徹底研究

アメザリの捕り方・飼い方

 よっぽど生き物が嫌いな人でもなければ、誰もが一度は飼ったことがあるだろうと言えるのが、「アメリカザリガニ」。日本の子どもたちには、古くからの「お友だち」です。
 でも、そんな割には、長いことズーッと飼ってる人って、少ないですよね。たいていが「ひと夏の恋」。だから、「飼い方」も、あんまり真剣には語られません。そりゃそうですよ! アメザリなんて、その気になりゃ、たらいに水入れて、パンくずかなんかあげとけば、そこそこ生きてますからね。
 今回は、そんなアメザリを、「マジ」で飼うためのポイントを、徹底講義しちゃいましょう。誰もが憧れるオーストラリア産ザリを飼いこなすためにも、まずは、我らがお友だちである「アメザリ」を飼いこなさなきゃね!

ザリガニを捕まえてみよう

 ザリガニは、主に流れのゆるい河川や沼地、田んぼや休耕田などの湿地帯に住んでいます。都市化の影響で、その棲息域こそ減少しましたが、流れる水がかなり汚れている場所でも、小魚が泳いでいたり、カエルの鳴き声がする場所ならば、たいていザリガニは住んでいます。冬の水温が寒い時期は、泥に巣穴を作って冬眠していますが、4月から10月くらいまでの期間は活発に動き回ることが多いので、誰でも簡単に捕まえることができます。
 ザリガニを捕まえる方法は、子ども時代に多くの人が経験した、あの「ザリガニ釣り」の方法が最も一般的ですが、水深の浅いところではタモ網ですくい取ったり、巣穴に手を入れて中のザリガニをつかみ取ったりといった方法があります。四ッ手網やビンドウなども良い方法の一つでしょう。巣穴には、相当深いものもあるので、中には、手を入れても届かない場合がありますが、オスとメスとのペアで入っている場合も多いので、最初からペアをとることを考える場合は有利な方法です。
 捕まえた個体は、すべて持ち帰らず、自分の目的に沿った、良い個体だけを選ぶようにします。たとえ多くの個体を持ち帰っても、共食いやケンカなどで多くの個体を失ったり、脚などの欠けた個体ばかりを増やす結果となりますから・・・。繁殖まで考えるのでしたら、通常の60センチ水槽で1ペアないしはオス1メス2の変則ペアぐらいが適当だろうと思います。選ぶ個体については、脚などが少々欠けていても、何度かの脱皮によって元に戻るはずですから、あまり気にすることはありません。むしろ体つきががっしりしていて、動きの良い個体を選ぶようにしましょう。
 持ち帰る時は、互いにケンカしないよう、それぞれ別々の容器に入れます。ザリガニは甲部の中にあるエラが湿ってさえいれば、空気中の酸素を直接取り入れることができますから、必ずしも上策ではありませんが、2〜3時間であれば、ぬらした新聞紙などで包んで運ぶこともできます。

ザリガニを飼ってみよう

 捕まえてきたザリガニは、さっそく水槽で飼育できますが、飼育する水槽は、だいたい次のようにセットしておきます。
 まず、水は、観賞魚などと同じく、ほぼいっぽい(全水量)に入れてかまいません。いわゆる「完全アクアリウム・スタイル」と呼ばれるものです。本などを読むと、「ザリガニを飼う時は、背中が隠れるくらいの深さに水を入れ、必ず陸地を作らないとダメだ」という説明がありますが、それはエアレーションがされてない場合のことで、エアーポンプで水中に空気が送られてさえいれば、ザリガニは何の支障もなく生きることができます。 しかも、水槽の中の水の量が多いことで、水質や水温の変化がゆるやかになるため、ザリガニにとってはむしろこの方が好都合なのです。また、観賞する時にも、この方が見栄えは良いでしよう。
 前にも触れた通り、確かにザリガニは、エラが湿ってさえいれば、空気中から直接酸素を取り入れることができます。しかし、ザリガニに限らず、こうした生物が水上に姿を現すということは、ある意味で「外敵に対して我が身をさらす、非常に危険を伴う行動」であり、こうした行動をあえてとる背景には、「水中の酸素量が少ないことによる、やむを得ない理由」が存在するのです。ですから、豊富な酸素がある状況ならば、本来、必要としない方法なのです。ザリの飼育方法には、確かに様々なものがありますが、あえて「完全アクアリウム方式」をお薦めするのは、このような理由によります。
  水温は1℃から32〜3℃くらいまでなら大丈夫ですが、15℃から25℃くらいが最も良いようです。ただし、30℃以上の高温が長期間続くようですと、体調をくずすことがありますので、特に夏場などは注意が必要です。水槽の中には餌としての水草はもちろん、隠れ家として、小さな植木鉢や、DIYショップで売っている塩ビ管などを沈めてやります。また、脱皮の時に必要となりますので、細かめの底砂を浅く敷いておくことが大切です。底砂はペットショップなどで購入できる大磯砂や硅砂などが良いでしょう。サンゴ砂は繁殖の時、卵に与えるダメージが大きいので、おすすめできません。
 ザリガニを飼育する時に気をつけなければならないこととして、「とび出しの防止」があります。ザリガニは、実に「脱走上手」でエアーチューブや水温計などをつたって、少しのすき間からも逃げ出すことがあります。ですから、すき間を作らないようにし、しっかりとしたフタを作っておくことを忘れてはなりません。特に上部式のろ過装置を使う場合は、吸水パイプの長さを短くしたり、揚水ポンプ周辺にすき間があかないように気をつけましょう。餌は、それこそ人間が食べるものでしたら何でも食べますが、小魚などの動物質、水草などの植物質といったバランスの良い給餌を心がけます。ザリガニは脱皮をしながら成長しますので、他の観賞魚などよりも多くのカルシウムを必要とします。カルシウム不足は、脱皮障害などの原因になりますから、日ごろから気をつけて餌を選んでやるようにします。最近は、観賞魚用の沈降性人工飼科なども売られていますので、それを与えるのも良い方法です。冷凍赤虫・イトミミズなども良い餌でしょう。生きたメダカや小魚などを泳がしておくと、それを捕まえて食べたりします。なお、水を汚すので、油分の多い魚や肉、また卵黄やゆでた野菜などはあまり好ましくありません。魚の切り身やシラス干しなどの海産物は、与える前に軽く湯通しして、塩分を抜いてやると良いでしょう。餌はだいたい1日〜2日に1回、数分程度で食べきる量とし、食べ残しがあったら取り除いてやります。水槽の水は1週間に1回、全体量の4分の1程度を交換します。時間をおいて全部を交換することよりも、こまめに少しずつ交換してやる方が、ザリガニにとっては好都合です。

脱皮の時の注意

 脱皮は、ザリガニが成長していく上で欠かすことのできない作業です。個体によって多少違いますが、子ザリガニで通常年8〜10回、親ザリガニでも年1〜2回は脱皮をします。脚などに欠けた箇所がある個体は、さらに回数が増えます。また、脱皮は、ザリガニにとって最も危険な作業であり、命がけの作業でもあります。この時、ザリガニは、自分を守っている古い外殻を脱ぎ捨てるため、外敵から自分を守ることができません。また、何かの理由で脱皮に失敗すると、ザリガニはそのまま死んでしまいます。ですから、脱皮が始まりそうな個体は、別の水槽などに移すか、他の同居個体の方を別の水槽に移すかして、外敵のいない静かな環境で脱皮させてやることが大切なのです。ザリガニは脱皮が近づくと、食欲がおとろえたり体色が変化してきます。これは、自分の外殻を形成していたカルシウム分を一度血液中に溶かし込み、胃袋の中に石状の結晶として貯えているからで、この時、古い外殻の内側には、新しい外殻がすでにできあがっているのです。この時、むやみに触ったりすると、変形したり、脱皮失敗の原因になったりしますから、注意が必要です。
 また、脱皮の直前(脱皮前24時間程度)になると、頭胸甲と腹節の間にすき間ができてきます。そうなると、ただちに単独飼育に切りかえなければなりません。日ごろからザリガニの様子をよく観察していて、そういう個体を見つけたら、すみやかに隔離してやりましょう。脱皮しようとする個体を見分けるには、ある程度の経験が必要です。日ごろから、まめに視察しておくと良いでしょう。脱皮用の水槽は、飼育水槽と同じ水質,水温がベストで、酸素が充分に含まれていることと水の流れが速くないことが条件です。酸素を溶かし込みたいあまり、水流を極端に強めてしまうと、ザリガニは、自分の態勢を維持できず、脱皮ができなくなってしまうからです。
 脱皮自体は数分で終了しますが、脱皮が終わった直後は、すぐ取り出したりせず、体全体が固まるのを待ちましょう。完全に固まるまでは、だいたい72時間ほどかかりますが、それまでの間は、自分を守ることができないからです。特に脱皮直後は、体を支えることさえできない状態ですから、こんな時に他の個体と一緒にしたら、たちまち共食いの対象になってしまいます。ザリガニは脱皮後、胃の中に貯えておいたカルシウム分を再び血液に溶かし、からだ全体の新しい外殻に供給していきます。脱皮後24時間くらいたてば、餌も少しずつ食べるようになりますから、カルシウム分の多い餌を中心に与えていくようにします。一度外殻が固まってしまえば、次の脱皮まで、他の個体と一緒に飼育してかまいません。ザリガニの中には、脱皮の下手な個体もいますが、手助けしようとすると、脚が取れたり変形してしまったりします。よほどの失敗でない限り、次の脱皮でだいたい元に戻りますから、脱皮の時には静かに見守ってやりましょう。
 ザリガニは、額にあるみぞに小粒の砂などを入れ、その動きで自分の身体のバランスをとります。一度脱皮してしまうと、そういったものはすべてなくなってしまいますから、前にもふれた通り、底砂は必ず敷いておくようにします。
 また、あまり多い例ではありませんし、学術的にもはっきりしていない部分なのですが、交尾後にメスが脱皮した場合は、基本的に、オスから受け取った精包(精子が入った袋状のもの)はなくなってしまっていると考えた方がよいようです。従って、こういう場合は、再度ペアリングさせる方がよいでしょう。

冬場の管理

 ザリガニは自然の中ですと、冬には泥穴や深い水底などで冬眠をします。ザリガニを屋内で飼育する場合、冬はヒーターなどを入れることで、今までと同じく飼育できますが、もし冬眠させたい場合は、秋口に餌を充分に与え、冬眠に向けた栄養をしっかりとつけさせます。できれば、ここで一度脱皮してくれればシメたものですが・・・。
 その後、暖房などで水温があまり変化しないような場所に水槽を移し、多めの水で水深をたっぷりとり、水が凍らないように気をつけていれば、春までほとんで動かず、冬眠しています。冬眠しているときは、餌もほとんどとりませんので、送り込む空気の量も少なめにし、あまりいじったりしないようにしましょう。

ザリガニを繁殖させてみよう

 ザリガニは、自然では春と秋の2回が繁殖シーズンですが、飼育の場合、水温が20℃前後であれば、年間を通じて繁殖を楽しむことができます。
 ザリガニの繁殖を行なうためには、まず成体のオスとメスを選んでペアリングさせることから始めますが、最初にふれた通り、巣穴からペアを取り出すことができれば、簡単に始めることができます。そうできなかった場合は、自分が飼っている個体のうち、大きめで健康なオスとメスを選んでペアリングさせましょう。
 オスとメスの見分け方には色々ありますが、アメリカザリガニの場合では、この図にある通り、個体をひっくり返して、胸部の歩脚の後、腹部の脚を見る方法が一般的です。オスはその1本目と2本目が「交尾器」となっていて、他の腹脚よりも大きくなっていますから、簡単に見分けがつきます。もちろん、ザリガニ同士にも「相性」がありますから、最初はオス1匹に対して、メス2匹といった組み合わせで入れておくのもひとつの方法です。
 交尾は、オスとメスとが互いのハサミ脚(第一胸脚)をつかみ合って行なうので、ペアリングするときは、はさみ脚の両方揃っている個体を選んだ方が、成功率はグッと上がります。ペアリング開始後は、ある程度ザリガニ任せにしておいても交尾が始まりますが、大きな個体同士が一緒に住むわけですから、ケンカにならないよう、充分に餌を与えておくことが大切です。
 さて、交尾を何回か行なうと、メス親は、だいたい1週間から3カ月の間に産卵をします。産み出された卵は、メス親が腹部につけたままふ化させますから、他のザリガニは水槽から取り出し、単独飼育にして下さい。卵は水質の変化や酸欠に弱いので、エアーポンプで充分に空気を送ることが大切です。また、卵を抱いている期間、メス親はあまり餌を食べないので、餌の量もぐっと減らします。メス親をおどろかさないよう、静かな環境を作ってあげましょう。水温は、20〜25℃が適温で、30℃を上回らないよう気をつけます。また、急激な水質の変化も危険ですから、ふ化するまでは、なるべく水換えもひかえた方が良いでしょう。卵は、水温にもよりますが、たいてい2〜3週間でふ化します。ふ化するまでの間に死んでしまった卵は、明るいオレンジ色に変化しますので、ピンセットなどで静かに取り除いてやります。死んだ卵は自然に落下する場合がほとんどですが、中には水カビまみれになる場合もあり、そうなるとほかの卵にも影響してきます。

子ザリガニを育ててみよう

 さて、ふ化した稚ザリガニは親の腹部についたまま一度脱皮し、約1週間後、体長7〜8ミリの大きさになると、少しずつひとり歩きを始めます。ひとり歩きが始まったら、水槽内に稚ザリ用の隠れ家を多く作り、餌をふんだんに与えて共食いをできるだけ少なくさせるようにしましょう。餌兼用として、水草を多く入れるのも効果的です。餌は水草のほか、親ザリガニと同じもので大丈夫です。餌はできるだけ多くの個体に行き渡るようにして下さい。細かくちぎってから与えてやると良いでしょう。もちろん、水はそれだけ汚れやすくなりますから、水換えはまめに行なうようにします。ひとり歩きが始まれば、よほど急激な変化を起こさない限り、水換えはまったく問題ありません。
 さて、これから体長5〜6センチまで成長する約半年の間は、子ザリガニ同士の共食いが最も多く発生する時期でもあります。しかも、一度の産卵で何百匹もの子ザリガニが生まれますから、水槽の中はまさしく「チビザリだらけ」になってしまいます。ですから、もし水槽に余裕があれば、小分けにして育てるのも良い方法です。同じ時に生まれた子ザリガニでも、餌の食べ方などですぐに大きさが違ってきます。また、メスよりもオスの方が最初の成長スピードは速いようです。気に入った子ザリガニを見つけたら、早めに隔離し、単独で育てた方が良いでしょう。なお、子ザリガニは複数で飼育するよりも、単独で飼育した方が脱皮の回数も多く、成長スピードも速いようです。ある程度育った子ザリガニは、自分の飼育する個体以外、親ザリガニを捕まえた場所に放してやるようにします。ザリガニは生命力が強いので、かなりの悪条件な場所でも生き統け、子孫を増やしていきます。しかし、ザリガニは稲などの農作物を食い荒らすため、田んぼなどでは、立派な「害虫」なのです。むやみな放流は、意外なところで悪影響を引き起こしたり、生態系を破壊したりします。飼育者のモラルとして、こういったことは絶対に慎みたいものです。
 一方、無事にふ化を終えたメス親は、子ザリガニのひとり歩きが始まると、一度脱皮をします。すると、今度はその子ザリガニを食べ始めることがありますから、この時点で別の水槽に戻した方が良いでしょう。あとは、充分餌を与えながら、気に入った個体を選び、育てて行けば、約1年後くらいから、その個体で繁殖が楽しめるようになります。

 ザリガニは、しっかりと管理してやると、5年以上は楽に生きてくれます。ちょっとしたところに気をつければ、誰でもじっくりと飼い込むことができますから、ぜひひとりでも多くの人に「ザリガニ」を楽しんでもらいたいと思います。