南海 ホークス
ファンクラブ会員用帽子(南海ホークス)
配布期間 昭和63年
展示No. H12
中央帽子製 球団承認タグ付き帽子
時代が昭和から平成へと変わるのと合わせるかのように、その旗を降ろした南海ホークス。名門球団の凋落、そして身売りは、まさに、時代の変わり目を鮮明に物語るできごとでした。
毎年のように身売りが囁かれる中、それでも必死になってファン獲得、観客増に走り回った球団スタッフ・・・。不安感や閉塞感、そして打ち消すことのできない絶望感を抱きながらの努力は、さぞやつらいものがあったことでしょう。ファンクラブやイベントなどにも、できる限りの工夫を加えて行きました。球団創設50周年となる昭和63年には、これまで普通のデザインだった配布帽に特別のデザインを導入。白と濃緑のデザインにペットマークをあしらい、「NANKAI FAN CLUB」の刺繍を施すなど、当時としてはかなり凝った帽子をプレゼントし始めたのです。素材や製造メーカーも通常の帽子と同じもので、「3回かぶったらボロボロ」の安帽子ではない、しっかりしたものでした。
スタートダッシュにつまづいたホークスも、この帽子をかぶった少年たちの熱い声援に支えられ、少しずつ息を吹き返します。主砲、門田のホームランがマスコミを賑わし始め、Aクラス入りが決して夢ではない位置まで這いあがってきた夏の終わり・・・、「南海」という球団が今年いっぱいであることが世間に公表されました。愕然、呆然、驚き、怒り、嘆き、そして悲しみ・・・。
南海ホークス最後の大阪球場ゲームとなった10月15日、スタンドには、この帽子がいっぱい詰めかけていました。ある帽子は声を張り上げ、ある帽子は涙を流し、トランペットの球団歌と一緒に球団旗を眺めました。南海ホークスを愛した子どもたちが、最後の最後にかぶった帽子は、汗と涙がいっぱいに染み込んだ、作りのいいしっかりした帽子だったのです。
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