単細胞生物感染症(ヨーロッパ型)


この病気は・・・

 この病気は、元来、ヨーロッパに棲息するザリガニに見られるものです。日本では、過去、数回だけ輸入されたスワンプ・クレイフィッシュ(学名はAstacus leptodactylus、インボイスは「スパニッシュ・ロブスター」)以外のヨーロッパ原産種がほとんど入っていない状態であり、現地での保護状況を考えると、今後もそう活発な輸入はなさそうなので、日本での事例は見られないだろうと考えています。ただ、現地でのデータを見る限り、ノーブル・クレイフィッシュ(Astacus astacus)以外のザリでは、ほぼ100%近い伝染率を示し、しかも致命的な状況になる場合もありますから、決して甘く見てはいけない病気だといえましょう。
 また、この病気は、ヨーロッパに棲息する外産(北アメリカ産)種であるPacifastacus leniusculusOrconectes limnosusなどでも発生していることが知られています。現在、ここに棲息している両種については、日本への輸入がなされていませんので、特に問題はないだろうと思われますが、何らかの形で現地棲息個体と接触する可能性が高いザリガニについては、念のために注意しておくべきでしょう。

原因と症状

 この病気の「張本人」は、Psorospermium haeckeliを始めとした数種の単細胞生物であるといわれ、アメーバのような状況や、胞子のような状況で感染し、組織に悪影響を及ぼす・・・とされています。消化器官の周囲や筋肉組織などに多く見られるようですが、これは、解剖の上で高性能の測定機器による観察が必要になりましょうから、我々にはどうしようもないことです。
 この病気に感染しますと、頭胸甲などといった甲殻表面にオレンジ色のスポットができます。学術的観察では、血球のカプセル化や、まれな黒化が見られるそうですが、先ほどと同様、我々のような素人の飼育レベルでは、観察のしようもありません。オレンジ色のスポットというのも、現段階ではそれがどの程度のものかがわかっていませんので、さらに情報を集めて行く必要はあると思います。

伝染する?

 病原となる胞子は、感染したザリガニが死亡しても、3日間程度はそのまま体内で生きており、死体の乾燥にも耐えうるのではないか・・・といわれています。また、何らかの形で接触した他種の個体に対してまで伝染力を持つかどうかはハッキリしていませんが、現地での事例や胞子の残存能力などを見る限り、それなりに高い伝染性はあるだろうと思われます。

予防・対処方法

 発病してしまった個体に対する根本的な治療方法は、残念ながらありません。また、もしも日本で発見されたとすれば、すでに輸入の段階で感染してしまっている可能性が高いでしょうから、的確な予防法もないのが実状です。