その2:真冬のザリガニを起こしに行こう!
〜 中 編 〜
(平成14年1月21日)

水の中で寒さに耐えながら、必死に春を待ち続ける仔ザリの姿は感動的でしたが、同じアメザリでも、実際に巣穴の中で越冬している成体の場合はどうなのでしょうか? 意外な事実も飛び出し、思わぬ形で解けた疑問にまたまた感動した、成体探しの巣穴掘りスタートです!

御注意:上にございます日付は更新日であり、取材日を示すものではございません。このページにございます写真は、前編と同じ日に取材したものを使用しておりますので、あらかじめ御了承下さい(写真の重複はありません)。



   


ひと昔前までは「アメザリの巣穴」といえば、田んぼの畔道でいくらでも見つけることができましたし、こうして水が抜かれた田んぼ1枚で、それこそ何十個と見つけることができました。しかし、今はこうしたところでアメザリの巣を見つけることは非常に難しくなっています。これも、言わずと知れた「農薬の威力」によるものなのですが、こうして穴もなく、きれいな状態で干上がっている田んぼを見ますと、昔の様子を知る人間としては、ちょっと複雑な心境にもなってしまいます。確かに、農家の方々の御苦労を考えれば、そんな無責任なことも言えないのですが、ともかく、昔の田んぼは、いろいろな意味で賑やかでしたから・・・。
こうなると、どういうところで見つかるか・・・ですが、右の写真でおわかりの通り、用水路などの岸辺などが最も多いといえましょう。こうしたところも、最近はコンクリート護岸などで厳しい状態になってきていますが、土岸のところであれば、かなり期待できます。




   


巣穴は、その入口が水中に開いていることもなくはないのですが、大半の場合、入口は水面から10〜30センチくらい上がった高いところに作られています。左の写真などでもおわかりいただけますように、枯れ草などに隠れて、パッと見ただけでは全然気づきませんが、草をどけながら丹念に見て歩いて行くと、ホラ・・・。




もう少し巣穴に寄って見てみましょう。内部は丹念に掘り固められ、掘り出された土は、まるで「土塁」のように周りを囲んでいます。この形状は、まさしく戦闘時に兵士たちが作る「トーチカ」そのものであり、地方によっては、アメザリのことを「トーチカ」と呼ぶことがあるのも、よくうなずける話ですよね!





なお、この「トーチカ」ですが、上の写真のように円状に巣穴を囲んだ形で構成されているものばかりではなく、球状(ドーム状)に巣の入口を覆ってしまい、ほとんど上蓋のような役割をするものもあります。これが、その決定的写真! ほとんど「円墳」だよなぁ・・・。これでもって気温変化の影響を受けづらくするだけでなく、巣穴内部の乾燥はバッチリ防ぐことができるわけだから、凄い高度な技術ですよね! サイズも大きいから、きっと、この中には、それなりに経験を積んだ大型個体が越冬しているんでしょう。かなり興味がありましたが、あまりにもきれいな形ですので、掘り起こすのは忍びなく、結局、手をつけないことにしました。





それでは、巣穴の中をじっくりと覗いてみましょう。しっかりと固められた巣壁の奥は、一見行き止まりのようになっていて、かすかに水がにじんでいたりします。目に見える段階での深さは、だいたい10センチあるかないか・・・というところでしょうか? この「見た目だけの深さ」は、巣穴自体の大きさの違いに関わらず、どれもほぼ同じくらいでした。





さぁ、掘るぞぉ! 必死に手を突っ込み、泥を掻き出して行きます。中は全く同じ色なので写真ですとわかりづらいのですが、まるでホイップ・クリームを思わせるような柔らかい泥が、しっかり固められた壁の中に詰まっている・・・ような感じですので、迷わずどんどん掘り出すことができます。それにしても深い! 巣穴によっては、腕が丸ごと入り、それでも届かない巣も数多く存在します。この巣穴だって、すでに30センチ以上掘ってますものねぇ・・・。





掻き出した泥は、ホラ、こんな感じです。かなりの水分を含んでベチャベチャしているのは当然ですが、本当に目が細かく、柔らかい泥ですので「これならザリガニは、中でも簡単に動き回ることができるんだろうなぁ・・・」と感じさせられますね。非常に柔らかく、身動き自由なクッション・・・というたとえが、一番ピッタリしているように思えます。





ただ、巣によっては、こんな粒状の泥がたくさん出てくることもありました。「ん? 糞かなぁ?」とも思ったのですが、ザリがこんな糞をするわけがありませんので、やはり、その土壌がこうなのでありましょう。
印旛沼水系には、客土によって区画整理をしたところもありますし、また、基本的には赤土の関東ローム層に覆われていますので、必ずしも「ザリにピッタリ」みたいな土でない場合もあるのでしょう。それでもこうして頑張って作巣する姿には、頭が下がります。それにしても、さぞかし過ごしづらいだろうなぁ、このクッションじゃ・・・(苦笑)。





そして、さらにその先を掘り進めて行くと、さわり覚えのある何かが、手の先にぶつかってきます。あれ? この感触は・・・? 感動の成体御対面と驚きの真相発見は、後編へ!