マロン成体オスの生殖突起について



 マロンの繁殖について「しっかりした生殖器とは、どういう状態をいうのですか?」「どこを見て、どういう基準で選んだらいいのですか?」という質問を多くいただきます。確かに、繁殖を成功させるために「オスの生殖突起がしっかりした個体を選ぶ」ということは、マロンの場合特に大きなポイントとなってきますが、文字だけでは充分に御説明できないので、実際に写真を使いながら御説明しましょう。場所が場所だけに、わざわざ写真を使って説明するのには、心情的に少々抵抗もあったのですが、最も大切なことは「できるだけ詳しい情報を提供すること」ですし、たかがザリガニの生殖器ごときで、恥ずかしがってもしょうがない(苦笑)ですもんね!


 右の写真が、繁殖に適するオス個体を、側面から写真です。白い矢印の先、第5胸脚の基部にしっかりとした突起が出ているのが見えるでしょう。品のないキーパー間で言われる「いいチンチンのオス」とは、普通、こういう状態の個体を指すのです。マロンはパラスタシダエ科に属するザリガニですので、キャンバリダエ科やアスタシダエ科諸種のように、第1腹脚が肥大化して生殖器の役割を果たすことはありません。あくまでも、第5胸脚基部に突起ができるだけです。この突起は、個体によっても差が出てきますが、連続して何度も繁殖に用いたり、個体自体が近親交配などで弱化していたりしますと、充分に出てきません。これを一般的に「擦り切れ個体」と呼び、25センチ程度の青個体(ブルーマロン)には、比較的多く見られます。これは、こうしたサイズの個体になると、ブリードの段階で何度か繁殖に使ってから出荷されることが多いためであろう・・・と言われています。その反面、最初から種親用と商品用とに分けて育成する食用ルートの原色個体には、逆に「いいチンチンのオス」が多い・・・ということになり、実際、種親オスには、意図的にこうした個体を用いるケースが多いようです。


   


 それでは、この部分を拡大してみましょう。これらは、それぞれ側面と下面から見たものですが、薄紫色の明らかな突起が、前方に向かって鈎状に出ているのがわかります。実際に触ってみると、フニュフニャというほどまでは軟らかくありませんが、外殻ほどカチカチに硬くもないので、扱いには注意が必要です。大きい個体では、2センチ近くの大きさになるものもあり、下面からだけでなく、側面からもハッキリと確認することが可能です。諸般の事情により、擦り切れ個体の写真を載せることはできませんが、擦り切れ個体の場合、ここの突起部分が、前ページにあるヤビーのオス個体の写真程度しか出ていません。


 マロンの場合「擦り切れ個体では絶対に繁殖できない」・・・というわけではありませんが、少なくとも水槽飼育下での事例だけで判断する限り、成功する確率は大きく下がる・・・と考えてよいでしょう。ですから、自分で育てて種親に使うのでしたらともかく、フルアダルトの個体を購入して、そのまま種親に使おうと考えている場合は、できるだけこの部分を注意して選ぶようにしたいものです。