ミミズ




佐倉ザリガニ研究所の独断と偏見による  この餌の評価
評価項目
評価値(オレンジが多いほど高評価になります)
キーパー支持レベル
    
投餌時の反応レベル
    
入手の簡単さレベル
    
ローテ組み込み比率
    






  観賞魚用飼料というよりは、明らかに「釣り餌」というイメージが強く、実際、ペットショップで販売されているケースもほとんどない。ただ、非常に嗜好性が高く、また、高蛋白で栄養価も高いことから、時折与える素材としては非常に効果の高い餌である。アミノ酸やビタミンなどもバランスよく含まれており、そのパワーは魚粉に匹敵するといっても過言ではない。ひと口に「ミミズ」といっても、日本国内だけで約150種、世界で見れば7000種を優に越える大きなグループだが、種によって特別に効果があったり、害のあったりするわけでもなく、近くの森や草地などで簡単に採取できるフトミミズ属諸種やシマミミズなどで充分だ。
日本では「目不見」(めみず=目がない、目が見えない)を語源とし、どちらかといえば不快で嫌われる生物だが、英語では「earthwarm」(=地球の虫、大地の虫)などと呼ばれ、かなり好意的に受け止められてきた。実際「ミミズのいる土=農業に最上質の土」であることは洋の東西を問わず間違いない。最近では、こうした環境政策・環境教育に加えて、堆肥農法やコンポストによる生ゴミ処理などが注目されたこともあって、「堆肥ミミズ」という異名を持つシマミミズの働きが特に見直されて来ている。このため、都市部であっても、土壌が生きている状態であれば比較的簡単に見つけることができ、必要な時に、必要な量だけ採取してきて与える・・・という点では、非常に重宝な餌だといえよう。すべての個体に対して有効とまでは言えないが、比較的どの種の個体も選り好みなく食べてくれるという点も高ポイントだ。







  アカムシやイトメなどとは異なり、ミミズ自体が相応の大きさをしているので、投入対象は自ずと中型種以上の成体に限られよう。アメリカザリガニやヤビーなどの場合、TL7センチ以上の亜成体くらいから・・・ということになろうか? 少なくとも、稚ザリが群がって食べるような餌質ではない。一方、投餌パターンとしては、基本的に、何ヶ月かに1度程度、季節の「ご馳走」といった感じで与えるとよい。食欲の落ちている時期や、脱皮・繁殖前後、越冬の入り・明け期など、ポイントポイントで与えるべき餌だといえる。捕食の様子からわかると思うが、体液がほとんど水中に出てしまうので、ザリガニが摂取できる量は、こちらが考えているよりも遥かに少なく、予想以上の量を平らげてしまうこともある。どれくらいの個体が、どれくらいの量を食べているかという点については、個体同士のトラブルを避けるためにも、ある程度は把握しておきたい。採取してきたミミズは、軽く水洗いをして与えるようにする。数日間置いて泥抜きさせてもよいが、良好な状態のままストックさせることは意外と難しいため、泥抜き自体はさほど神経質になる必要もないと思われる。
なお、ミミズは、水槽内に投入してもすぐに死ぬことはなく、中には、ガラス面を伝って水面まで登り、水槽の外へ出てきてしまうこともある。ザリガニが気づく前に水槽の外へ出てしまうようなことがあると、いろいろな意味で問題なので、できれば投入時の段階で、個体の触角の前に落としてやるなどといった工夫は必要だ。







  実際に捕食の様子を見てみるとわかることだが、捕食時に大量の体液が出てしまうので、他の餌と比較すると水を傷めやすい。大きな水槽で飼育している際には問題も少ないが、水槽が小さかったり多個体へ一斉に与えるなどの際には、水への影響は避けられないだろう。その点で考えれば、換水直後は避け、換水直前を狙うなど、餌を与えるタイミングには充分に気を配りたい。また、嗜好性が高い分、他の餌(特に人工飼料)への反応低下を招く場合もある。締め餌としての役割が向いているのはもちろんだが、むしろこれを与えた後は、1回くらい飛ばすつもりでいてちょうど良いかも知れない。
ミミズを与える場合、最も危険だとされているのが「釣餌用ミミズによる突然死」という事例だ。釣具店などで釣餌用のカップ入り生きミミズを購入して与えたら、突然自切などを始めて死んでしまった・・・などというもので、大半が投餌後数時間〜数日以内に異変を起こしている。売られているからといって、ミミズ自体、何か違う特別な種類であることもないことから、収められているカップ内の保存用土または保存用薬剤などが影響しているのではないか・・・といわれているが、真相は定かではない。ただ、一般的にミミズの毒素体内蓄積能力は非常に高いとされ、餌として摂取するものに含まれている有毒物質の20倍〜40倍の高濃度を体内に蓄積させた状態のまま、死なずに生活できるという研究データもある。この点で考えれば、ミミズの体内に高濃度で蓄積されていた何らかの化学物質か有毒物質などが、ザリガニに対して致命的なダメージを与えたと考えても不思議ではない。もちろん「与えてみたけど全然問題はなかった」という事例もあるので、100%危険というわけでは決してないだろうが、いずれにしても、釣餌用ミミズを買い与えた直後のトラブル事例が頻発していたのは事実なので、どうしても与える・・・という場合には、やはりある程度綺麗な土壌汚染のない場所で、自ら採取したものを使うべきであろう。餌としては非常に優秀だが、ザリガニ飼育において「ミミズを与えないと絶対に供給できない」というような物質や要素などはないので、釣具店で購入する以外に入手の方法がない・・・という場合であれば、無理して与える必要はない餌である。




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