長年の悲願、ついに実現!
ジャパン・クレイフィッシュ・クラブ開発協力



プラスチック・ボトル入り・内容量:100g・定価1000円


9月15日、いよいよ発売開始!


「ザリガニ・ヤドカリの餌」などといった飼育教材的商品は、以前より初級者向け飼料として発売されていましたが、グッピーやディスカスのようなメージャー魚種と異なり、ザリガニには、長い間「専用餌」というものが存在しませんでした。我々キーパーとしても、ずいぶんと長いこと、他の専用餌や冷凍餌などで代用してきましたが、やはり、本格的な飼育を続けて行くためには、ザリガニの必須栄養分を余すことなく配合した専用飼料が必要不可欠・・・。そのような熱意が結集して誕生したのが、専用飼料「CF Star」(シーエフ・スター)なのです。キーパーの「知恵の結晶」! JCCメンバーが開発に全面協力した、初の「ザリガニ専用飼料」が、いよいよ発売されます。発売を記念して、開発の経緯や、この餌の特徴につきまして、御報告いたします。なお、このページは、発売元である日本淡水開発さんの許可を得たものです。



専用飼料開発のスタート

これまでも、「ザリガニ・ヤドカリの餌」みたいな商品が、1個1〜200円程度で数社から販売されていましたが、いずれも「飼育教材」用としてのもので、本格的な飼育のために開発されたものではありませんでした。専用餌を作りたい・・・という願いは、ザリ・キーパー共通の「悲願」だったのです。しかし、開発には莫大な費用が掛かるため、半ばあきめていた次第です。
そのような中、大型魚用冷凍飼料「紅一点」で業界に旋風を巻き起こしていた、日本淡水開発さんの専務さんと出会い意気投合。「それなら、誰もやったことのない専用飼料を作ってみよう!」ということになったのです。



役割分担の設定

いよいよ始まった開発・・・。しかし、日本淡水開発さんは、乾燥餌の成分や調合に関する知識やノウハウを持っていません。そして、私たちJCCには、本格的な餌を作るだけの機械と資金がありません。そこで、生産ラインの調達と生産を日本淡水開発が、成分の究明と試用試験・調整をJCCが担当することで、あくまでも「ザリのための餌」作りを目指すことになったのです。
幸いなことに、日本淡水開発さんの御尽力によって、乾燥餌については、全国の養殖施設に配合飼料を納入する業者さんの快諾を得ることができ、そこの生産ラインを使っての生産が可能になりました。また、冷凍餌については、本格的な製造機械を日本淡水開発さんが導入することになりました。JCCでも、専用飼料開発プロジェクト・チームを発足し、各メンバーの投餌状況と餌ごとの嗜好度をチェックしながら、餌に関する養殖・学術文献の分析、そして配合組成の決定と投餌試験を受け持つことになりました。夢の実現に向けて、2人3脚の開発が始まったのです。



一本化は不可能

当初、JCCとしては「これだけ与えていれば、長期飼育が可能」という謳い文句の餌を想定していました。直接聞いたことはありませんが、淡水開発さんの方でも、多分、そう思っていたことでしょう。しかし、実際に文献の分析を進めて行く中で、思わぬ壁に直面しました。
ザリガニの基本食性は、デトリタス(腐植)です。だとすれば、餌もこれをベースに開発すればよい・・・ということになるはずです。しかし、現実には、デトリタス自体、自然界の大きな営みの中でじっくりと作られて行くものであり、人工的に作るには、数多くの問題があります。また、仮に作ることができたとしても、実際の水槽環境では、障害が大きすぎるのが実状です。
さらに、実際の養殖施設でも、こうした素材の配合飼料をほとんど与えていない上に、これによる単一栄養供給では、問題があるらしいこともわかりました。自然界では「デトリタスを食べる」というよりも、「デトリタスを含めた雑食性で、様々なものを餌として摂取しながら生きている」というのが事実なのです。それに加えて、現地の養殖施設では、むしろ単一飼料による給餌を避ける傾向にあり、養殖用専用飼料を使用しているか否かを問わず、できるだけ多くの種類の餌を与える方式が提唱されておりました。だとすれば、デトリタスにばかりこだわり、しかも「これだけで大丈夫」的な餌を目指すのは、決して得策でありません。専用餌がないという状況の中、苦肉の策としてキーパーたちが考え出した、「餌ローテーション」(複数種の餌を順繰りに与えていた方式)は、実に理にかなったものだったのです。
ここで、開発チームのメンバーは、ずいぶんと悩みました。「ローテーションに加える」というコンセプトの餌であれば、「専用餌」を名乗るべきではないのではないか・・・と。




今までにないものを

せっかくの計画は、ここで一度、頓挫しかけましたが、試作品の第1号ができたころ、方向は大きく変わりました。「どうせ作るのなら、開き直って行こう! ローテーションの軸になる餌を作ろう」と・・・。
もとより、配合の選定には、全幅の信頼を得ていました。また「あくまでもキーパー本位ということで考えて下さい。紅一点と同じで、キーパーが喜んでくれるものでなければ、私たちとしても自信を持って世に問えませんから・・・」という、力強い言葉をいただいていました。
 方針を転換して以降、開発は、急ピッチで進められました。メンバーから寄せられる様々な意見に基づいて素材を選び、配合を検討して行きます。さらに、脱皮の際に大きな効果を発揮し、甲殻類養殖飼料では「隠し味」ともいわれるコレステロールを、観賞魚飼料としては初めて配合し、加えて、嗜好性が低い植物質についても、バランスよい配合が検討されました。ザリガニの生態を考えれば、餌は沈降性のものでなければならないことは当初から決まっていましたが、個体ごとに捕食のしやすさまで考える必要があろうというメンバーの意見により、1mmパウダー、4mmウランブル、10mmペレットという3タイプの生産ラインで、それぞれ2種類ずつの試作品を作りました。試作品は、プロジェクト・チームメンバーのみならず、多くのメンバーに配布し、実際に個体へ与えながら、その反応をチェックして行きました。



蛋白質が高すぎる!

粒の大きさは、検討の結果4mmタイプがベターだということになりました。孵化直後の稚ザリには1mmパウダーが好都合で、大型個体には10mmペレットが好評でしたが、「二兎を追う者、一兎を得ず」のたとえ通り、欲の張りすぎは禁物です。そこで、まずは開発を4mmタイプに絞り、構成の再チェックが進められました。
「それなら、配合もそろそろここらで・・・」となりかけたころ、あるメンバーが、突然、こんな意見を出してきました。「観賞魚の餌ならともかく、ザリの餌にしては、蛋白質比率が高すぎる」と・・・。
なるほど、実際の文献を見てみますと、栄養構成としては、どれも蛋白質30%台に収まっています。しかし、現時点での試作品の蛋白質比率は46%。稚ザリ用以外ですと、多少オーバーなレベルでした。急遽、構成が見直されます。目標は、キョーリン社製「プレコ」の31%でしたが、比率をそこまで下げるには、いくつかの効果的素材を切り捨てる必要がありました。そこで、サナギの配合量を少なくすることで、比率を約35%まで下げることに成功したのです。これによって、サナギの誘因効果に起因すると思われる投餌直後の反応は若干鈍りましたが、かなりバランスのよい餌に仕上がりました。再度、試作品が作られ、投餌試験が行われた結果、今回の構成で行くことに決まったのです。開発に着手してから、実に1年以上が経過していました。



効果的な利用方法

今回の「CF Star」は、このような形で開発されたものですので、あくまでも「これだけ与えておけば大丈夫」というコンセプトの餌ではございません。もちろん、中途半端な餌だけを与え続けるのであれば、これだけ与えておいた方がいいには違いありませんが、それでも、学術機関や養殖機関ですら、未だ究明していない、何らかの栄養を必要としている可能性があるのです。ですから、本当に個体を長生きさせたいのであれば、やはり様々な種類の餌を満遍なく与える・・・というローテーション形式は、維持しておいた方がよいでしょう。
では、実際にキーパーたちが、どのような形で使うだろうか・・・ということについて、考えてみたいと思います。
ひと口に「ローテーションを組む」といいましても、その構成や順序、間隔や投餌量などは、各キーパーそれぞれの「やり方」があるもので、こうした部分に差異があるのは、決して珍しいことではありません。こうした事実を踏まえた上で、今までの中において最も一般的なのが、「キャット」「プレコ」などといった配合飼料に、赤虫・ハンバーグなどの冷凍飼料、そして、水草や餌メダカ・タナゴ、ミミズなどといった生き餌を組み込む・・・というものです。繁殖期前や冬眠前などには、多少栄養価の高い餌を組み込むことも少なくありません。また、比率については、配合飼料とその他の餌を1:1で組んで行くメンバーもいれば、配合飼料2〜3回にその他の餌1回という与え方をするメンバーもいますが、種ごと、あるいは個体ごとの違いもありますから、こうした部分は、実際に与えながらつかんで行くのがベストだと言えましょう。
こうした状況の中で、「CF Star」は、基本的に動物性飼料の1つとして加えて行ければいいのではないかと思います。確かに、蛋白質比率は抑えてありますが、これ以外の餌をすべて高蛋白質のもので揃えるようでは、蛋白質比率を低く抑えた意味が薄れてしまいます。内容的には「キャット」と「プレコ」の中間的性質を持っていますから、これらの間に挿入しても構いませんし、どちらかを1回飛ばして、そこに入れてもいいと思います。また、「キャット」「プレコ」の投餌を「CF Star」に一本化し、「CF Star」+冷凍餌&生き餌・・・という方法をとることもできますが、その際には、水草などをある程度食べてもらう環境を整えたいところです。佐倉の場合、配合餌は「CF Star」「キャット」「プレコ」を、2:1:2の比率で与えており、これに冷凍餌や生き餌などを適宜差し込む方式をとっています。



今後の方向性

今回、とりあえず発売に漕ぎ着けた「CF Star」ですが、淡水開発さんとは「今回の構成にこだわることなく、新しい事実が判明することで、必要であると判断すれば、随時内容を再検討し、改善して行く」というありがたいお言葉を頂戴しております。また、「CF Star」の開発を優先させるために、一旦開発を休んでいる冷凍餌や、発売するにはコストがかかりすぎるという点で断念した稚ザリ用飼料・成体用飼料などにつきましても、不定期生産ということでよければ、JCCメンバー分だけでもスポット生産はしてくれることになりそうです。
いずれにせよ、「CF Star」は、まだまだ「赤ちゃん」です。大手メーカーが出しているような専用餌と比較すれば、改善の余地は、まだまだありましょう。品質的にも、決して充分だとは言えないかも知れません。しかし、そうした大手メーカーの餌と比較して、唯一優れていることは、自分の意見をダイレクトに反映できるということです。つまり、この餌は、メーカーから与えられるものではなく、すべてのザリ・キーパーの手で育てて行けるものなのです。そういう意味で、ぜひとも「CF Star」を使ってみて、様々な御意見を持ち寄りながら、「真のザリガニ専用飼料」として、進化させて行きたい・・・と考えております。




なお、この商品の販売につきまして、ジャパン・クレイフィッシュ・クラブ及び佐倉ザリガニ研究所ホームページでは、一切行っておりません。恐れ入りますが、御購入は、全国有名ショップまたは専門店にてお願い申し上げます。