イトメ




佐倉ザリガニ研究所の独断と偏見による  この餌の評価
評価項目
評価値(オレンジが多いほど高評価になります)
キーパー支持レベル
    
投餌時の反応レベル
    
入手の簡単さレベル
    
ローテ組み込み比率
    






  観賞魚用飼料としては古くから使われているのがこの餌。ショップによっては「イトミミズ」とも呼ばれ、生物名としては、こちらの名前の方が通りがよい。棲息域が汚染された水質であることを示す指標生物になっていることでもわかる通り、どちらかといえば水が澱み、生活廃水などが恒常的に流入するような水域の水底に堆積している汚泥層を主な住みかとしている。泥面から身体を半分程度出し、ユラユラさせているシーンを見たことがある人もいるとは思うが、あれは捕食ではなく、呼吸のための動作である。栄養は汚泥層内から摂取するため、観賞用として採取・ストックされて以降は、基本的に痩せる一方だと考えてよい。一時期、「汚染物質を全く含まない清流イトメ」なるものや、中国の清澄な水系で採取されたという輸入物イトメなるものなどが出回ったが、基本棲息環境から考えると、100%心配ない・・・とは言いづらい部分もある。アカムシに比べれば外皮も柔らかく、栄養がある上に反応も高い・・・という点で、餌としては決して悪いものではないのだが、こうした餌自体の持つ清潔とは言いがたいイメージに加え、ストックのしづらさや扱いづらさ、見た目の不気味さなど、現代のスマートな観賞魚飼育志向に背反する性格の強い餌であるところから、特に新しいショップなどを中心に、取り扱いをやめてしまうショップも増えてきている。







  餌自体の大きさや、残餌を出させないための配慮などを考えれば、対象は必然的に稚ザリ〜亜成体、または中・小型種に絞られよう。与え方としては、独り歩き開始直後から3ヵ月程度までの期間、少しでも多くの個体に栄養を行き渡らせる目的で数回投入する・・・という方法が最も一般的であろうか?
また、稚ザリ相手以外の場合、ある程度の栄養が期待でき、高蛋白である点を踏まえ、導入直後やコンディション立て直しなどといった特別の目的がある場合に使うキーパーも少なくない。いずれにしても、レギュラーでローテーションに組み入れるというよりも、必要な状況に応じてその都度与える性質のものであると考えてよいだろう。底床の石粒が大きかったり、敷きが厚かったりすると、捕食される前に底砂中に潜ってしまい、そのままそこで死んで腐敗を起こしてしまう危険性もあるため、底砂は薄めに敷くようにするか、投入後しばらく経った時点での換水時には、必ず底砂掃除をしておくようにしたい。
最低でも4〜5腹繁殖させているようなキーパーが、全水槽でチビたちの独り歩きを確認した後、おチョコ1杯分だけ買ってきて、4〜5等分して一気に使い切る・・・というような感じの使い方が主流だとは思うが、いずれにしてもキーパー側からすれば、使いでのよい餌ではないといえよう。







  決定的な問題点は、ストックがしづらく、投入方法次第では、個体へダメージを与えてしまう危険性があることと、個体にとって好ましくない細菌や重金属などを持ち込む(または摂取させてしまう)危険性があることだろう。実際、ある特定種及び特定ルートのイトメに関しては、与え始めた途端、バタバタと死んでしまった・・・という事例報告が相次いだケースもあったので、科学的な実証こそできないものの、餌としてあらゆる場合においても安心して与えられる・・・とは言い切れず、多少なりともリスクを抱えた餌であると考えてよいだろう。購入後、基本的には直ちに与えなければならず、また、捕食されきれずに水槽内で死んだ場合、ザリガニにとっても最も大切な底床内での腐敗という非常に好ましくない状態に陥る。購入した場合には直ちに使いきり、なおかつ残餌が絶対に出ない量で与えることが鉄則である。ザリガニの場合、イトメを与えなくても他の餌で充分飼育できることから、これらの条件が1つでも満たされないのであれば、むしろ使わない方がよい餌であると言っても過言ではない。すべての餌にいえることだが、「この餌を使う意味」や「この餌を与えることで起こるであろうプラスとマイナス」とをしっかりと踏まえた上で餌を選び、そして与えるようにしないと、大きな失敗や障害が起こる危険性がある・・・ということを、この餌はハッキリと教えてくれると思う。
突然死事例以外でも、喰い散らかした葉部分がストレーナーに詰まって濾過能力が落ちたり、腐敗によって急激に水質が悪化したりというように、意外とトラブルの多い素材なので、こうした部分には充分な注意が必要である。特に、濾過槽へ掛かる負担は、我々が考えているよりも遥かに大きいようだ。





もどる