理不尽なトレード
新美 敏投手(日拓ホームフライヤーズ)
カードの世界では、立派な「レア物」である、日拓ホームフライヤーズのカード。球団自体も1年間だけしか存在しなかったため、あれだけド派手だったユニホームも、知っている人は少ないようです。今から考えれば、ビジュアル系の最先端を行くような、サイケデリックな球団だったんですけどね!
ただ、当時の子どもたちからすれば、日拓ホームのカードなど、見るも無惨な「大ハズレ」・・・。ただでさえ巨人全盛だったあの時代、しかも東映から変わったばかりで、これまた珍妙な球団名、おまけにオレンジ基調のユニホームともなれば、子どもたちの心をくすぐろうはずがありません。今でこそ賛否両論がありますが、当時「赤っぽい色」は、イコール「女っぽい色」であり、男の子にとって、決して許されるものではありませんでした。
当然、こんなカードは、すぐにトレードして追っ払いたいのですが、そんな気持ちはどの子も同じ・・・。駄菓子屋の前で上級生に捕まると、こんなカードと引き替えに、長嶋や王を持って行こうとするのです。下級生として精一杯の抵抗をすると「じゃあ、高田と末次で我慢してやるよ」と。手元に残った日拓のカードを見ながら、とめどもなく流れ落ちる涙・・・。いつしか「カード交換は同級生同士で!」というのが、私たち下級生の合い言葉になりました。
時は流れ、カードショップのショーケースに並ぶ日拓のカードは、どこでも高田や末次よりもいい場所で、しかもうやうやしく飾り立てられ、そして立派な値札を下げて鎮座しています。今となっては懐かしい思い出ですが、やっぱりあのトレード、「理不尽」なものだったのですね(笑)。上級生の言うことは、よく聞かなきゃ!
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