レッドクロウのバキュロウイルス感染症


この病気は・・・

 アメリカ・中米諸国などといった、最近活発化し始めているオーストラリア以外のレッドクロウ養殖施設で限定的に発生する病気の一つで、オーストラリアから持ち込まれた個体が繁殖させた、次の世代(第2世代)の個体から発生するという、多少変わった特徴を持っています。野生個体や現地養殖個体でも保菌しているらしいことは知られています(調査段階では野生個体の52%に、この感染が見られたとの報告があります)が、これが「病気らしい病気」として発生するのは、外国に持ち出された次の世代から・・・というのが不思議です。この病気の場合、感染後の死亡率は高くないので、あまり心配ない・・・とする文献もありますが、それでも、成長率(成長スピード)は極端に低下しますし、海産のクルマエビ養殖においては、同じ系統に属するバキュロウイルス感染症により、かなり大規模な被害が発生し得るという警告がなされています。ですから、現地のレッドクロウ養殖業者からすると、決して軽視できない問題だといえるでしょう。今後の詳しい情報収集は必要不可欠です。

原因と症状

 原因は「バキュロウイルス」と称されるウイルスのグループで、このうち、レッドクロウには「サブグループC」というグループに属するバキュロウイルスが感染するのではないか・・・といわれています。感染しているかどうかについては、肉質の白濁化などという傾向こそ見られるようですが、確実な方法は顕微鏡によるウイルスの確認作業以外になく、残念ながら我々のレベルではどうしようもありません。また、感染した個体については、現時点までのところ「成長スピードが極端に低下する」という現象以外に細かい記述が見当たらず、クルマエビ養殖で見られるような、壊死症を伴う重篤な症状が発生するかどうかについても、現時点でははっきりしていません。

伝染する?

 はっきりとしたことはわかっていませんが、クルマエビ類での事例を見る限り、相応の伝染性はあるだろうと思われます。

予防・対処方法

 発病してしまった個体に対する治療方法はありません。この病気については、少なくとも現段階では国内での事例報告がなく、また、重篤な障害の報告もありませんので、引き続き調査を続けながら情報を収集する必要はありましょう。
 ただし、レッドクロウについては、日本への輸入がオーストラリア以外からであるケースが圧倒的であること、また、レッドクロウに関わらず、食用として生産された個体が観賞用として輸入されるケースが少なからずあることから、将来的に見て、こうしたウイルスに感染した個体が国内に持ち込まれるケースは、なきにしもあらず・・・といったところです。