ホワイト・ポーセリン病(白磁病・白尾病)
この病気は・・・
Thelohania.sp.という単細胞生物によって引き起こされる病気で、オーストラリアにおけるヤビー養殖施設では、最も恐れられている病気の一つです。腹部(いわゆる「人間が食べる」部分)が徐々に白く硬直化してくるので、白磁病または白尾病と呼ばれます。病状の進行が緩やかなので、飼育下ですと死んでもその原因がわからないままであるケースが多いようです。日本に輸入される個体にも、すでに何例か確認されています。感染する種は、オーストラリア産、アメリカ産、ヨーロッパ産を問いません。
原因と症状
いうまでもなく、原因はThelohania.spという単細胞生物のグループで、Thelohania contejeani Hennegui種を筆頭に、数種類が知られています。これが筋肉内で徐々に増殖して行くという病気ですが、この生物がどういう形で感染したり、影響を与えて行くかについては、まだ詳しく調べられていません。ただ、肉質が明らかに変化して行きますので、現地でも「視認が可能な病気」という扱いがなされています。病状の進行は極めてゆっくりであり、ごく初期の段階ですと、病変部も見逃しがちです。しかし、病状が進行するに連れ、徐々に肉質が白変・硬直化し、ハッキリと確認できるようになります(健康な個体は「ナタ・デ・ココ」のような半透明色をしています)。個体は、やはり急激な形では死に至りませんが、ゆっくりとしたペースで衰え、最終的には歩行障害のような形で死んで行きますので、ある意味では「タチの悪い」病気だといえましょう。
なお、この病気と見誤りやすい例として、雌ザリガニの腹部外側や尾扇・尾肢に現れる白い斑点があります。これは交尾前のメス特有のもので、Thelohania.spが増殖したのではなく、産んだ卵を腹部に固着させるために粘液を出す役割を持つ、「セメント腺」と呼ばれる器官が発達したためです。前述の通り、この病気は、他の病気と比べると進行が遅いため、こうした形で急激に現れてくることはない・・・とされています。
伝染する?
水を媒介とした伝染性はないだろうと言われていますが、この病気で死んだ個体を他個体が食べることで伝染することが知られており、また、現地では野生・養殖を問わず、相当数の保菌個体がいる(文献によって多少の数値差がありますが、おおむね8〜12%程度の保菌率だとされています)と言われています。ですから、発病が確認された段階で、必ず隔離することが必要です。なお、オーストラリアにおいては、ヤビーでの事例が最も多く、西部ではギルギーでの事例が報告されています。ただ、ほぼ同じ地域に棲息するマロンについては、その事例報告がなく、養殖業者も、この感染防止に全力をあげています(「すでに発生している」としている文献もあります)。
予防・対処方法
発病してしまった個体に対する根治方法は、残念ながらありません。また、すでに導入の段階で感染していることも多いので、的確な予防法もないのが実状です。強いて言えば、導入の段階で(ショップの方からは嫌われますが)腹部裏の確認を行い、白変箇所のある個体は避ける・・・というやり方となりましょう。