大磯砂の「酸処理」は必要か?
大磯砂に関して、最近あちこちで頻繁に聞かれるようになったフレーズがあります。それは「大磯砂は、最近かなり品質が落ちてきているので、酸処理しないと使えない」というものです。ましてや今回、底床には大磯砂を使っていますので、やはり、こうした部分はとても気になりますよね? そこで、ここでは、あくまでザリガニ飼育という観点から見た、大磯砂の品質低下に関する問題と「酸処理」の必要性についても触れておくことにしましょう。
「酸処理」とは、食用酢や塩酸、硝酸などの薬品、あるいは専用の処理剤などを用いて、大磯砂に含まれている貝殻やサンゴ片などを中心とした炭酸カルシウム系物質を溶出除去させる作業のことです。「品質が落ちてきた」というのは、素材の採取地が変わってきてしまったことで、以前と比べると貝殻やサンゴ片の含有量が心持ち増えてきたことを意味しており、水草水槽や中性〜弱酸性の水質を好む魚種などを飼育する場合に「以前と比べて、より適合しにくくなってきた」という意味での「品質が落ちてきた」という意味だといえましょう。
さて、ザリガニ飼育という点でこれについて考えてみると、端的に結論から申し上げれば酸処理という作業は、ザリガニ飼育に限ってみれば、百害あって一利なしといっても過言ではありません。ザリガニの場合、種によって基本的な棲息域における水質の違いはあったとしても、極端な状況でない限り、基本的に炭酸カルシウム分の存在が「マイナス要因」にはなりにくいからです。
ザリガニの場合、種や個体、そして貝殻やサンゴ片の状態によっては、これらのものを避けるどころか、自ら積極的に掘り出して齧るケースも日常的に見られるものです。また、齧るシーンまでは出くわさないとしても、濾材などにサンゴ片やカキ殻を用いて個体のコンディションを上げて行く方法などは、実によく知られたことでしょう。これらのことからもわかる通り、酸処理でもって除去しようとする物質は、それ自体がザリガニの生活にとって非常に有効な物質なのです。わざわざ無理して、これを除去する必要はありません。
むしろ、様々な物質を用いてこの作業を行なうことで、そうした物質が残存することによるザリガニへのダメージは計り知れないものがあります。有用な物質を除去し、有害な物質を残存させるようなことがあっては、まさに本末転倒ですよね?
ただ、せっかくここまで解説するのだから・・・と、今回、このページを作るにあたり、思い切って残った大磯砂を使って、穀物酢を用いた酸処理をやってみました。最初から真剣味がない(苦笑)ので、小型漬物桶の残りを使っていい加減に行ないましたが、ほんの数時間、漬け置いただけでも、右の写真のように、それなりの量の気泡が出てきます。また、すすぎ水も相当に濁っており、食酢であってもそれなりの溶出は認められました。結局、この砂は水槽用として使うことなく、我が家の玄関脇の敷石となりましたが、本来なら、この泡の分だけ、ザリガニに有利となる可能性を持った素材が含まれているのだということが改めてわかったようにも思います。
どうしても「酸処理」を行なわないと気が済まない・・・ということであれば、充分以上のすすぎ洗いを行なうことで、底床用として使うこともできなくはありませんが、やはり、どう考えてもザリガニ飼育には意味のない作業だといえましょう。酸処理をする手間があるくらいなら、その分、きちんと水洗いし、熱湯消毒や乾燥消毒などの手間に割り振った方がよいように思えてなりません。