「煮出し」ができなくとも・・・

 アク抜き剤を使わず、短時間で手っ取り早くアク抜きをする方法として「煮出し」という方法があることは、よく知られていることですよね! 多めの水でグラグラ沸騰させた大きめの鍋に流木をドボンと投入し、強火のまま、少量ずつ適宜水を加えつつ、だいたい30分程度じっくり煮詰め、アクを出して行く・・・という方法です。水を入れ替えずに行なう方法もありますが、途中で2〜3度お湯を入れ替え、10〜15分ずつ煮出して行く方法もあり、こちらの方が一般的です。何度かお湯を入れ替えて煮出す場合、最初の1回は食塩をスプーン数杯分投入して、沸騰温度を上げるという裏テクもありますが、いずれにしても、ほんの1時間程度で、それなりの量のアクを抜くことができます。

 しかし、今回、この方法を用いませんでした。それは、今回、準備する流木の量自体が鍋に収まらないほど多かった・・・ということもありますが、煮出しならではの問題点や、安易に煮出しを行なうことで、奥さまからお借りした鍋をダメにしてしまったという事例などを、今までさんざん耳にしてきたからです。
 流木から出てくるアクは、予想以上にしぶといものです。アクの主な成分は、タンニンやフミン酸など、いわゆる「腐食酸」と呼ばれるものであり、観賞魚の世界で考えるなら、たとえばピートやブラックウォーターなどの構成成分と非常に近いものがあります。これを鍋で長時間煮込めば、鍋がどういう感じになるのか・・・ということだけでも充分想像がつくと思いますが、流木自体の材質によっては、ドロドロしたタールが出てくる場合もあります。ですから、焦がしたり溶かしたり・・・といった「それこそ論外」としてのトラブルはおいておいたとしても、鍋肌にアクがこびりついてしまって落ちなくなってしまったり、いくら洗っても焦げ臭い匂いがとれず料理に使えなくなったり・・・というような事例は、いくらでもあるのです。ご家族の理解を得てセットアップするザリガニ水槽の、たった1つの過程で、奥さまの「聖なる道具」である鍋をダメにしてしまい、ご家族、特に、奥さまの怒りを買ってしまっては、どうしようもありません。
 また、煮出しならではの問題点もあります。煮出しでアク抜きをする方の多くが「とっても早く、しかも多くのアクを抜ける」という利点を理由に挙げます。しかし、先ほどのタール分を含め、いくつかの成分は、一定時間以上、一定温度以上の高温に晒すことによって溶け出してしまったり、あるいは溶けやすくなってしまったりします。煮出しを行なった結果、本来、そのままであれば溶け出さなかった成分が溶け出してしまったり、あるいは極めて溶け出しやすい状況になってしまったりするのだとすれば、まさに「ヤブヘビ」であり、本末転倒だといえましょう。特に、ザリガニ飼育では非常に重宝するマングローブ・ルーツ、特に黒色系マングローブ・ルーツは、こうしたタール分が他の流木より多く含まれる傾向が高く、うっかり煮出すと鍋が大変な状態になりますし、煮出しを行なうことで、逆に投入後の黄ばみ解消には長い期間が必要となります。

 ただ、「煮出し」自体はできなくとも、お湯を上手に使いこなすことで、少しでも多くのアクを抜くことは不可能でありません。例えば、(特に冬場など)ストーブなどで加湿器代わりに常時やかんをかけていたりする場合など、そうして沸いているお湯を右の写真のように、そのままアク抜き容器へと注ぎ入れてしまいましょう。もちろん、グツグツと煮出す作業に比べれば、抜けるアクの量は遥かに少ないものの、これが1日数回、1週間・・・ともなれば、抜ける量は雲泥の差となります。わざわざコンロで沸かして行なうのは、さすがにガス代のムダという気もしますので非現実的ですが、無理なくお湯が使える状況であれば、上手にこうしたお湯を使うのも悪い方法ではありません。やかんの水を注ぐ程度では、行っても「ぬるま湯」程度であり、煮沸させるほど高温にもなりませんから、必要以上の溶け出しがない点も好都合です。