例が多いとされるのも、多分に「場数の差」ではないかと思えてなりません。実際、こうしたケースは、ザリガニを専業で捕獲している方よりも、日淡系や水棲昆虫などの採取を得意としているようなトリコさんが「こんなのが揚がって来たんだけどさぁ」なんて形で情報をお寄せ下さるケースの方が多いものです。やっぱり”場数”が大きな意味を持っていることの何よりの証拠ですよね。 宝くじを当てるみたいな内容の回答で大変申し訳ないのですが、こうした作業も意外と楽しいものですし、仮に100ヶ所やってみて1ヶ所も見つからなかったとしても、これを続けて行く中で、ネットや自分の水槽から得られる情報とは全く異なる情報やヒント、さらには新しい課題などもどんどん見えてきますので、決して無駄なことではないと思っています。 さて、お寄せいただきましたメールの中で「今年はもうシーズンオフだけど」・・・というようなニュアンスのお言葉がございましたが、こと白化個体に関しては、ワイルドの個体を捕まえるのだとしますと、基本的には冬場の捕獲事例が一番多いというのが一般的です。 白化個体は、その体色から見ても、自然下で捕食されずに生き残り、大きく育って行くことは極めて困難であり、そうした特性を持った個体が代を繋ぐことこそあれ、そんな個体が大手を振ってガンガン採れる・・・などということは現実的でありません。ここが通常の白ヒゲ個体群とは最も大きな違いです。ですから、仮にそうした個体の採れる棲息地を見つけたとして、(そこで成体を捕獲するようなケースはゼロではありませんが)実際には1+に満たない稚ザリを見つけ出す方が遥かに効率的であり、現実的だといえましょう。 これらのことから考えると、実際にそうした個体が他の大きな生き物によって補食される前に採るのであれば、やはりその個体が生まれた年の冬・・・ということになるワケで、そういう意味でも”冬こそが捕獲最適なシーズン”ということになるのではないかと思います。右の写真は、平成27年2月に、かなり以前から白化個体の発見事例が出ていた関東地区の白ヒゲ棲息地で定期的な棲息調査をした際の写真です。この時の詳しい状況は、その翌月に"Scissors" CrustaExplorer JapanのFBグループページ上にて、他の写真とともに具体的な報告をさせていただきましたが、その時は473匹の個体(亜成体83を含む)を捕まえて確認し、その特性を持った個体は2匹のみでした。持ち帰って育ててみまして、やっぱり予想通り、いわゆる”ゴースト”の体色に育って行きましたが、こういう状況で見ても、やはりこうした個体は、これくらいの段階で捕まえておく方がよいことはご理解いただけると思います。「寒空の下で胴長履いてザリガニ探し」だなんて、それこそアホここに極まれり・・・みたいなことかも知れませんが、何度やっていても、こうした一風変わった個体に出会えれば嬉しいものですから、きっと初めて出会った時の感動は、何物にも代え難いものがあるのではないかと思います。よろしければ、ぜひチャレンジしてみて下さいね。 |