水槽台設置時の注意点
ザリガニ飼育の基本は、あくまで「水槽」であって、水槽さえ充分に機能していれば、別に問題はない・・・という見方もあるとは思います。ただ、実際の飼育には、様々なトラブルや予想外の事態が起こり得ることも、予め考えておかねばなりません。そういう点で、今回は、水槽台の設置位置について少し触れておきましょう。
水槽台の設置位置・・・というと、つい「どこの場所に水槽を置くか?」という点だけで考えがちです。そうなると、60センチ水槽であれば60センチ水槽分だけのスペースを確保しようという考えに陥りがちですよね!
ところが、実際に60センチ水槽を設置する場合、60センチ水槽分だけのスペースでは決して万全でありません。なぜなら、ザリガニ飼育水槽の場合、その設置場所は一切関係なく、常に「島置き」が基本だからです。
「島置き」とは、水槽セッティングで使われる言葉で、要は「水槽の4面がいずれも壁に接していない設置方法を指します。壁にピタッと接して設置する方法は、(その人によって様々な言い方をしますが)主に「ベタ貼り」と呼ばれます。
「え? それで言うなら、今回の水槽はベタ貼りでしょ?」・・・と思われるかも知れませんね。しかし、あくまでザリガニ水槽の基本は「島置き」です。
右の2枚の写真をご覧下さい。今回の水槽台を上方と側方から写したものですが、サイドは20センチ強、バックは10センチ強のスペースを取ってあり、横からも後ろからも、とりあえず腕1本は突っ込める状況にしてあります。そう! ベタ貼りの設置に見えて、実は完全な島置きなワケですね!
ザリガニは、一般的な観賞魚と異なり、常に「脱走」のリスクを抱えています。また、実用的な飼育水槽にするためには、コードや送気システムなど、複数のラインが必要となります。ベタ貼りでは、万が一の脱走で水槽外に飛び出てしまった個体の行き場がなくなり、その場から離れてしまうので、探すのに手間取ることも多く、それだけ、万が一の際の個体リスクは高くなります。また、コードやチューブなどは、美観上も問題あり・・・といえるでしょう。
ザリガニの飼育をする上で、「脱走」は、初歩ミスも初歩ミス、最も恥ずかしい、しかも犯してはならないミスの1つです。ですから、設備面にせよ環境面にせよ、水槽自体に万全の対策を施しておくことは、ある意味、当たり前のことでもあります。「最初から、逃げる前提で水槽を準備するなんて、バカじゃないか?」という声が聞こえてくるかも知れません。しかし、対策は常に「最悪のケースを想定し、何重にも策を施す」ことが大切です。セーフティーネットの重要性は、何も政治や経済の世界の話だけではありません。ザリガニと真剣に向き合うようになって、はや四半世紀・・・。今まで、本当に多くの飼育、畜養設備を目にしてきましたが、「一流」と呼ばれる人や、その施設になればなるほど、そこかしこに、こうした「見えない気づかい」の数々が施されていました。上級テク・・・とは、結局、知識と経験の融合から成り立った忠実な基本の積み重ねなのではないかと思います。