長髪ヒゲ面の「華」
アニマル投手(阪急ブレーブス)




 大阪球場の南海・阪急戦は、関東に住む私にとって、なかなか観ることのできない「ゴールデン・カード」。夏の休暇には、そわそわしながら新幹線に乗り込んだものでした。
 そんな状態ですから、我らがホークスには絶対に勝って欲しいのですが、そんな時に限って、こてんぱんにやっつけられちゃう・・・。大差がついたゲームになりますと、恨めしそうに難波の夜空を見上げるしかありません。俺は、こんな試合を観るために大阪まで来たんじゃないのに・・・。
 でも、同じ負け試合でも、接戦だったりすると、もう一つのお楽しみがあったのです。それが、アニマル投手の登板! どちらかといえば「静」であり、「心を読み合う」姿勢が重んじられた当時のプレーにおいて、彼の闘いは極めて単純明快! 1つ1つのプレーから、喜怒哀楽がビシビシ伝わってくるのです。長髪ヒゲ面だけでも充分インパクトがあるのに、ストライクをとってはウォーッと叫び、三振をとったらごっつあんポーズ・・・。無事にクローズしたら、ノッシノッシと歩いて行って自軍のキャッチャーまでド突いてしまうのですから、面白くなかろうハズなどありません。
 アニマルを見慣れた大阪のファンたちがブーブー文句を言いながらスタンドを後にする中、一人、関東の南海ファンだけは、難波の夜空を見上げながら、こう思うのでした。
「ま、今日はいいや・・・。明日からの近鉄戦で勝てばいいんだもん・・・」
 アニマル投手は、観客を楽しませるツボを心得ていた本当の「プロ」であり、黄色い声援を浴びるだけの若手プレイヤーとはひと味もふた味も違う、パ・リーグの「華」だったのです。



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